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　樹木希林さん演じるハンセン病の元患者の高齢女性と、中年のどら焼き店店主との交わりを描いた映画「あん」が二十五日、浜松市中区田町の映画館「シネマイーラ」で始まり、河瀬直美監督が上映後、観客二百人を前に舞台あいさつした。

　「あん」では永瀬正敏さん演じる店主千太郎の下で、徳江（樹木）という高齢女性がアルバイトすることに。徳江手作りのあんがおいしいと評判となるも、徳江がハンセン病だったうわさが広まると客足は遠のくようになってしまう。原作はドリアン助川さんの同名小説。

　五月のカンヌ国際映画祭では「ある視点部門」でオープニング作品として上映された。渡仏直前、河瀬監督はロケ地のハンセン病の国立療養所多磨全生（ぜんしょう）園（東京都東村山市）で生活を続ける人たちに映画を見せると激励を受けたといい、「この映画に魂が吹き込まれた」と振り返った。

　国内では五月三十日に上映が始まり、既に四十万人が鑑賞。今後、四十五カ国での上映が決まっている。

　河瀬監督は撮影着手前、初めて療養所に行った。「それまでハンセン病について深くは知らなかったが、たくさん学ぶことはあった」と現在でも差別が続いていることを指摘する。映画では「徳江さんが失われた時間をつむぎ直せた」と話していた。

　シネマイーラでの上映は八月二十一日まで。上映時間などの問い合わせはシネマイーラ＝電０５３（４８９）５５３９＝へ。

（池田知之）