「よく来たね。」
総司と千が八坂神社の鳥居をくぐると、そこには伊東と薄井の姿があった。
「沖田君、あれを御覧なさい。」
そう言って伊東が指した上空には、オーロラの隙間から一筋の光が自分達の元に射していた。
「もうすぐ“時空の扉”が開く。沖田君、これから君は薄井さんと未来に行くんだよ。」
「嫌です、わたしは土方さんとは離れたくありません!」
「君の病はここでは治せない。君は、土方君の足手まといになってでも、彼の傍に居たいと思うのかい?」
「それは・・」
伊東の言葉を聞いた総司の瞳が、大きく揺らいだ。
「土方君だって、ここで薄井さんと共に君が未来へと行くことに心の中では賛成している筈だよ?」
「そうだよ沖田さん、迷っている時間はないぜ?」
伊東と薄井の言葉に、総司は薄井と共に未来へ行くべきかどうか迷っていた。
未来に行けば、労咳が治って歳三と共に居られる。
彼がその生涯を終えるその時まで、彼の傍に居られるのだ。
「・・解りました。」
「沖田さん!?」
「薄井さん、わたしを未来に連れて行ってください。」
「その言葉を聞きたかったよ、沖田君。薄井さん、後は宜しくお願いしますね。」
「ああ、任せとけ。それよりも伊東さん、この餓鬼はどうする?こいつが後であいつらに面倒な事を色々と話したら、あんたもまずいんじゃないか?」
「そうだねぇ・・千君、残念だが君にはここで消えて貰う事にした。」
伊東の言葉を合図に、千の周囲を数人の男達が取り囲んだ。
千は首に提げていた呼子を吹いた。
「斎藤、今の音は何だ!?」
「きっと千が呼子を吹いたのでしょう。副長、急ぎませんと!」
「おう!」
歳三と斎藤が八坂神社へと急いでいる頃、千は刀を抜いた男達に向かって砂を投げた。
「畜生、目が!」
「逃がすか、餓鬼!」
千が男達から必死に逃げていると、総司が薄井と共に社の奥へと進んでいくのが見えた。
「沖田さん、行っては駄目だ!」
「やっちまえ、相手は一人だ!」
千は二人を追いかけようとしたが、男達が彼の前に立ち塞がった。
「そこを退いてください!」
「うるせぇ!」
男達の一人はそう言うと、刃を千の頭上に振り翳した。
だがそれは千に届く前に、男の手から甲高い音を立てながら地面に落ちた。
「千、大丈夫か!?」
「土方さん・・ごめんなさい、僕・・」
「総司は何処だ?」
「沖田さんなら、あそこに・・」
千がそう言って社の奥を指すと、そこは眩いばかりの蒼い光に包まれていた。
「あれは、何だ?」
「恐らく、あの光が“時空の扉”だと思います。」
「総司、行くんじゃねぇ!」
自分の仲間を殺された男達を一人ずつ斬り伏せながら、歳三が光の中に向かって叫んだ時、彼の全身が突然蒼い光に包まれた。
(何だ、こりゃぁ・・)
自分の身に起きた異変に気づいた歳三がふと千の方を見ると、彼も蒼い光に包まれていた。
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