「千、どうした?」
「いえ、ちょっとボーっとしちゃって・・すいません。」
キッチンで食器を洗っていた千は、突然歳三に話しかけられて我に返った。
「あの西田っていう女、いつの間にかマンションから引っ越していったんだな。」
「ええ。でも僕、西田さんに散々意地悪されたのに、彼女が居なくなったことを知っても何も感じないんですよね。ざまぁみろとかいい気味とか、面と向かって彼女に言いたかったのに・・」
「いいんじゃねぇか、何も感じない方が。あの女の性格を考えれば、何処に行ってもあの女はお山の大将で威張っているだろうよ。」
「まぁ、そうですね。居なくなった人の事は忘れます。」
千が歳三に茶が入った湯呑をリビングのテーブルに置くと、彼は読んでいた雑誌から顔を上げた。
「済まねえな。」
「あの、さっきから何を読んでいらっしゃるのですか?」
「ああ、これか?ちょっと今後の参考になるかと思って、近くの本屋で買って来たんだ。」
歳三がそう言って置いた雑誌は、育児雑誌だった。
千がよく雑誌を見ると、雑誌には付箋(ふせん)が貼られてあった。
付箋が貼られたページを千が開くと、そこには『性生活―夫婦の永遠のテーマ―』というタイトルと共に、『互いの愛を深める為の体位』がイラスト付きで紹介されてあった。
「土方さん、これ・・」
「あぁ、これか?昨夜総司とここでして以来、あいつよく誘って来て、困っているんだよ。」
「そうですか。土方さん、沖田さんと仲がいいのは良いですが、ほどほどにしてくださいね。」
「あぁ、言われなくてもわかっているよ。」
千は溜息を吐きながら雑誌を閉じると、リビングテーブルに置いていた歳三のスマホが鳴った。
「済まねぇ。」
歳三はそう言ってスマホを掴むと、ベランダへと出て行った。
「総司、どうした?何かあったのか?」
『ねぇ土方さん、わたしが今何をしているのか知りたくないですか?』
「一体どうした、急にそんな事を聞いて?」
『今ベランダで、土方さんの声を聞きながら、一人でしているんです。ねぇ土方さん、早く部屋に来てわたしを抱いてくださいよ。』
「わかった、直ぐに行く。」
歳三はスマホを無造作にスウェットのポケットに突っ込むと、ベランダからリビングに戻った。
「千、少し出掛けて来る。」
「また沖田さんの所ですか?」
「ああ。」
少し呆れたような顔をしている千に見送られながら、歳三は部屋から出て総司が居る五十階の部屋へとエレベーターで向かった。
今頃総司がベランダで自分のものを慰めながら自分を待っている姿を想像していると、歳三は自分のものが硬くなっていることに気づいた。
「総司、来たぞ。」
はやる気持ちを抑えながら歳三がインターホンを押すと、施錠されたドアが開いた。
「土方さん・・」
荒い息を吐きながら歳三を出迎えた総司が着ているマキシ丈のワンピースに白い染みを見つけた歳三は、そのまま床に彼を押し倒してワンピースの裾を捲り上げた。
「本当に一人でしていたのか?」
女物のパンティーにも、白い染みが広がっていた。
「土方さん、今日はお風呂でしましょう。服が汚れたら、貴方も嫌でしょう?」
総司はそう言って歳三にしなだれかかりながら、彼の股間をスウェットのズボンの上からそっと撫でた。
「総司、悪ぃが今日はあれ、持って来てねぇんだ。」
「あんなもの、必要ないでしょう?早くわたしを抱いてくださいよ。」
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