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2014年07月12日
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[六] 足下はキリスト教の教義を以て、勅語の精神と並立しあたはざるものと論結にして確実なるものとすれば、キリスト教は日本国において厳禁せらるべきものにして、耶蘇宗門禁制の表札は、再び日本橋端に掲げらるるに至らん。帝国大学に職を奉ずるキリスト教徒を始めとし、我が帝国政府部内にあるキリスト教徒は、直ちに免官すべきなり。足下すでに足下の持論を世に公にせられたり。而して誠実なる日本国民として、真理を重んずる学者として、足下は与論のクルセード[十字軍]を起こし、キリスト教徒撲滅論を講ぜざるべからず。足下の責任もまた大なるかな⑸。
 然れども、余は足下に一の注意を与えざるべからざるを得ず。ここにキリスト教にまさる大害物の我が国に輸入せられしあり。即ち無神論、唯物論これなり。足下の論文によりて見れば、足下はハーバート・スペンサーに対し、多分の尊敬と信用を置くが如し。ミル、スペンサー、バックル、ペジョウ等の著書は、我が国西洋の学者のはやくより嗜読せしものにして、今日の日本を造りだすにつきて、これら英国碩学の著書があづかりて、大勢力ありしは、けだし疑いなき事実なり。而して足下の公平なる哲学的眼光は、唯物論と勅語とは並立し得るものと信ぜらるるや、余は試みにここに一、二の実例を挙げて、足下の教訓を乞わんと欲す。スペンサー氏の代議政体論は我が国英語研究者の教科書として広く用ひらるる書なり。その需要の大なるや、数種の翻刻を市上に見るに至れり。我が国幾万の子弟は、この書を読みつつあるなり。而してその独裁政治を論ずるや左の語あり。(英文略)余はここに余の拙劣なる翻訳を付し、この公開状の読者にして英語を解せざる人のためにす。
 服従の性は、無数罪悪の原因となり、高潔の士(the nobleminded)にして服従を肯んぜざる者を拷問殺戮し、バスチル、シベリアの惨状を演ぜしめしも のなり。これ知識、思想の自由、真正の進歩の圧抗者なり。これいずれの時代においても、王室の弊害を醸し、この弊害をして国内に流行せしめしものなり。・・・・・過去の記載によるも、地球面上に散布せる未開人種を見るも、欧州今日各国の状態に対比するも、主権に対する福寿は、道徳と知識の増進すると同時に減退するを見る。昔時の武勇崇拝より今日の「オベッカ主義」(Flunkeyism)に至るまで、この服従の精神は、人性格の最も鄙劣なる所に最も強し。
 而してこれその最も甚だしきものにあらざるなり。その前後二三ページに渉る記事を見よ。而していかにして「天壌無窮の皇運を扶翼すべし」の勅語と並立し得るかを余輩に弁明せられよ。 
 余にもし時と余白とをあらしめば、余はウオーター・ペジョウの究理政治論より、ミルの代議政体論、その他バックル、ペイン、ボルテヤ、モンテスキューの著作より、我が国の尊王心を全然破壊するに足るべき章句を引用し得るなり。これ宜(むべ)なるかな、我が文部省は一時官立諸学校に令して、前述のスペンサー氏代議政体論を教科書として使用するを禁ぜられたる事や。
 我が国フランス学者の中に最も愛読せらるるルソーの民約論は、皇室の尊栄を維持するがためには害なきものと信ぜらるるや。欧米の学者にしてキリスト教を攻撃せし記者は、多くは王政をも攻撃せしものなることは足下の知る所なり。然るにキリスト教を以て我が国体を転覆するものとして嫌悪する我が国の教育者が、ペジョウ、スペンサー等を尊拝するは、余の未だ了解しあたわざる所なり。
 昔時ローマの虐帝ネロは、手づから火をローマの市街に放ち、その煙焔天にみなぎるを見て、一夜の快を得たり。然るに後、公衆の疑念と憤慨とのその身にあつまるを見るや、直ちにキリスト教徒を捕へ、罪を彼らに帰して、彼らを殺戮せりと。今日我が国西洋学者もまたネロ帝を学ばんとするにあらざるか。世の軽薄に進み、礼儀真率の地を払ふに至りて、その罪をキリスト教徒に科せんとするものは誰ぞ。
 日本は足下の国にして、また余の国なり。偽善と諂媚とはどこに存するも、共に力をあわせて排除すべきなり。然れども軽率と疑察とは、志士の共同を計るにおいて用なきなり。我ら恭謙なる日本国民として、注意深き学者として、公平なる観察者として、他を評するに寛大なるべく、事実を探るに精密なるべく、結論に達するにゆるやかなるべきなり。足下この公開状を以て、足下のいわゆる「一々答弁をなすほどの価値あるものにあらず」となさず、余に教訓を垂るるあらば、あに余一人の幸福のみならんや。不備。  明治二十六年二月大阪において

⑸ 井上哲次郎は後年著『我が国体と国民道徳』に、不敬
の語があるとして攻撃される。内村は、「文学博士井上哲次郎氏が不敬著書の故を以て社会に責められ、終に貴族院勅撰議員の栄職を辞するに至れりとの事を今日の新聞紙に読み、感慨無量であった」と述懐する。





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最終更新日  2014年07月12日 22時36分02秒



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