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2011年11月30日 楽天プロフィール Add to Google XML

 ◎報徳社員の心得 遠江 新村里三郎
[ 鈴木藤三郎 ]    

 

◎報徳社員の心得 遠江 新村里三郎(「報徳」第31号明37年9月P19-21)
 (旧仮名づかい、振りかなを読みやすく直した)   

総則

夫れ天地の化育を賛(たす)くれば、則ち天地(てんち)と人との三つなり。又天地相和(あいわ)して万物生じ、貧富相和して財宝生ず(1)
と、先師二宮翁の教訓なり。それ是に則り、人道の誠を以て、貧を助け救ふ故に、三才報徳元恕金(がんじょきん)と号(なず)けられしよし。又曰く、天地(あめつち)の間(あいだ)に生ぜし財宝は、元一己のものに生じ、奪う時は天理に背き、譲るときは天理に叶う。恐れ慎むべき事なりとあり。
人の万物の霊長となるは、天地の化育を賛(たす)くるにあり。その実業なきときは、人ともなれず、又万物の霊長ともならず、いわゆる禽獣(きんじゅう)にひとし。凡そ人道は、万物の霊長となるべき、則ち化育の道を賛(たす)くるにあり。人たるもの、務めて怠るべからず。

天地相和(あいわ)して万物生じ、貧富相和して財宝生ず、とは即ち右述ぶるが如し。その天地相和(あいわ)すの道は、天性自然に行はれて、間違いを生ずべきことなし。然るに貧富相和し、財宝生ずるの和する方に於ては、人皆間違いを生ずる事あり。とにかく貧者は富者の財を平均にするを和すと思い、不平を生ずることあり。都(すべ)て天地相和(あいわ)して財宝生ずるの道理を能(よ)く弁知して、貧富相和するの所以に違う事なかれ。

報徳金差出者の心得
人は世に在る所以を尋ぬるは、天地人三才の恩徳なくして、世に在るべきいわれなし。社員たるもの能(よ)くこの道理を了知すべし。宜しく三才の徳沢広大なることを覚り、実業を以て之を報ずると雖も、確証を出(いだ)さざれば、永く誠心を全うすること能(あた)わず。故に国家万端潤助のために、日課縄索をなすか、或は節倹を守りて余財を生じ、是を報徳金と唱え差出(さしいだ)すべし。是を始め報徳加入金と号し、のちその誠意に因り報徳元恕金(がんじょきん)と、改称するにぞあるべし。
 かつ世人普通会社の常情に流れ、一己の為めに通常積立金、或は預け金を成すの、存意を以て差出す金員は、本社に於ては請取ことなし。報徳社は報徳の意にあるものを以て、取扱うの社会なり。

無利足金の訳

報徳の趣意に従い、差出したる金円は、いわゆる日輪東より出(いで)て、西に入り、一年365日旋転して、天下万物ことごとく生育なす。然れども日輪(にちりん)毛弗(もうふつ)の損なくして、万物生育す。是によって是を見れば、報徳金も又然り。斯(かく)の如く無利足にて貸渡し、国家の潤沢を専らとす。故に報徳社は毛弗(もうふつ)の損益なく、借りたる者の方に財貨を生ず。之に依て報徳金貸付は、即ち日輪の旋転に基づき、無利足を以て、貸与するを法とす。故に先師曰く、有欲にして有欲に非(あ)らず、無欲にして無欲にあらず。正に日月の国土を照らし、万物を生育したまうに基づき、取り扱うものなりとの謂(いい)なり。

無利足金を拝借したる者の心得

人の世に在る所以を弁知し、報徳の趣意に従い、恩徳を報ずるの誠意を忘るべからず。潤助の為め差出したる、報徳金に拘(かかわ)らず、社会の拝借を請け、その沢を蒙むるに至りては、謝礼を出さざれば道は当らず。何となれば借らざる以前にすら、三才の恩沢を知りて、冥加の為めに差出したるものなればなり。然るに世に恩を請けて報わざるものは、人道にあらざること確(しか)と自証して、五ヶ年賦なればその一ヶ年分、則ち二割の礼金を差出すべし。これを号して報徳元恕金(がんじょきん)と云ふ。
 一度恩を請け数度の礼金、則ち元恕金(がんじょきん)を差出すも随意たるべし。然りと雖も元恕金(がんじょきん)の名称あるものは、返戻することを許さざるべし。

