ミカエルの声がしたので、聖良は慌てて携帯を閉じた。
するとまた携帯が鳴った。
『ふふ、驚いた?何故僕が君の番号を知っているのか、知りたい?』
「お前・・一体何が目的なんだよ!」
『そう熱くならないでよ。電話じゃぁ話せない事もあるから、明日会わない?』
「・・わかった。」
罠かもしれないと思いながらも、聖良はミカエルと明日会う事を約束し、携帯を閉じた。
ミカエルと会う事をリヒャルトに話そうかと思ったが、やめた。
「セーラ様、もうお時間ですが。」
ドアの向こうから苛々した様子のリヒャルトの声が聞こえた。
今日は園遊会の招待状が何通か来ていて、そのうちの最初に出席する園遊会までもう時間がないのだ。
「すぐ支度するから、待ってて。」
聖良は慌ててクローゼットから用意されていたスーツを取り出して着替え、バッグに携帯と財布を入れて部屋を出た。
「お待たせ。何処かおかしくない?」
「大丈夫ですよ。さぁ、参りましょうか。」
リヒャルトはそう言うなりさっさと廊下を歩いて行った。
聖良は早足で彼の後を追いかけて行った。
「さっき、エリザベス様と何をお話ししていらしたのですか?」
「色々と。日本に居た時の事とかをちょっとね。」
「まだ日本が恋しいですか?」
「まぁね。俺の第2の故郷だし。」
リヒャルトはスーツの内ポケットから1通のエアメールを取り出した。
「あなた様のお義父様からです。朝食の後渡そうと思いましたが、お話し中でしたので。」
「ありがとう。」
リヒャルトから養父の手紙を受け取ると、封筒を開けて読み始めた。
「何と書いてあるのですか?」
「色々・・孤児院の閉鎖は来年になるって。それと今年のクリスマスに一緒に過ごせなくて寂しいって。クリスマスかぁ・・もうそんな季節になったんだ。」
「もう11月の半ばですからね。もうすぐ最初の目的地に着きますから、降りる準備をしてください。」
「わかった。」
最初の目的地であるK公爵邸に着くと、そこには既に大勢の客が集まっていた。
「セーラ皇太子様、ようこそいらっしゃいました。我が家自慢の庭をじっくりとご覧になってくださいませ。」
ホステスとして園遊会を取り仕切っているK公爵夫人は、そう言って聖良とリヒャルトに微笑むと、忙しそうに会場の向こうへと歩いて行ってしまった。
「何だか愛想が無いなぁ・・」
「夫人はお忙しいのですよ。客がこんなに大勢居ては、色々と大変なのでしょう。」
リヒャルトはボーイが運んでいる盆からシャンパンを受け取ってそれを飲みほした。
「食べ物を少し取って参ります。」
「わかった、ここで待ってる。」
リヒャルトが食べ物を探しにビュッフェテーブルへと向かった後、1人のボーイが聖良にカードを手渡した。
「これはどなたから?」
「それは存じ上げませんが・・必ず皇太子様にお渡しするようにと言われましたので。」
「ありがとう。」
ボーイが立ち去った後、聖良はそっとカードを開いた。
“いつもお前の事を見張っているぞ。”
血文字で書かれた不気味なメッセージを見た聖良は身の危険を感じ、ビュッフェテーブルへと走った。
後少しでビュッフェテーブルに辿り着こうとした時、背後から何者かに殴られ、聖良は気絶した。
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