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2014年07月27日
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カテゴリ:広井勇&八田與一
『二宮翁と諸家』には、岡田良平、井上哲次郎そして内村鑑三という不敬事件の三人が寄稿していて興味深い。
岡田は「尊徳翁と二宮制度」で、「時局の推移は特に先生の遺教を発揮するの最も適切なるを感ぜしめるものあり」とし、「今や日露戦役は、無前の大捷(たいしょう)を以て、茲(ここ)に其の局を結びたるも、之に要したる戦費二十億万円は今後一に人民の勤労に依りて、之を填補せざるを可からず。然るに此時に方り人心夙(はや)く既に倦怠を来し、軽佻浮華に流れ苟且偸安(こうしょたうあん)を事をすることあらんか、戦捷の光栄は却て永く国家衰頽の憾を遺すに至るべし。・・・況んや清韓及樺太の経営は国民の将来最も努力を要すべき所独立自助の精神と不撓不屈の気魄とは時運の進展に向て益々之を拡充せざるべからず。」と述べる。報徳は経済と道徳を調和するもので、地方の殖産教化に資するという見解である。
 井上哲次郎は、「二宮尊徳翁は、余も多少研究する処あり」とし、三浦梅園、貝原益軒、佐藤信淵、ホッブスなどとその思想を比較し、「グリーンの道義説」と似るとする。
内村鑑三の「愛土心と尊徳翁」(同書p.160)を現代語表記で載録する。
「二宮翁ですか。報徳社員のある者は、二宮をヤソにとられたといっていますよ。なあに、取るのではない、彼らで取られるようにしているのです。報徳社をご覧なさい。から生命(いのち)をなくして、今ではただ金の周旋所ではありませんか。教会の腐敗と同一般である。
 とにかく二宮翁は偉い。世界的の人物です。つまり日本の農業の極めて良い処を代表しているでしょう。想うに日本の農業ほど恐ろしいものはありませんぜ。満州軍より恐ろしい。なにしろ僅かな土地から大いなる収穫を得る方法を知っている点においては、恐らく我が農夫は世界一でしょうよ。わたくしはいつも東海道を汽車に乗って、彦根、静岡あたりを通るとき、窓から眺めては感ずるのです。これではまるで畑地 Farm ではなくって農園 Garden だと。
 何しろ日本の良いものは皆農業に残っているのですよ。あの百姓が土地を愛する様(さま)といったら、まるで昔の『ゾロアスター』宗(拝火教)から来たかとでも思われるほど、ほとんど土地を崇拝しているのです。こんなにまで土地を大切にして、せっせと働く世界一の百姓がいるから、この貧乏国を持ってゆくのです。この土地を愛する思想の花と咲いたのが尊徳翁でしょう。
 さよう、トルストイも百姓が一番良いといいましたね!そうです。百姓は仕事そのものが人を善くしますからね。商人などは、悪いもの誘(いざな)うものに多く接するから、往々にして仕方のない者が出来ます。とにかく我が百姓の土地を大切にすることと、倹約なこととは世界中いずれにくらべても劣るところはありますまい。というのも、外にこれという産物もありませんからなあ。
 わたくしなぞが伝道して愉快な結果を得るのは、多く百姓です。商人間にも稀にはあるが、はなはだ少ない。どうも田舎には模範的農夫(ティピカル・ファーマー)がいますよ。土地を二三町持て、先祖代々の百姓、真正直で、嘘は毛頭つまない、大儲けもせず、ごく質素で、牛を飼ったり、鶏を養ったり、いろいろの事をして出来るだけおの物産を作り、しかも精神は優に一個の紳士である。先日も西洋人が日本の社会を見に来ましたから、そういったのです。あなたがたは都会をうろうろしていても、日本の社会はわかりません。この私の家だって日本の家ではない。真の日本は、田舎の田舎の、煤(すす)けた、柱の太い、萓屋[かやぶきの家]の内に始めて見るべきですと。
 百姓が土地を愛するのと好一対の佳話があります。そのかみ石狩川のシャケを保護する新法律がたくさん出たが、そのうちで一番いいのは松前藩のでした。というのも松前藩ではシャケを愛するの精神から、夜、河畔で鍋焼うどんを売るのを禁じた。それはシャケが夜、川に上って卵を産まんとするのを、その呼び声で驚かす恐れがあったからです。今の多くの人にはこの精神が欠けてはいはしまいか。資本を愛さないで、ただその産出物を多く取ろうとするので、遂に思わしい産出物も得ぬようになる。さようさよう心をもって、苗木を愛して植え付けぬと、付くものではないことは、二宮翁の教えにも似寄ったことがありました。
 わたくしが『日本及び日本人』中に二宮を書いた動機ですか、別にありません。ただ『報徳記』を読んでその偉いのに驚いたからです。全くいい本です。いわばボスウェルの『ジョンソン伝』[サミュエル・ジョンソンは英語辞典を編集。弟子のボズウェルが著した『サミュエル・ジョンソン伝』はジョンソンを生き生きと描き、人物伝の名著とされる]ですね。ジョンソンその人は果してどんな人物だか知りませんが、伝記は実に面白い。ナニ報徳記の文章はさほどでもないようですが、その偉いところは文章でなくって、事実にあるのです。
 今になってみると、特別に二宮を唱導する必要は認めません。キリスト教中には、あらゆるものを含んでいます。『ソロモンの箴言』なぞ、実に深い教えです。ただ古来かかる人があったということは、日本の農業の改良をなさばなしうるという恃(たの)みになるのです。いわば二宮に接ぎ木する二宮台木主義です。もちろん二宮の台木にキリスト教を接ぐのです。武士道だって武士道そのものはつまらないが、キリスト教の台木にはよろしい。
 あの私の知人で、山形から歳ごと、リンゴを送ってくれる百姓がいますね、立派なリンゴで、とても北海道だって見ることは出来ぬようなのです。それでこれに付けて送り越す文句が面白い。曰く『これは神と私との協同作業によって得たものです』と。二宮翁は大学を読みつつ縄をなっていたというが、我々の接ぎ木した二宮は讃美歌を唱えつつ鍬を握るのですよ。」





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最終更新日  2014年07月27日 14時50分58秒
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