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2014年10月22日
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『桜町治蹟』を読む
『桜町治蹟』は山本東野氏が編集し、明治四十四年十月下野報徳本社が発行した。自序によると、山本氏は桜町陣屋に三週間滞在し、報徳記などのほか、芳賀郡長青木浦次郎、現物部村長広澤平八、家庭学校長留岡幸助、下野報徳本社幹事長海老澤元蔵、物部尋常高等小学校長笠村勝三、真岡町田村直七、芳賀郡山前村高松甚兵衛氏等から直接関接に参考資料を提供され、土地の古老の談を伝えられ編集したとある。いわば二宮尊徳の桜町時代のエピソード集である。報徳記に漏れている逸話や人物の名前が分るものもあり、また二宮尊徳の考え、教化や教育の方法を知るうえで貴重である。そのいくつかを紹介しよう。
一 盥(たらい)の水の原理
尊徳は実物教授の主義でどこでも説かれ、推
譲の理屈も何人にも分かるように話された。人夫などが仕事の休みなどに、タライに水を酌んで置いて、『その水を前の方にばかりかいて見よ。幾ら汗水を流して前へかいてもその水は向うに行ってしまう。しかしこれと反対にこの水を向うにばかり押すというといくら押しても帰って来るばかりである。欲が深く自分の方にばかりかきこんでそう自分の方にばかり来るものでない』と言って開墾事業の視察に行っては実物について話された。これは盥の教訓と言われて名高い話である。」この盥の水の教訓は、推譲の理を譬えで分りやすく説かれたものである。
報徳教林【六四】盥の中に水を入れ、己が方へかき寄せれば両脇の水は向うへ行くなり。又前の方より向うの方へ水をかきおくれば、両方の水、前の方へ来るなり。又作物も大切の種を向うへ蒔く時に後にこの実り来るなり。(『尊徳門人聞書集』p.13)
二 お椀の水の原理
「尊徳は常に門人に語るに、『私の巡回は、全
く村民に勉強の習慣をつけさせたいという趣
旨から来ている。これを譬えると椀の中に箸
を入れて廻わすと、始めは箸のみまわって水
はそのままだが、暫くすると水もまわり始め、
水のまわる勢いが段々強くなると箸はまわさ
なくても自然と水の勢いのため箸がまわるよ
うになる。私の巡回の趣旨もその通りで、始
め村民は惰弱の者があっても自然と感化され
て勤めるようになるから早起きをして巡回し
ているのだ』と言われた。」
三 翁の除草と実地の教育
尊徳は常に農民に語るに、畑の草は小さい草
から取れ、余り多く生えていない所から取れと言われ、反対に多く生えた所から始めて時日を費やすうちに小さい草が大きくなると言われた。尊徳が復興事業を行うにもこの方法で、まず小さな平易な所から始め難しい所の仕法をした。ある日多数の人夫が堀浚いをしている時に人夫が一鍬ごとに泥がはねる。翁はこれを見て素足になって鍬を取って上の方の泥をすくいて左右にならしてその後を掘ると少しも泥がはねないようになった。自ら手を下し、工夫改善する方法を教えた。
四 子供の教育
 尊徳が桜町陣屋着任後二、三年を経て、弥太郎が五、六歳の時、左官を呼んで陣屋の壁を塗らせた。弥太郎は子ども心に壁の所を通り抜けようとした。乳母は通れないと話したが承知しない。翁はそこにいて、それなら通してやろうと左官に壁を破らせて通らせたら弥太郎は大いに喜んだ。それから左官に壁を作らせ、弥太郎を膝下に呼んでこういう所は通る所ではない。通ってはいけない所を通るのは人のするべきことではない。左官もいるから破った壁を修理できて怪我もなくてすんだが、そうでなければ怪我するだろうから決してこういう所は通ってはならないと誡められた。翁は、始めは満足を与えて、それから後に諄々と躾けられた。翁はみだりに子どもを叱るようなことはなく、子供を愛された。子の弥太郎が自宅や同僚の横山周平の家にいた時、翁の膝の上に上がったり、寝転んだりしても叱りつけるようなことはなく、私は子どもは好きだから少しのことでは叱らないと言われた。尊徳は毎日朝は早く家を出て夜は遅く帰るということで、子どもの生長のことはよく知らなかったくらいで、家庭の教育は夫人にまかされていたが、仕事の都合で陣屋にいる時は愛情が一層深く、ちょっと陣屋にいても、よく子どもの躾けには注意されて愛情を注がれて善い方へ導かれた。決してはげしく子どもを叱りつけるやり方はしなかった。
五 杉皮むき職人への慈愛 
