「君は一体何者だ?」
「それは後で話そう。拳銃をこちらに渡せ。」
「わかった。」
リヒャルトは相手を刺激せぬよう、相手に拳銃を渡した。
「それで?」
「俺についてきて貰おう。」
男はそう言うと、リヒャルトの背中に銃を突きつけると近くに停めてあったバンに乗り込んだ。
「出せ。」
滑るようにライトバンは公園から出て行くと、何処かへと向かい出した。
「一体何処に向かってるんだ?」
「それは着いたらわかる。」
「そうか。」
余計なことはしゃべらない方が身の為だと思ったリヒャルトは、目を閉じた。
数分後、男に揺り起こされた彼は、目を開けた。
「降りろ。」
「わかった。」
男たちに連れられたのは、何処かの酒場の地下室だった。
薄暗く湿っぽい空気の中、リヒャルトが男達とともに歩くと、奥には部屋があった。
「そこへ入れ。」
「わかった。」
重い扉を開けると、そこには四肢を鉄製の手錠で拘束されて壁に貼り付けられた数人の学生達が居た。
「お前達、席を外せ。」
「わかりました。」
部屋から仲間が出ていくと、リヒャルトに銃を突きつけた男は目出し帽を脱いだ。
「お前は・・フリーゼ!」
「漸く会えたな、リヒャルト=マクダミア。セーラ皇太子の懐刀。」
「この学生達はどうした?」
「さぁ、それは・・新たな時代の生贄(いけにえ)だ。」
フリーゼは口端を上げて笑うと、学生達に向け引き金を引いた。
「君の目的は何だ?」
「さぁな。お前とおしゃべりするにはじっくりと時間がある。お前達、死体を片付けておけ。」
「わかりました。」
フリーゼの部下はそう言うと、学生達の遺体を素早く部屋の外へと運び出した。
「あそこの手錠へ手足を通せ。」
リヒャルトが言われた通りにすると、そこにはまだ血がこびりついていた。
「一体君は何をするつもりだ?」
「さぁな。俺は父のようにはならないと決めていたが、やはり血は争えないらしい。」
フリーゼは自嘲めいた笑みを浮かべると、リヒャルトの方へと近づいた。
「今頃、お前の愛しいお姫様はどうしているのかな?」
「貴様、セーラ様に何をするつもりだ!?」
「それは、お前には関係のない事だ。」
「セーラ様には手を出すな!」
「それを決めるのはお前じゃない、俺だ。」
フリーゼはリヒャルトを睨みつけると、地下室から出て行った。
(セーラ様・・どうかご無事で!)
身動きの取れない今、リヒャルトは聖良の無事を祈るしかなかった。
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