『どうって・・わたしは、あなた方のお話を聞く為にご招待したのです。いけませんか?』
『いえ、ですが彼を同席させることは聞いておりませんでしたな。』
そう口火を切ったマッケンジー大尉は、そう言うとアルフレドを睨んだ。
『それは申し訳ございません。騙し討ちのようなことをしてしまって・・』
『全くです!失礼極まりない!』
マッケンジー大尉はそう言うと、腰を浮かして椅子から立ち上がろうとしていた。
『マッケンジー様、そうお怒りにならないでください。どうぞおかけになってください。』
『そうは言われましてもね・・』
『さぁ、どうぞ。今日はお二人の為に特別なワインを用意したのですよ。』
アレクセイはそう言ってマッケンジー大尉とアルフレドに微笑むと、指を鳴らした。
すると、ダイニングに入って来た数人のメイド達が料理を運んできた。
『お二人はお互いに騙されたとおっしゃっておられるようですが、いい機会なので双方の主張を聞きたいと思います。』
椰娜(ユナ)はメインディッシュのステーキに舌鼓を打ちながら、そう言ってマッケンジー大尉とアルフレドを見ると、彼らは互いに目を合わせようとはしなかった。
『では、わたしから説明いたしましょう。この男にいい投資話を持ち出され、わたしは全財産を彼に預けそうになりました。しかし後日調べてみると、その投資話は嘘だったんです!』
『おい、口を慎め!大体、貴様がそんな話にホイホイと乗ったのが悪いんだ!』
『何だと!』
『お二人とも、落ち着いて下さい。マッケンジー様、あなたはアルフレド様に大金を渡したりはなさっていないんですよね?』
『当たり前だ、こんなペテン師に渡す金などない!』
いきり立ち、椅子から乱暴に立ち上がろうとするアルフレドを、アレクセイが何とか押さえつけていた。
『それならば、何のトラブルも起きておりませんね。』
『それは、そうですが・・』
『実はわたくし、マッケンジー様のご子息から手紙を頂きましたの。父を助けて欲しいと。』
『イソクが?』
『ええ。大事なのかと思って、こうしてお二人を昼食にご招待してお話を伺いましたが、どうやら勘違いだったようですね?』
椰娜はそう言って二人を見ると、彼らはバツの悪そうな顔をして俯いた。
『ユナお嬢様、ワインは如何致しましょう?』
『そろそろ出して頂戴。あとデザートもお願いね。』
『かしこまりました。』
アレクセイはさっと椅子から立ち上がると、ダイニングから出て行った。
『どうやら今回の事は、互いに誤解していたようだ。あなたのお手を煩わせてしまって、申し訳ない。』
『いいえ。これで安心して仁錫(イソク)に手紙で報告できますわ。さぁ、ワインを頂きましょう?』
椰娜はそう言って二人に微笑んだ。
『またいらしてくださいね。』
『ええ。では、これで。』
『お気をつけてお帰り下さいませ。』
入って来たのとは対照的に、上機嫌な表情を浮かべて外へと出る二人を、椰娜は妓生(キーセン)時代に“武器”と称していた最高の笑顔を浮かべて彼らを送り出した。
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Last updated
2013.09.04 10:23:16
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