「ステファニーさん、どうしたんですか?」
「ステファニー、一体何があったんだ!?」
エドガーとエリオットが二階へと向かうと、廊下で恐怖の余り泣き叫んでいるステファニーの姿があった。
「エ、エドガー様・・」
「どうしたんですか、ステファニーさん?」
「ま、窓の向こうに・・」
ステファニーが震える指先で窓を指し示すと、そこにはパリで見た化け物の姿があった。
「あれは・・」
「君はあれの正体を知っているのかい?」
「ええ。パリで一度見た事があります。」
エドガーはそう言うと、“報復の刃”が置いてある部屋へと入った。
だが、そこには“報復の刃”は何処にもなかった。
「おかしいな・・」
「エドガー様、あの剣は何処に?」
「確かに、この部屋に置いた筈なのですが・・」
エドガーがそう言いながら窓の方を見ると、暗闇の中でサファイアがキラリと光っていることに気づいた。
いつの間に窓が開いていたのかと思いながら、エドガーが“報復の刃”を掴もうと窓の方へと手を伸ばした。
だがその時、暗闇から白い手が伸びて来た。
「遅かったね。この剣はわたしが手に入れたよ。」
「貴様は・・」
闇夜にグレゴリー=ラスプーチンの銀髪が広がるのを見たエドガーは、怒りで顔を歪めた。
「お前・・」
エドガーの背後で猛獣のような唸り声が聞こえたかと思うと、ステファニーが窓から外へと飛び出そうとしていた。
「やめなさい!」
「放してください、あいつが・・」
友人の仇を目の前にして、ステファニーはラスプーチンへの怒りと憎悪に支配され、正気を失っていた。
「マサトを・・」
「ああ、君のお友達の事は気の毒に思っていますよ。貴重なサンプルを失ったので、我々にとっては大きな痛手でしたし。」
「貴様ぁ!」
「ステファニーさん、落ち着いて下さい!」
「今ここで、マサトの仇を取らないと・・」
狂気で血走った目でエドガーを睨みつけながら、ステファニーは今にもラスプーチンに飛びかかろうとしていた。
「復讐なんて、マサトさんは望んでいません。どうか、いつものステファニーさんに戻ってください。」
「エドガー様・・」
エドガーの言葉を聞いたステファニーは、漸く落ち着いた。
「君は、本当にステファニーの事を愛しているんだねぇ?」
「黙れ、ラスプーチン。お前にはわかるまい、人を愛すということが、どんなに大切なものなのか。」
「わかりたくもないね。」
ラスプーチンはエドガーの言葉を嘲笑うと、そのまま闇の中へと消えていった。
「エドガー様、さっきは取り乱してしまってすいません。」
「気にしないでください。それよりもステファニーさん、あの化け物は・・」
エドガーがそう言って窓の方を向くと、そこにはもうあの化け物の姿はなかった。
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