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カテゴリ:報徳記&二宮翁夜話
2 二宮金次郎の飯泉観音での悟り―金次郎よ、観音となって観音の行いをせよ―
二宮金次郎14歳の時(18歳の時)、飯泉村(いいずみむら)の観世音に参拝し、堂の下に坐して念じていたことがあった。その時、旅の僧が来て、堂前に坐してお経を読んだ。その声は微妙で、その深理は広大で、金次郎は一たび聞いてその真理がはっきりわかって、心の中が歓喜にみたされた。僧がお経を唱え終わった後、金次郎は謹んで僧に聞いた。 金次郎:今、読まれたお経は何というお経ですか。 僧侶:観音経(かんのんぎょう)です。 金次郎:私はこれまでしばしば観音経を聞きました。今、聞くところと異なっていました。どうしてあなたの読まれたのが私の心にしみとおって明らかなのでしょうか。 僧侶:ふだんは呉音で中国風に棒読みにしているからおわかりにならないのでしょうけれども、ただいまのは和訳のお経を読みましたからおわかりになったのです。 (金次郎は懐の中を探って、銭二百文を出して僧に差し出して言った) 金次郎:寸志を差し上げますので、今、一たびお経を読んでもらえますか。 (旅の僧がもう一度「その時に無尽意菩薩(むじんにぼさつ)、すなわち座よりたってひとえに右の肩をあらわにして・・・」と和訳の観音経を唱え、去っていった。金次郎は大変喜んで、栢山村(かやまむら)の菩提寺、善栄寺の考牛和尚に会って言った) 金次郎:なんと偉大なことでしょう。観音経の功徳は。その理は広大無量です。み仏の思いは慈悲をもって人々を救い、世を救い、すべての人々を安んじようとするものです。観音経は、子供であれ、百姓であれ、商人であれ、それぞれの立場で、お互いが観音様になって、慈悲をもって一切の人々に対せよ、また動物にも、植物にも対せよ、つまりは私たちに観音様になれよということを教えるものです。私は観音経を聞いて「金次郎よ、観音になれよ」と観音様から呼びかけられたように思いました。 和尚:私は既に60歳を超えている。長年この観音経を読む事、何百回何千回になるかわからない。しかし、いまだその深理を理解できない。お前は若いのに一たび観音経を聴いて、無量の深理を明らかに理解した。ああ、菩薩の再来というべきか。今、私はこの寺を退こう。お前は僧となりこの寺を継ぎ人々をおおいに救ってくれないか。 金次郎:それは私の望む所ではありません。私の望みは祖先の家を起し、その霊を安んじようとするところで、出家して僧になろうとは思いません。私は百姓ですから、一生を百姓で通します。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014年10月30日 03時37分11秒
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