環が奥の方へと進むと、靴音がまた奥の方から聞こえて来た。
『ルドルフ様、そちらにいらっしゃるのですか?』
『全く、お前相手に隠れ鬼は無駄だったな。』
ルドルフはそう言って溜息を吐くと、環の前に現れた。
その顔は蒼褪め、少し彼は疲れているように見えた。
『何故、ここにわたしが居ると解った?』
『貴方が一人で自殺しようとするとき、人気のない場所を選ぶだろうと思いました。』
『そうか・・お前は、まるで超能力者のようにわたしの心を読むのだな。』
ルドルフは、隠し持っていた拳銃を環に手渡した。
『安心しろ、弾は全部抜いてある。』
『王宮へ戻りましょう、ルドルフ様。皆さん心配していらっしゃいます。』
『解った。』
ルドルフと共に環が馬車で王宮へと戻ると、ルドルフの姿を見たロシェクが安堵の表情を浮かべた。
『皇太子様、ご無事で良かった!』
『迷惑を掛けて済まなかったな、ロシェク。少しイライラしていたから、気晴らしに散歩へ出ていただけだ。』
本当は自殺しようとしていた事をロシェクに隠し、ルドルフはそう言ってロシェクと侍従達を安心させた。
『お兄様、心配していたのよ!』
『ヴァレリー、お前にも心配を掛けてしまったな。』
涙声で自分を責める妹の頭を、ルドルフは優しく撫でた。
『皇太子様、皇帝陛下がお呼びです。』
『わかった、すぐに行く。』
皇帝に呼び出されたルドルフは、彼から皇太子妃が寝込んでしまったことを知った。
『気晴らしの散歩に行くだけで、これほどの騒ぎを起こしたのだ。必ず時間を設けて皇太子妃の見舞いに行くように。』
『解りました、陛下。』
本当は皇太子妃の見舞いに行くよりも、環と愛し合いたかったが、妻が寝込んでいるのに皇太子である自分が見舞いに行かないとなると、変な噂が宮廷中に広まるだろう。
これも自分に課せられた義務だと思い、ルドルフは皇帝の私室から出た後すぐに、皇太子妃の部屋へと向かった。
『シュティファニーは?』
『皇太子妃様なら、お部屋でお休みになっております。』
『そうか。わたしは無事だと皇太子妃に伝えてくれ。』
『かしこまりました。』
皇太子妃に直接会わず、彼女の見舞いを済ませたルドルフは、そのままスイス宮にある環の部屋へと向かった。
『ルドルフ様、これからの予定は・・』
『こんな騒ぎを起こした後だから、午後の予定は全てキャンセルしろと父上から言われた。久しぶりに、お前と愛し合えるな。』
『まぁ、そのような事をおっしゃって・・』
環がそう言ってルドルフを見ると、彼は環をソファの上に寝かせ、環の唇を塞ぎ、啄むようなキスをした。
ルドルフから何度もキスをされ、環は身体の奥から快感の渦が生まれるような気がした。
『ルドルフ様、焦らさないでください。』
『別に焦らしているつもりなどないが?』
意地の悪い笑みを浮かべるルドルフを、環は恨めしそうな目で見た。
『まぁ、わたしもそろそろ限界だ。』
ズボン越しに自分の硬くなったものを環の腰に押し付けたルドルフは、ドレスの裾を捲り上げた。
『こんな所でしたくはありません。寝室で・・』
『ありきたりの場所でするのは飽きた。内側から鍵を掛けているから、誰も入って来ない。』
『そういう問題では・・』
環はルドルフに抗議しようとしたが、その前に彼に唇を塞がれた。
ルドルフからのキスと愛撫を受け、環が甘い声を漏らさないように耐えていると、ルドルフが突然自分を貫いてきた。
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