桜町陣屋出入りの職工は翁の命を受け日々、東沼の寺境内の杉皮むきをしていたが、夜になるとよい杉皮を盗んで自宅の壁に張って、しぶき除けとした。誰言うとなく噂となった。翁ははやくから知っていたが何ら処置をしなかった。ある日、翁は杉皮の検閲のために来られ、その仕事振りを見ていたが、「お前の家は風当りの所だから壁が弱かろう。杉皮の屑はお前に与えるから持っていき壁の押しぶちに使用せよ」と言われて帰られた。某は尊徳の後姿を拝んでその寛大の徳に感じ改心して無比の善人となった。
六 翁は廉潔の人なり
 尊徳は横山周平を非常に信頼され、出府の際など周平の宅に宿泊された。ある時、翁が江戸に出て周平宅に滞在された時、種々の進物を持参し尊徳に面会を求めた者があったが、尊徳は謝絶した。周平夫人が気の毒に思って取りなしたが頑として応じなかった。尊徳は、「私の目は後ろにもあれば面会をしなくともその来意は分る。無駄な面会をして、時を費やすのは欲しない」と言った。翁は面会を請う者からの進物は受けることを禁じたが、翁の留守など取次人はやむを得ず受けることもあり進物も多かったが、尊徳は手も触れなかった。尊徳は常に質素な生活をし、外泊の時など酒を飲まず、飯と一汁の外決して甘味を食べなかった。また外泊はしない方でどんなに夜が遅くなっても努めて陣屋へ帰った。青木の堰普請の時も遂に一晩も外泊しなかった。
七 翁と富田高慶との対面
 富田高慶は相馬の藩士、江戸の聖堂で十年儒教を学んだ。病気がちで芝の巴町の医に診察を受けた。ある時野州から来た患者の一人に「天下には私の師と仰ぐべき人物はいない」と言うと、患者の言うに、私の国に今、宇津家の所領の桜町の復興をやっている二宮金次郎という人がいる。彼の人ならどうでしょうと話した。高慶は書物を売却し旅費にあて、桜町に行き尊徳に面会を求めた。尊徳は「高慶は江戸の学者である。百姓が会った所で益がなかろう」と謝絶した。尊徳の門下生が気の毒に思い、自分の家に下宿させ暫く時の来るを待たせた。高慶は寺子屋を開き半年ばかり子弟を教育した。その人格・学識が評判になり遂に尊徳の耳に達し、今度は羽織袴を持たせ面会をしようと迎えにやった。高慶はその知遇に感じ、早速陣屋に来て翁に面会した。尊徳は「貴君は学者であるということであるが、豆という字を知っているか」と言われた。高慶は豆という字を書いた。尊徳は言われた。「貴君の書いた豆は馬が食うか」と言って、門弟に倉より一つかみの豆を持って来させ、「私の作った豆は馬が食べる」と高慶の前で見せた。これが両者の初対面である。高慶は理屈だけでは天下国家を救うことができないということを知って、誠心誠意、二宮先生について実際的に学問をしたということである。
八 尊徳は政治を口に出すことなし 
翁は生涯の中に不平のことがあっても政治上の事について口を開いたことはない。ただ東郷在任中米国の使節ペリーが浦賀に来た時に次のようなことを言った。「これに対し世間では打ちはらうと言うがそれも家康公の教えを守るのでよいかもしれません。彼の国にも不足のものがあるから彼の国の不足のものがあったらこれを補ってやり、また我が国の不足のものは彼に求めて交易をして行くようにそれを調査して、その求めに応じられるようにして、国内で入用だけのものは開発して品物を作ってやるようにして攘夷などと言わず、殖産興業の起るまで時期の来るを待つといって述べて帰したらよかろう」と言われた。そして自分の職分に忠実であればよい。政治の事は言わなくてよい。事業を行う上で決して言うべきものではない。商人は商売のことを熱心にやり、農家は農業のことを一生懸命にやればよい。牧民官は職務を忠実に行えばよいと門人などが政治の事を聴いても決して言うものではないと退けて政治に押し及ぼさなかった。また上官の干渉の不平、頑民の反抗等があっても政治の議論をしたことはない。翁は実行の人であって政治の口に論議する人でなく忠実に殖産のことを奨励した。自称政治家などがいたずらに口を政治にかりて終に財産を傾けるようのものが多いが、そういう考えをもっていては一家を保って行けないと言って深く門人らを戒められた。





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最終更新日  2014年10月23日 01時07分02秒



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