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2015年05月23日
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【一〇一】漁子の鰛魚(いわし)を網するや、其の始め綱を引く甚だ緩。独り漁長綱を巻く。敢て間断有る莫し。既に其の硾に及ぶや、漁長片板を揮へば、則ち衆漁子一心協力之を引く。甚だ急。其の魚を得るや、甚だ多し。嗟夫れ知愚老少と無く、一心漁長の指揮に従ふ者、何ぞや。之均しく其の魚を分つ故なり。堯舜の天下を治むるに、亦然り。民と其の利を同ふす。故に衆庶心を協せ、労を忘れ業を楽しみ、天下以て盛ん。叔世は則ち然らず。君為る者、唯に収租を懐ひ、民為る者、唯逋租を懐ふ。故に君民和せず。衆心一ならず。租税輸さず。国家以て衰ふ。譬へば漁長独り其の利を擅にし、衆心一ならず。衆力均しからず魚を得る能はざるなり。我が法は則ち其の理を窮め、天禄を弁じ、分度を立て、余財を推し、民と利を同ふし、善を賞し窮を恤れみ、各々其の所を得せしむ。故に土地日に闢け、田野月に修り、租税年に益し、国家以て治安んず。
【一〇二】我が法は上より下に施す道なり。天下に於ては則ち天子将軍。一国に於ては則ち君大夫。一郡に於ては則ち郡長。一村に於ては則ち村正。一家に於ては則ち主人。之を馬夫馬を養ひ、圃人茄を培ふに譬ふ。馬夫痩馬を責め曰く。重きを負はゞ則ち豆食を与ふべしと。励声之を叱するも、亦何の益か之有ん。若し一短衣を典じ、黄豆を買ひ、以て之を食はゞ、則ち其の馬必ず重きを負ふ。其の痩瘁重きを負ふ能はざるの日、之に豆食を与ふ。甚だ無益に似たり。然れども一たび与えて未可なれば則ち再びし、再び与へて未可なれば三たびす。三たび与へば則ち馬力必ず復す。馬力已に復せば、則ち能く重きを負ふ。能く重きを負へば、則ち馬夫傭銭を得。以て父母妻子を養ふに足る。是れ他無し。前に一短衣を典じ以て豆食を与ふるに由るなり。圃人の茄を培ふも、亦然り。圃人茄圃に対し曰く。多く実を結ばゝ則ち糞培すべしと。百万之を責るも、亦何の益か之有ん。若し休息の間だも、能く勤て以て糞培せば、則ち其の実を結ぶや必ず多し。衰国の民に於るも、亦然り。怠惰を甘んじ、飲博を事とし、破屋補はず。風雨庇はず。飢寒免れず。田野月に蕪し、逋租年に積む者、貧民の常なり。此の時に当り、政教有りと雖も、亦之を如何ともする末し。独り国民分度を守り、以て余財を生じ、力農を賞し、窮乏を救ひ、破屋を補ひ、水利を通じ、荒蕪を墾し、以て常産を給し、専ら恵沢を布かば、則ち惰風以て興り、田野以て治り、衣食以て足り、各々逋欠を耻ぢ、先を争ひ租を輸すや必。
【一〇三】禍福吉凶は、一なり。猶ほ米に糠有り。肉に骨有るごとくなり。鮪鱠(マグロの刺身)を見、以て骨無しと為す者、小児の見なり。肉多き者必ず巨骨有り。其の肉食ふべく、其の骨食ふべからず。食ふべきを吉と為し、食ふべからざるを凶と為す。肉食を福と為し、骨鯁(骨がのどにつかえる)を禍と為す。米糠も亦然り。米食ふべく、糠食ふべからず。飯生を養ふを以て福と為すも、亦餲して生を害すれば、則ち禍と為す。蔬菜食ふべきを吉と為し、雑草食ふべからざるを以て凶と為す。天は則ち然らず。蔬菜耘培せざれば、則ち消亡する者、消亡に任せ、雑草耘培せずして、繁茂する者、則ち繁茂に任す。然れば則ち天何ぞ禍福吉凶有ん。禍福吉凶、畢竟人道の私なり。此の理を明弁せざれば、則ち以て我が道を行ふに足らざるなり。
【一〇四】禽獣唯貪を知て譲を知らざれば、是を以て一日も安んずるを得ざるなり。鴻荒の世、人類も亦然り。神聖推譲を以て人道を立て、兆民以て安んず。嗚呼、人類の禽獣に異なる所以の者、貪と譲とのみ。若し夫れ貪惏饜く無き者、衣服を得れば則ち酒食を求め、酒食を得れば則ち声色を求む。声色を得れば則ち不老不死を求む。田禄十石を得れば則ち百石を求め、百石を得れば則ち千石を求む。千石を得れば則ち万石を求む。苟くも貪惏底止する所無くして推譲の道を知らざれば、則ち何を以て禽獣と別んや。
