GAIA

【四〇二】高遠及ぶべからず。隠僻知るべからず。一人之を行て、十人之を行ふ能はざる者、大道に非るなり。我が索綯法の如き細事と雖も、大道と謂ふべし。何となれば則ち婦女子と雖も、知り易く行ひ易く、天下万世に達して、須臾も離るべからざるの道なればなり。

【四〇四】賭者の敗は、勝んと欲するの変なり。商賈の不利は、巨利を貪るの変なり。租税の逋欠は、聚斂の変なり。此の理を体認し、賭者毎に銭を舎て去らば、則ち何の敗か之れ有ん。商賈巨利を貪らず、買主を利せば、則ち何の不利か之れ有ん。邦君聚斂を急にせずして、恵政を布かば、則ち何の逋欠か之れ有ん。

【四〇五】天有れば則ち地有り。故に陰陽日月寒暑昼夜相須て循環する者、自然の理なり。人道も亦然り。良人有れば則ち内子有り。親父有れば則ち子息有り。主君有れば則ち臣民有り。教師有れば則ち学生有り。金主有れば則ち券主有り。賈人有れば則ち買主有り。轎夫有れば則ち乗客有り。是れ皆相須て生を治むるも、亦自然の理なり。然り而して人に救はるゝを希て、人を救ふを好む者無き、何ぞや。今夫れ貴賤有り貧富有り。而して貴為り富為る者、人を救ふを好まずんば、則ち賎為り貧為る者、焉んぞ能く人を救ふの念を生ぜん。世間相救はずんば、何を以て生を治ん。之を商賈に譬ふ。巨商富賈、独糴して糶せずんば、何を以て有無を通ぜん。若し夫れ貴為り富為る者、各々其の分を守り、以て余罪を推し、諸を賎貧に及さば猶ほ天気下り地気上り、天地和し万物育する、貴賤貧富相和し、貸財以て生じ、両両相須て治生日に優にして、国家必ず治む。