ゾンビの頭部が温室の向こうへと血と脳漿を撒き散らしながら飛んでゆくのを見て、エドガーはシャベルを握り直した。
彼の全身はゾンビの返り血を浴びて真っ赤だった。
「ここから早く脱出しないといけませんね。」
「ええ。でもその前に、こいつらを全員倒さないと!」
ステファニーは拳銃を構え、ゾンビの頭部に狙いをつけて数発撃った。
ゾンビは悲鳴を上げる間もなく温室の壁を突き破って吹っ飛んでいった。
「倒してもキリがない!」
「何か・・こいつらを根絶やしにする方法を考えないと・・」
ステファニーは栄養失調状態の男を守るかのように彼の上に覆い被さると、彼は何かを呟いていた。
「何ですか?」
「あの鉢植えの中に、ダイナマイトがある。」
「ありがとうございます。」
ステファニーは男が指した鉢植えの中からダイナマイトを取り出すと、それをゾンビ達の群れの中へと放り投げた。
その間にも、ゾンビ達は唸りながら獲物を狙っている。
「今だ、撃て!」
ステファニーは撃鉄を起こし、ダイナマイトに狙いを定めて引き金を引いた。
エドガーはステファニーと男を自分の方へと抱き寄せると、そのまま温室のガラス壁を突き破って外へと出た。
その直後、大きな爆発と炎が三人を襲った。
「助かりましたね。」
「ええ。」
「あの人は?」
ステファニーは男を見ると、彼は口から血を吐いて痙攣(けいれん)していた。
「どうした、何があった?」
エドガーがステファニーを押し退けて男を見ると、彼の胸部には硝子片が深く突き刺さっていた。
「ありがとう・・」
男はそれだけ言うと、静かに息を引き取った。
「さぁ、行きましょう。」
「はい、エドガー様・・」
男の両目をステファニーはそっと左手でそっと閉じると、彼が首に提げているネックレスを鎖ごとひきちぎった。
「これは、彼の家族が彼に贈った物かもしれないわ。いつか彼の家族を見つけたら、これを家族に返すつもりよ。」
「そうですね。行きましょう。」
ステファニーとエドガーがアレクセイが居る地下室へと向かうと、そこは凄まじい悪臭が漂っていた。
「ステファニーさん、無事でしたか!」
「ええ。さっき温室にあいつが・・ラスプーチンが居た。」
「そう・・」
「ここは、何なのですか?」
「これは、ラスプーチンが実験場として患者達を集めていたようなのです。」
「患者?」
「ええ。奴は医者と称して、ジプシー達を地下室に集めて実験を行っていたようです。」
「そう・・」
「ここを出ましょう、今すぐに。」
ステファニーは死んだ男のネックレスを握り締め、エドガー達とともにバロワ伯爵邸から出た。
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最終更新日
2013年09月07日 15時27分06秒
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