【一〇五】太古の世、人道未だ明ならず。鳥獣と共に居り、日夕食を求め、争奪を以て、事と為し、一日も安んずるを得ざるなり。神聖之を恤み、便ち推譲の道を立て、教るに稼穡を以てす。五穀熟して衣食饒かに、人道以て明かに、万姓以て安んず。叔世の民情動もすれば太古に反り、季秋稲疇の実るを見れば、則ち以て之を穫んと欲し、孟夏麦隴の熟するを見れば、則ち以て之を穫んと欲す。嗚呼、自ら種ゑざる者、安んぞ之を穫るを得ん。若し之を穫らば、則ち鳥獣争奪の道なり。故に季秋稲を穫るを得ざれば則ち自ら種ゑざるの過を悟り、以て麦を種るべし。孟夏麦を穫るを得ざれば、則ち以て稲を種ゆべきなり。然らば則ち稲麦以て穫るを得。嗚呼、種て而る後之を穫る。是れ人倫推譲の道なり。衰国の君民、豈夫れ察せざるべけんや。
【一〇六】天道人道相反す。何となれば則ち人の稲を好むは、其の食ふべき為なり。莠を悪むは其の食ふべからざる為なり。美衣を好むは其の衣るべき為なり。敝衣を悪むは其の衣るべからざる為なり。天は則ち然らず。草は則ち莠を生じ、衣は則ち敝るに任ず。何の好悪か之有ん。好悪畢竟人の衣食を逞するに在るのみ。
【一〇七】天道と人道と、豈異なる無らんや。循環自然は天の道なり。専ら作為を務る者、人の道なり。天道自然に随て生息し、稼せず穡せず。秋実を争ふ者、禽獣なり。天道自然に逆ふて耕耘し、稼穡を務て以て秋実を食む者、人道なり。善いかな、稼穡の道、粟一粒を播けば則ち秋実千倍。茄子の如きは則ち万倍。人の衣食之に頼る。若し夫れ懶惰日を消し、稼穡を務めず。以て秋実に飽んと欲す。是れ禽獣の心ならずや。抑々人禽に道を異する者、之を両脚に譬ふ。人道を左脚と為し、禽道を右脚と為す。将に閾を越て出んとするや、先づ左脚を出す者、人道を履むなり。先づ右脚を出す者、禽道に走るなり。千里の遠き、霄壌の差い、亦此の二脚に過ぎざるなり。其の一たび閾を出るに及では、則ち左右混行。誰か能く人禽を弁ぜん。吁、人禽二道混乱する者久し。余、天道人道の異なる所以を明にし、以て人禽二道を分説す。人能く之を弁別し、人道を履て、禽道に走る莫れ。
【一〇八】耕法一耒一発を以て度と為す。力有る人と雖も、然も二耒二発を用る能はざるなり。若し強て之を用いば、啻に其の器を毀るのみならず、亦其の身を傷る。是を以て千古以来土宜斉からず遅速同からざる有りと雖も、然も一耒一発漸を以て進むの度を易ふる能はざるなり。苟くも能く漸を以て進まば、則ち一畝より十畝に至り、百畝より千畝に及び、天下の田畝、得て尽すべきのみ。
【一〇九】人の路を行く。必ず一歩より始め、両脚遞に移すの外、他術有る莫し。仮令速なるを欲するも両脚並び挙げば顛仆す。豈止顛仆ならんや。或は四支を折くに至る。故に生民より以来、未だ二歩を以て一歩を為す者有らざるなり。脚歩健軟の異なる有りと雖も、而も一歩遞に進む。是れ天理の然る所なり。苟くも能く一歩遞に進まば、則ち軟脚者と雖も、万里の遠き、得て到るべきなり。
【一一〇】鯉魚を獲て之を市に鬻げば、則ち人必ず之を買い、割烹して之を食ひ、必ず曰ふ、美味と。人に賞歎已らざらしむ。其の江湖に在るの日、風波を凌ぎ寒暑を忍び、浮沈游泳、昼と無く夜と無く、精気を冥冥の中に運び、以て長ず。是れ豈艱苦を生前に積み、而して栄誉を死後に享るに非ずや。人宜しく此の理を察し、艱苦を耐忍し精力を生前に竭し、以て死後の栄賞を取るべきなり。





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最終更新日  2015年05月23日 16時41分03秒



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