「何だ、お前達は?」
四郎がそう言って美津を守るかのように彼女を後ろに下がらせると、槍を抜いた。
「その液体を渡して貰おうか?」
「それはできんな。」
「そうか、ならば死ね!」
男達は一斉に四郎と美津に襲い掛かったが、彼らは背中合わせに次々と敵を倒していった。
「姫様、ご無事ですか!?」
「エーリッヒ、いいところに来たわ!これを副長に届けて!」
美津はそう言って懐から謎の液体を取り出すと、エーリッヒへと投げた。
エーリッヒは液体を受け止めると、屯所へと戻っていった。
「副長、今宜しいでしょうか?」
「いいぞ、入れ。」
「失礼いたします。」
エーリッヒが副長室に入ると、土方は険しい顔をしながら会津藩からの書状に目を通していた。
「謎の液体を入手いたしました。」
「そうか、見せてみろ。」
エーリッヒから謎の液体を受け取った土方は、少し灰色に濁ったそれを見た後、ガラス瓶の蓋を開けて外へと放り投げた。
すると茂みに隠れていた猫が液体の臭いを嗅ぎ付け、それをペロリと舐めた。
その途端猫は四肢を痙攣させ後絶命した。
「これは・・」
「こいつはぁ恐らく鉛と阿片を混ぜたものだろうよ。こんなもんを薬と偽って売りつけているふざけた野郎共を、この俺が一網打尽にしてやる!」
土方は怒りを抑えるかのように、自らの膝を拳で叩いた。
「売っていたのは普通の薬売りだと、四郎から聞きました。ですが、その薬売りは武家風の男からそれを調達したと・・」
「そうか。報告ご苦労だった。もう下がっていいぞ。」
「はい・・」
エーリッヒが去っていった後、土方は地面に転がっている猫の死体を地中深く埋めた。
「ったく、何が万病に効く薬だ・・そんなもんがとっくにあったら、親父達は死なずに済んだぜ。」
「土方さん、どうしたんです?」
ふと頭上で声が聞こえて土方が俯いていた顔を上げると、そこには江戸の試衛館時代からの同志・沖田総司が立っていた。
「いや、何でもねぇよ。そういやお前ぇ、顔色が少し悪ぃな。」
「最近暑かったから、夏ばてかなぁ。」
そう言った沖田はくすくすと笑いながら土方を見た。
「何だ?」
「いえ・・土方さんっていつもしかめ面ばかりで、早く老けるんじゃないかなぁって。」
「馬鹿なこと言ってねぇで巡察してきやがれ!」
「はいはい、わかりましたよ。まったく、鬼副長はこれだからおっかないなぁ~」
「総司~!」
土方の雷が落ちる前に、沖田はそそくさとその場から立ち去った。
「鉛と阿片を混ぜた怪しげな薬、ねぇ・・そんなものを作っているのは何者なのかしら?」
「医学に通じている者でしょうね。やっぱり、凛が絡んでいるのでは?」
「そう考えても良さそうね。」
美津と四郎が井戸端で薬のことを話していると、外から悲鳴が上がった。
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Last updated
2012.10.10 16:35:11
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