貸付金投票の心得

報徳金貸付の法は、たとえば農力を尽し、天地より収穫を得るに基づき、取り扱うものなり。それ天地は貧富の別(わか)ちなく、農力を尽くすものへは、収穫の多きを与ふ。故に社金貸付方も必ず、貧富の別を為すことなかれ。富人と雖も丹精を尽くさざれば、天地は収穫薄きを与う。社会もまた然り。斯(かく)の如き富人といえども、丹精義務を尽くさざれば、通常の貸付より、多きを貸与することなし。貧人にして金員必用に付き、無利足金拝借を申し出ると雖も、漫(みだ)りに貸付を許さず。何(なん)となれば既に今日餓死するの貧人と雖も、丹精義務を尽くさざるものにも、天地格別の憐れみを垂れたもうて、別にその収穫多きを、与うることあらざるが故なり。昨日まで怠惰にして収穫を得ざるの輩と雖も、今日より過ちを改め、丹精義務を尽くすときは、必ず天地その収利を与うべし。本社に於いても斯(かく)の如き、不丹精の社員と雖も、今日より志を正し丹精を尽くすときは、社金多きを貸与すべし。農力を尽くし収穫を得ると知りて、未だ勤めざるの農人に、天地収穫を与えやる事、いまだこれあらず。故に本社に加入したりといえども、不勤の社員には、無利足金を貸与することなし。天地の道たるや誠に明らかなり。農事則ち丹精を尽くす者には、収穫多きを与え、不丹精の者には、収穫薄きを与う、作らざる者には、天地収穫を与うことなり。
人の道たるや天地の化育を、賛(たす)くるの道を怠るべからず。貸付金投票をなすは、都(すべ)て天地の御仕事を見て、是を確証となし投票を成すべし。然れば不丹精の者と雖も、農人に比較するときは、転地より不精(ふせい)の農人にも、その収穫幾分の薄きを与え、不丹精の社員なれば、自然投票の数薄きに至る。拝借金漸次跡廻しになるなり。是則ち自然の理にして、止むを得ざればなり。然りと雖も、通常の金額は貸与すべし。もし返済に怠るときは、以後の貸与をなさず。是則ち農人種まきの実(じつ)を廃し、耕うんの仕事を、止めたるに等しきが故なり。社員たる者、能々(よくよく)この道理を心得、勤め行うべき事なり。

 

(1)森町報徳社(後に報徳遠譲社、報本社)は尊徳先生・福山滝助由来の無利息貸付の理念を大切にしていた。

「草の根の思想」(静岡新聞社)でも無利息貸付を行っていた(森町の報本社は解散している)ことを掲載している。

鈴木藤三郎も「天地相和して万物生じ、貧富相和して財宝生ず」という考えを大切にしていた。これはまた森町報徳社の報徳社員として学んだことかもしれない。

後に台湾製糖株式会社社長のとき、この考えを会社と原料のサトウキビ農家との間において双方に利益のある「両得農業法」を組立て、会社が永遠に存続できる基礎、グランドデザインを創った。

それを第1集90~91ページでこのように述べた。

「 33 台湾製糖の社有農場の買収と建築材料及び製糖機械の運搬

明治34年(1901)12月-。46歳。

台湾高雄橋仔頭-。「両得農業法草案」。

「二宮先師訓に曰く、天地相和して万物生ず、男女相和して子孫が生ず、貧富が相和して財宝生ずと、宜(むべ)なる哉言。原来会社は此主旨に法(のっと)り、人民と共に天地間に充満せる未だ所有者なき財宝の開をに勉め、会社の為め国家の為め鋭意専心実行あらんことを希望す」

土地社有のことは、明治34年(1901)1月28日の臨時株主総会で決定したので、直ちに橋仔頭及び岡山付近に、およそ一千甲見当を買入れるべく買収に着手した。

 台湾の土地制度は清朝時代のままの煩雑なものだった。清朝時代、資力権勢を有した豪族は、争って官有地開墾の許可を受け、蕃地の越墾を行って各自の開墾区を所有したが、彼らはその土地を自ら開墾することなく、実際の開墾経営者に貸与し、経営者は更に小作に付していた。同一土地について開墾権所有者、開墾経営者、小作人の三段階があり、それぞれ大租戸、小租戸、現耕佃人と呼ばれた。領台後、児玉総督、後藤民政長官の下、明治31年土地調査事業に着手し同36年に完成したが、まだ十分な整理はできていなかった。

 このように土地調査は中途で、権利関係は複雑で不明確な上、農民は台湾製糖の事業を十分理解せず、旧来の慣習に束縛され、土地の買収は困難だった。しかし、台湾総督府の有力な援助と、台湾統治後、民心も次第に融和してきたため、当社第一年度(明治33年12月10日-34年6月30日)においては746甲、次年度(明治34年7月1日-35年6月30日)までには合計1,031甲を買収することができた。第3年度、明治35年-36年以後は自作を実行するになったが、さとうきびの品種の改良を図るため、第1年度においては約30甲、第2年度においては約36甲に耕作用蔗苗を試作し、他は小作に付した。

 さとうきび栽培について、農民を誘導し品種の改良、耕作方法などを改善させようと苦心したが、旧来の習慣を守る農民は実行せず、土地を所有しても、その効果がすぐには顕れがたかった。鈴木社長は、農民に利益を与え、同時に当社も利益を挙げ、さとうきび農業を進歩させる「両得農業法」を案出した。明治34年12月付の「両得農業法草案」は、次の言葉で結んでいる。

「この方法を実行すれば、会社及び農民の両者間において2万6千円の実利を生ずる。もしそれこの方法を会社は今後買収した土地にあまねく施すときは、その利益はますます大きくなるであろう。二宮先師訓に曰く、『天地が和して万物が生ずる、男女が和して子孫が生ずる、貧富が和して財宝が生ずる』と、まことにこの言葉の通りである。元来会社はこの趣旨にのっとって、人民と共に天地の間に充満する、いまだに所有者がない財宝の開発に勉めて、会社のため、国家のために鋭意専心実行していくことを希望するとここに言っておく。」

 台湾製糖は、創業の初めから農民との共存共栄を図りつつ、土地所有を社是として進んで来て、広大なものとなり、いよいよその真価を発揮している。創立当初に樹立せられた大方針を顧みれば、今更ながら当路者の先見卓識に敬服せざるを得ない。」



最終更新日  2011年11月30日 06時14分18秒


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