磯村には一軒の教会がある。
キリシタン大名である昭義は、キリスト教の教えを領民達に伝え、教会の建設を認めた。
この日は、信徒達が祈りを捧げるため、教会に来ていた。
美津と四郎も、その1人であった。
レースのヴェールを頭からかぶり、ロザリオをまさぐりながら、美津は静かに祈りを捧げた。
神に祈っているときは、嫌なことを全て忘れられる。
みんなが自分のことを“鬼姫”と呼んでいることも、あの気味の悪い男が自分に結婚を申し込んだことも、何もかも忘れられる。
美津が静かに祈りを捧げているとき、凛とエーリッヒが教会に到着した。
「ねぇ、美津姫様はどこにいるの?」
「あちらですよ。」
エーリッヒが指した方向には、キリスト像に向かって頭を垂れ、静かに祈りを捧げる美津姫の姿があった。
「美津姫様、お会いしたかったぁ~v」
そう言って凛は美津姫に抱きついた。
背後から甲高い声がして振り向くと、自分と同じ顔をした武家娘が抱きついてきた。
「あなた、誰?」
呆気にとられて美津は凛を見た。
「はじめまして、美津姫様。わたくしは凛。よろしくねv」
凛はそう言って美津に微笑んだ。
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Last updated
2012.03.07 15:26:00
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