ステファニーは腹が減っては戦ができぬと思い、近くのカフェで食事を取ろうとした。
だが昼時のカフェは人がごった返していて、席に着くのも一苦労だった。席についても、ウェイトレスがなかなか来ず、ステファニーはイライラした。
<すいません、すいません!>
いつかロシアに行く機会があるだろうと、幼い頃ロシア語を習っていたので言葉には不自由しないが、何度ウェイトレスに呼びかけても、ウェイトレスは一向にステファニーの方へ来ようとしない。
(一体何なんだ? 態度悪ぃなぁ、ここの店員。)
たまりかねたステファニーが席を立とうとすると、その肩を誰かが押さえた。
ステファニーが顔を見上げると、肩にいくつもの勲章を下げた白い軍服姿に身を包んだ金髪碧眼の青年が立っていた。
<君、さっきからこのご婦人が呼んでいるのが聞こえないのか?>
青年はそう言ってウェイトレスをねめつけたが、ウェイトレスは仲間と雑談していた。
青年が指を鳴らすと、店の奥からカフェの支配人と思われる、蝶ネクタイをしたハゲ頭の親父が出てきた。
<あの子をクビにしてくれ。客を敬わないウェイトレスはこの店に必要ない。>
支配人は青年の言葉を聞き、頭を下げながら何かを言った。
支配人が再び店の奥へと消えると、青年はステファニーに向かって訛のない英語で言った。
「先ほどここの支配人と話をして、あのウェイトレスを辞めさせるそうです。彼女は以前から客への態度がひどいから、頭痛の種だったと言っていました。今から彼が注文を取りに来るそうです。」
「そうですか・・助けてくださって、ありがとうございます。」
ステファニーは青年に頭を下げた。
「私は当たり前のことをしたまでです。ではこれで失礼。」
青年はステファニーに微笑んで、店を出ていった。
(あの若さで結構出世してるんだなぁ・・それにしてもイケメンだったなぁ。どこのどいつだ? ま、また会えるとも限らないしな。)
<いらっしゃいませ。ご注文をお取りするのを遅れまして大変申し訳ございませんでした。 ご注文は何にいたしましょう?>
<本日のオススメは何かしら?>
<本日のオススメはブーフストロガノフとピロシキです。>
<では、それをちょうだい。>
ステファニーはニッコリして支配人に言った。
にほんブログ村