イラスト素材提供:十五夜様
ライン素材提供:ひまわりの小部屋様
「義兄様、どうして・・」
「昨夜は時間がなくてお前と話せなかったからな。こうしてお前をお座敷に呼んでお前と話をするしかないと思ったんだ。」
「そうですか・・お酒、注ぎますね。」
「いや、いい。酒は昨夜浴びるほど飲んだ。」
「わかりました、ではお茶を。」
千尋はそう言うと、歳三の湯呑みに緑茶を注いだ。
「義兄様、ご結婚されたのですね。」
「ああ。紗江ちゃん・・紗江子と、結婚したんだ。」
「そうですか、紗江子様と・・」
歳三が紗江子と結婚したと聞き、千尋は胸が嫉妬でチクリと痛んだ。
「お子さんはおられるんですか?」
「ああ、娘が二人いる。といっても、上の子は俺とは血が繋がっていないけどな。」
「それは・・」
「紗江子は、妻子持ちの男に騙されて、未婚のまま妊娠したんだ。俺は紗江子を守る為に、彼女と結婚した。」
「そんな事情がおありでしたか・・でも、紗江子様と義兄様ならお似合いの夫婦でしょうね。」
そう言った千尋の声が、少し震えていることに歳三は気づいた。
「千尋、お前はどうなんだ?好いた男の一人や二人くらい居るだろう?」
「いいえ、居りません。」
千尋はそう言うと、部屋から出ようとした。
だが、歳三が彼女の手を掴んで彼女を自分の方へと引き寄せた。
「何をなさいます!?」
「千尋、お前ぇ何か俺に隠している事あるだろう?」
「そんな事、ありません・・」
千尋は歳三から逃げようとしたが、あっという間に彼に組み敷かれてしまった。
「やめて、やめてください!」
「俺がこの9年間、どんな思いでお前のことを捜していたか・・」
歳三はそう言って千尋の唇を塞ぐと、彼女の口内を荒々しく蹂躙した。
「いやぁ!」
千尋は歳三を突き飛ばし、身体を反転させて彼から逃げようとした。
歳三は千尋の帯を掴んで再び自分の方へと引き寄せ、帯紐を解いた。
「大人しくしろ!」
「いやです、義兄様!」
歳三と揉み合っている内に、千尋の着物が大きくはだけて、彼女の背が露わになった。
「千尋、その傷どうした?」
千尋の白い背に残る醜い刀傷を見た歳三は、そう言うとその刀傷の上にそっと指を這わせた。
「わたくしに懸想をしていた方が、お客様とわたくしができているのではないのかと疑って、わたくしを斬ろうとして・・」
「痛むか?」
「いいえ・・でも、季節の変わり目になると傷が疼きます。」
千尋はそう言うと、緩んでいた帯紐を締め直した。
「義兄様、わたくしはもう生娘ではありません。こんな汚れた身体で、義兄様にお会いする事は出来ません。」
「千尋、俺は紗江子と結婚する前から、お前の事を“女”として見ていた。紗江子のことがなかったら・・俺はお前ぇと結婚していたかもしれねぇ。」
「義兄様?」
「千尋、どうして黙って俺の前からいなくなった?俺がどんな思いで、この9年間を過ごしてきたか・・」
「義兄様、これからわたくしの話をよく聞いて下さい。」
千尋はそう言うと、歳三の前に正座した。
「9年前のあの日・・わたくしは転校生の水島絵里子さんの家に遊びに行った帰りに、見知らぬ男に拉致されました。その男は、自分にわたくしを売ったのは、奥様だと言っていました。」
「母さんが、お前を女衒に売っただと?それは本当なのか?」
「ええ。」
(母さんが、どうして千尋を・・)
にほんブログ村