「お話とは、なんでございましょう?」
四郎は、自分を睨んでいる切れ長の目を見ながら言った。
「おぬし、美津姫のことをどう思うておる?」
勘三郎はそう言って四郎を睨んだ。
「姫様はいずれはこの国を継ぐ者。わたしは姫様のお命をお守りするのみ。」
四郎は勘三郎を睨みながら言った。
「ほう、そうかえ?わたしのお庭番が仕入れた情報によれば、そなたと美津姫は、恋仲であると聞いたが?」
口元を歪めて勘三郎は笑った。
「お主、美津姫のことを好いておるのであろう?いずれは美津姫の夫となり、この国を牛耳ろうと・・」
「わたしはそんなこと、一度も思ったことはない!」
四郎は勘三郎に怒鳴り、槍の穂先を彼の胸に突きつけた。
「言葉は慎重に選びなされよ、東雲殿。さもなくば、この槍で貴殿の心臓を抉り出す。」
「ふん、気に障った戯言を聞いたとたんに威嚇か・・百姓の倅は気性が荒いのぉ。」
バカにしたように勘三郎は鼻で笑った。
「わたしは美津姫を必ずや妻にする。美津姫は我が妻にふさわしい。お前のうな卑しい生まれの者などには、もったいないくらいじゃ。」
「姫様はわたしがいただく。お前のような薄気味悪い白狐などに、姫様は渡さぬ!」
四郎はそう言って槍の穂先を勘三郎の胸元から引き、再び稽古へと戻っていった。
「望むところじゃ、百姓の倅が。」
勘三郎はフンと笑って、城を後にした。
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Last updated
2012.03.07 15:36:00
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