「お加減は如何ですか、我が君?」
「少しは落ち着いた・・やはり都会は落ち着かん・・」
パリからこの城へと移ってきてからというもの、レパードの体調は快方へと向かっていた。
彼曰く、騒がしい都会に居ると決まって気分が悪くなってしまうのだという。
「それにしても、あのジプシーの娘・・あの子をどうするつもりなのだ?」
「お忘れですか、我が君?あの娘はパリのバロワに命じて捕えさせた男の姪だということを?」
「そうか・・忘れていた。最近俺は脳が退化しているようで、記憶が途切れやすい・・」
レパードは安楽椅子の背もたれに身体を預けながらそう言うと、ラスプーチンが用意した“薬”を飲んだ。
「グレゴリーよ、あれは見つかったか?」
「いいえ。」
「あれをすぐに見つけて、俺の元へと持って来い。」
「わかりました、我が君。」
そう言ってラスプーチンがレパードに向かって頭を垂れていると、アリエルが部屋に入って来た。
「何か用か?」
「あの・・」
「どうした?言いたい事があるなら、言うがいい。」
「わたし、あなたが探している物を見ました。」
「何だと、それは本当なのか!?」
「ええ。伯父がつけていたサファイアのネックレスを、プラハで見ました。それは・・貴族の方がつけていました。」
「貴族か・・グレゴリー、どう思う?」
「そうですね・・恐らく、あなた様がお探しになっているものは、あの方が持っているのではないのかと・・」
「やはりな・・」
レパードは嬉しそうに笑うと、アリエルの方へと向き直った。
「娘よ、感謝するぞ。褒美をやろう。」
「いえ、わたしは何も・・」
「お前が望むものを、俺が全て与えてやろう。どうだ?」
「あの・・故郷に居る家族が飢え死にしないように・・」
「そうか、わかった。グレゴリーよ、小切手を持ってくるのだ。」
「かしこまりました、我が君。」
ラスプーチンが部屋から出て行き、レパードと二人きりになったアリエルは、暖炉の炎に照らされた彼の顔を見て恐怖に震えた。
「俺は何もしない。アリエルよ、これからは俺の為に働くのだ、よいな?」
「あの、わたしは何をすれば・・」
「お前は家族を救いたいのだろう?だったら、お前は強くならなければならない。」
「強くなる・・?」
「そうだ。明日から剣術を習え。射撃もだ。」
「わかりました・・」
「良い子だ。」
レパードに微笑まれたアリエルは、この世には自分達ジプシーを厄介払いしない人も居るのだと思った。
「これを、家族の元へ送れ。」
「ありがとうございます。」
レパードから小切手を受け取ったアリエルは、彼に感謝の意をあらわすために、彼の手の甲に口付けた。
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Last updated
2013.09.15 14:46:32
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