「ワルツがお上手ですね。」
「まぁ、ありがとう。」
クリスティーネがそう言ってアレクサンドロに微笑むと、彼はすっと彼女から離れて何処かに行ってしまった。
「不思議な方・・」
クリスティーネはそう呟くと、ドレスの裾を摘んでフィリップの方へと向かった。
「フィリップ様、わたくしはこれで失礼致します。」
「そうですか。お気をつけてお帰り下さい、クリスティーネ様。」
クリスティーネはフィリップに頭を下げると、大広間から出て行った。
「なぁアレクサンドロ、あのお嬢様は落とせそうか?」
「さぁな。」
バルコニーでアレクサンドロが友人達とそんな話をしていると、急に外が騒がしくなった。
「何だ?」
「フィリップが旅芸人でも呼んだのか?」
「まさか・・」
「旦那様、大変です!親衛隊が・・」
「何だと!?」
執事の言葉を聞いたフィリップは彼を突き飛ばし、何やら慌てた様子で大広間から出て行った。
「親衛隊だ、そこを動くな!」
フィリップスが書斎の引き出しを漁っていると、突然親衛隊の制服を着た数人の兵士達が書斎に入ってきた。
「何だ、君達は!?誰の許しを得てここに・・」
「我々は、陛下の命令に従っているだけだ。」
「やめろ、離せ!」
屈強な兵士達に両脇を固められ、フィリップはなすすべもなく彼らに身柄を拘束された。
「これから大変なことになりそうだなぁ。」
翌朝、クリスティーネがコーヒーを飲んでいると、ダイニングにアウグストが入ってきた。
「お嬢様、フィリップ様が親衛隊に逮捕されました。」
「逮捕?それは一体どういうことなの?」
「それは、わたくしにもわかりません。噂によれば、フィリップ様は王家への謀反を企んでいたようだとか・・」
「まぁ・・」
「お嬢様、今日のご予定は?」
「11時に、ウェストン子爵夫人のお茶会に出席して、その後はレミンスター競馬場でレースを観戦する事になっているわ。」
「今日行われるレースには、国王陛下もいらっしゃいますから、失礼のないようにしてくださいね?」
「あなたにそんな事を言われなくてもわかっているわ。アウグスト、後でわたしの部屋に来て頂戴。」
「かしこまりました。」
朝食の後、クリスティーネは寝室にアウグストを呼び、彼とともに今日着るドレスを選んだ。
「このドレスはお嬢様のブロンドに映えると思いますよ?」
「そうね、それにするわ。」
真紅のドレスに着替えたクリスティーネが玄関ホールに降りると、そこには親衛隊の制服を着た一人の兵士が立っていた。
「クリスティーネ=ファウジア様でいらっしゃいますね?」
「ええ。あなたは?」
「わたくしはリカルドと申します。クリスティーネ様、陛下がお呼びです。」
「まぁ、陛下が?」
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