エドガーとステファニーが豪華客船で毎晩舞踏会で優雅な時間を過ごしている頃、ウィーンの最も裕福な者が住む街区にある豪邸の中にある寝室で、少女は入念に化粧をしていた。
今夜はあのセルフシュタイン侯爵家の跡継ぎであり、社交界の華でもあるエドガーが3ヶ月ぶりにウィーンに帰ってくる。
(エドガー様は、あの成り上がり者の女と婚約したそうだけれど・・私は諦めないわ!)
「お嬢様、お客様がお見えになりましたよ。」
そう言って乳母のエカテリーナが部屋に入ってきた。
「そう、もうしばらくかかると言っておいて。」
「かしこまりました。」
エカテリーナは頷いて部屋から出ていった。
(またあの男ね・・しつこいったら。それに、会うたびに不気味さが増してるし。)
少女はため息を付いてパフを置いた。
レパードは、客間でイライラしながら“ルビー”を待っていた。
(あいつはいつも支度が遅い。女というものは厄介だ。)
少女はそんなレパードの気持ちも知らずに、髪に似合うリボンを選んでいた。
「やっぱりブルーがいいかしら。それとも薔薇色かな?」
鏡の前でそれぞれのリボンを付けながら、少女が呟いていると、ドアが乱暴にノックされた。
「エカテリーナ、お客様にはもう少し待ってと・・」
「いつまで待たせるつもりだ、“ルビー”?」
少女がドアを開けようとすると、野太い声がして、ドアの向こうから全身黒ずくめの男が現れた。
「私は待つのが嫌いだと言っただろうが? 何度言ったらわかるんだ?」
レパードは恐れおののく少女の顎を掴んで持ち上げた。
「行くぞ、“ルビー”」
レパードはフードを翻しながら少女の元から去った。
「・・わかりました。」
慌ててレパードの後を追う少女の姿が、化粧台の鏡に映った。
彼女は、ステファニーに瓜二つだった。
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