その鐘の音が意味するもの―敵襲を知った村人達の顔が恐怖でひきつった。
「まさか・・」
「どういう事だ!?」
「こんな所に敵が攻めてくるなんて・・」
村人達は荷物を抱えながら広場へと集まった時、どこからか銃声が聞こえた。
「何、今のは!?」
「早く逃げろ!」
村人達が逃げ惑っていると、再び銃声が聞こえた。
「皆さんにはここで死んで貰います。」
「ユ、ユリノ様・・」
シンの登場に村人達は一斉に安堵の表情を浮かべたが、彼女のドレスに赤黒い染みがついていることに気づき、彼女から後ずさりした。
「まさか、ユリノ様・・」
「彼らはわたくしが殺しました。」
「わたし達は何もしておりません!」
「敵に協力したあなた方は、もうわたくしの味方ではありません。」
シンはそう言って村人達に微笑むと、拳銃を構えた。
「おやめ下さい、どうか・・」
「お黙りなさい。」
シンは兵士達に目配せすると、彼らは一斉に村人達に向かって発砲した。
「ここでの用は済みました、先を急ぎましょう。」
「はい、ユリノ様。」
(初めてお会いした時は、儚げな印象をお持ちの方だと思っていたが・・わたしのとんだ見当違いのようだ。)
ユリシスはイシュノーと向かう道すがら、馬に乗ったシンの横顔を見ながらそんな思いを抱いていた。
「どうした?」
「いえ・・あなたが冷酷な方だと漸く気づいたのです。」
「わたくしは、目手の為ならばこの手を血で汚すことなどに躊躇(ためら)いなど感じません。」
「イシュノーで何をなさるおつもりで?」
「完膚なきまでに敵を殲滅するだけのこと。ここで無駄話をしていては、遅れを取ります。」
「わかりました。」
シン達がイシュノーへと破竹の勢いで進軍する中、一足先にイシュノーへと到着していたエリス達は、守りを固めていた。
「いよいよですね、エリス様。」
「もうすぐ敵が攻めてくるから、気を引き締めて仕事に取りかかりなさい。」
「承知しました!」
エリスが物見台から城壁の外を眺めていると、真紅の旗を翻しながら敵軍がこちらへと進軍してくるのを見た彼女は、兵士達に向かって声を張り上げた。
「敵襲だ、全員配置につけ!」
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