「美津はまだ帰っておらぬのか?」
磯村城で昭義は美津が夜の散歩からいつまでたっても帰ってこないのが気にかかった。
「はい・・姫様は四郎に渡したいものがあるというので、四郎の実家に・・」
「そうか・・」
四郎の実家がある村は、城から約30キロのところにある。
「馬の準備を。美津の様子を見てくる。」
10分後、馬を走らせた昭義は、村へと続く林の中へと入った。
そこで見たものは、一面血の海となった道と、藪の中に転がっている10人もの惨殺体だった。
「これは、一体・・」
昭義は目の前に広がる光景をなるべく見ないようにしながら、娘を探した。
しばらく経つと、見覚えのある長刀が地面に突き刺さっているのを見つけた。
馬から降りて拾い上げてみると、それは美津が愛用していた長刀だった。
(まさか、美津の身になにか・・)
昭義の背筋に、一瞬悪寒が走った。
「美津、無事でいてくれ・・」
昭義はそう言って、娘がどうか無事でいてくれるように、神に祈った。
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Last updated
2012.03.07 15:48:36
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