平和な夜から一夜明け、再び貧民街に銃声が鳴り響いた。
「怯むな、突き進め!」
「一瞬でも隙を見せたら終わりだぞ!」
市民兵達の奮闘で、病院を海兵隊の猛撃から守りぬいた。
「くそ、どうなってる!このままじゃ首都陥落は難しいぞ!」
「焦るな、わたしに良い考えがある。」
「どんな考えがあるというんだ、ノーマン大佐?」
「実は、この市民兵達を指揮している者が居る。その者の名はセーラ=タチバナ。」
「皇太子が市民達を指揮して自ら戦いに臨んでいるだと?」
「ええ。もし彼を抹殺すれば、市民達の士気は大いに下がるはず。すべてわたしにお任せください。」
「わかった・・お前がそこまで言うなら信じよう。」
「ありがとうございます。」
(仲間達の仇は必ず討ってやるぞ、セーラ=タチバナ!)
俯いていた顔を上げたアルフレッドのブルーの瞳は、聖良への憎悪に燃えていた。
「お前達、出陣だ。」
「イエッサー!」
部下とともにジープに乗り込んだアルフレッドは、貧民街へと向かった。
すべては、部下達の仇を討つ為に。
「米軍が攻めてきたぞ~!」
「バリケードを囲め!女子供を安全な場所を避難しろ!」
病院は看護師達や女達が慌しく患者を安全な場所へと避難させ、武器を手に取った。
「みんな、子供たちを守るんだよ!」
「おう!」
女達も、男達に交じって銃や銃剣、剣で果敢に戦った。
皆、母国を守りたい一心で団結し、なりふり構わずに戦った。
「見ろよ、あいつら逃げてくぜ!」
「また俺達の勝利だ!」
「ヤッホウ!」
市民達が勝利を噛み締めて狂喜乱舞している様子を眺めながら、聖良は微笑んでいた。
「これで、戦いが終わりだな。」
「ええ。」
「さてと、ここは彼らに任せて後は負傷者の手当てを・・」
聖良がマシンガンを下ろして病院の中へと戻ろうとしたとき、一発の銃声が空気を切り裂いた。
聖良は胸を撃たれ、ゆっくりと地面に倒れた。
「セーラ様!」
「リヒャルト・・無事か?」
「死んではなりません、セーラ様!」
「俺は大丈夫だ・・だから、戦え。」
見る見る聖良の顔から血の気がひいてゆくのを見たリヒャルトは、彼の手を握った。
「誰か、手当てを!皇太子様が撃たれた!」
「皇太子様が撃たれただって!」
「ああ、そんな!」
先ほど歓喜に沸いていた市民達は悲愴な表情を浮かべながら聖良の方へと駆け寄った。
「セーラ様、しっかりなさってください!」
「セーラ様!」
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