翌朝、ステファニーがホテル内のレストランで朝食を取っていると、そこへ一人の男がやって来た。
「失礼ですが、あなたがステファニー=セルフォード様ですね?」
「ええ、そうですが・・」
「我が主からこれを預かりました。」
男はそう言うと、ステファニーに一通の招待状を手渡した。
「ステファニーさん、お待たせしました。」
レストランから去っていく男と入れ違いに、エドガーがステファニーの元へとやって来た。
「それは?」
「もしかして、あの男からかもしれません・・」
「あの男?パリであなたを襲った?」
エドガーの眦が微かにつりあがり、彼はステファニーの手から招待状を奪った。
そこには、パーティーの日時と場所が記されていた。
「どうします、出席しますか?」
「ええ。」
「あの剣を持っていった方がいい。あいつらはあなたに何をするのかわからない。」
「わかっています・・」
エドガーは“報復の刃”を持って行けと言ったが、大きな剣は目立つので、短剣を何本か持って行く事にした。
「ステファニーさん、わたしにも教えてください。あなたと、あの男の関係を。」
「実はわたしも、わからないんです。彼が一体何者なのか、何故わたしに執着しているのか・・その目的が解らないんです。」
「そうですか・・」
二人を乗せた馬車は、カレル橋へと差しかかっていた。
窓には雨風が絶え間なく打ちつけ、カレル橋から見えるモルダウ―ドナウ川は幾つもの渦を巻きながら濁流と化していた。
「この悪天候じゃ、パーティーに間に合わないかもしれませんね・・」
「ええ。」
エドガーがそう言った時、馬が突然嘶いたかと思うと、馬車が急停車した。
「おい、どうした!?」
異変に気づいたエドガーがそう言って御者台の方を見ると、御者は全身に銃弾を受けて息絶えていた。
「エドガー様、一体何が?」
「中に居ろ!」
エドガーはそうステファニーに怒鳴ると、馬車から降りた。
「おやおや、誰かと思ったら・・エドガー=セルフシュタイン様ではありませんか?このような所で会えるとは・・」
「お前は、あの時の!」
目の前に立っている男の顔に、エドガーは見覚えがあった。
「自己紹介が遅れて申し訳ございません。わたしはグレゴリー=ラスプーチン・・ロシア宮廷お抱えの魔術師、といえば宜しいでしょうか?」
「ロシア人のお前が何故パリに居た?」
「それは、ある実験の為ですよ。」
「実験だと?」
「あなたもご覧になったでしょう?あの生けるしかばね達を。」
「あのゾンビ達を作りだしたのは、お前か!」
「ふふ、勘が鋭いですね。」
「ラスプーチン、ここを通してくれないか?わたし達は大切なパーティーに行く途中なんだ。」
「そうはさせませんよ・・何故なら、あなた方にはここで死んでいただきますから!」
ラスプーチンはそう言うと、背後に控えていた部下に目配せした。
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Last updated
2013.09.15 19:46:43
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