その姿を見た環は、彼が皇帝主催の舞踏会を途中で抜け出したことに気づいた。
『皇帝陛下主催の舞踏会を抜け出しても宜しいのですか?』
『適当に体調を崩したと嘘を吐いて、抜け出してきた。』
『あの、これから何処へ行かれるのですか?』
『それは着けば解る。』
数分後、二人を乗せた馬車はウィーン市内の教会の前に停まった。
夜中とあってか、教会の中は人気がなく、静まり返っていた。
『あの、ここで何をなさるおつもりですか?』
『結婚式を挙げようと思ってな、お前とわたしの二人だけで。』
『そんな・・結婚式ならもう挙げているではありませんか?』
『あれは時間がなくて手早く済ませただけだ。お前と結婚式を挙げる日は、わたしにとって特別な日にしたいんだ、駄目か?』
『いいえ。』
ルドルフと環が暫く見つめ合っていると、法衣姿の司祭が教会に入って来た。
『そろそろ、宜しいでしょうか?』
『はい。』
『ではお二人とも、祭壇の方へどうぞ。』
司祭にそう促され、環はルドルフと共に祭壇の前に立った。
『タマキ=ハセガワ、貴方は健やかなるときも病める時も、夫のルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフを愛し、生涯を共にすることを誓いますか?』
『はい、誓います。』
『ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ、貴方は健やかなるときも病める時も、妻のタマキ=ハセガワを愛し、生涯を共にすることを誓いますか?』
『はい、誓います。』
『二人は、神の下で夫婦となりました。おめでとうございます。』
『司祭様、わたし達の為だけに式を挙げてくださって有難うございました。』
『いいえ。お二人とも、お幸せに。』
司祭はそう言って環とルドルフに向かって微笑むと、そのまま教会から出て行った。
『今日は、わたしにとって忘れられない日になるな。』
『ルドルフ様・・』
『お前の屋敷に行こうか。』
『はい。』
環の屋敷に二人が馬車で向かうと、小春は既に眠ってしまったのか、二人が居間に入るとそこには誰も居なかった。
環の寝室に入ったルドルフは、ドアを閉めた後、環を背後から抱き締めた。
『ルドルフ様・・』
『いつもお前を抱いているが、今夜は新婚初夜だ。誰にも邪魔はさせない。』
ルドルフは環の唇を塞ぐと、何度も角度を変えてその柔らかな唇を啄(ついば)むようなキスをした。
環もルドルフからのキスに応えながら、彼を抱き締めた。
『ルドルフ様、早くわたしを抱いてください。』
『わかった。』
ルドルフは環を静かに寝台の上に寝かせると、ゆっくりと彼が着ているドレスを脱がし始めた。
ルドルフが舌で彼の乳首を愛撫すると、環は荒い呼吸を繰り返しながらルドルフの背に爪を立てた。
自分の腰に彼のものが当たっていることに気づいた環は、それを欲しがるかのように腰を揺らした。
『今夜は随分と積極的なんだな?』
『今夜は、貴方と過ごす大切な夜ですから・・』
『優しくしてやろうと思ったが、止めた。』
ルドルフはそう言って環に微笑むと、充分に濡れた環の蕾の奥を、自分のもので貫いた。
環とルドルフは何度も快楽の波に溺れた後、そのまま互いの腕の中で蕩けた。
『お兄様、何処へ行ってしまわれたのかしら?』
『さぁね。今頃タマキとお楽しみ中なんじゃないのか?』
『お楽しみ中って、何ですの?』
『さぁてと、俺はもうそろそろ寝るとするか。』
『お兄様もヨハン大公様も、大嫌いよ~!』
夜の王宮に、マリア=ヴァレリーの怒声が響き渡った。
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