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カテゴリ:報徳記&二宮翁夜話
第二十一 教化(下) 孔子曰く、之を道くに徳を以てし、之を斉ふるに礼を以てすれば、耻有り且つ格ると。夫れ、徳を以て民を道く、固より教化の本にして前論既に之を言へり。何をか礼を以て斉ふと謂ふ。曰く、礼の実は譲に在り。譲は分に生ずるなり。何をか分と謂ふ。今、百室の邑有りて、田畝の秩を千石と為す。即ち邑の天分なり。何をか天分と謂ふ。天地剖判して大地不易の分定まる。大地判れて万国と為り、郡判れて千石の邑と為り、千石判れて十石の家と為る。此れに由りて之を観れば、分の本源は天に出でて而して易ふ可からざるや審かなり。然らば則ち此の邑に生まるる者は、天の時に因り地の利に就き、十石の田を樹芸し、耕耘培養して其の力を尽し秋穫を収めて賦税を出し、種子を蓄へて其の残数を四分し、其の一を以て儲蓄と為し、其の三を以て十二月三百六十日之を節制し、仰ぎては父母を養ひ、俯しては妻子を育つ。此れ是の邑の生民の道なり。何をか道と謂ふ。天開けて而る後両間に生々するものは、人類を論ずる亡く、禽獣虫魚及び草木まで皆自づから止まる所の命有りて存す。松の山嶺に生じ、柳の水辺に生ずるは命なり。禽獣の山野に生じ、魚鼈の河海に生ずるも亦た命なり。人類の漢土に生まれ、皇国に生まる、皆命に非ざるもの莫し。況んや千石の邑に生まれるは固より自然の天命なり。然らば則ち千石の邑に生まれ、十石の分を守る所以のもの、本原又た天に出でて而して易ふ可からざるや明らかなり。然り而して千石の邑、百戸の民、之を均しくするときは、則ち一戸十石にして、是れ一家の命分、一邑の中庸なり。然りと雖も祖先の積徳せると否とに因りて互ひに増減を生じ大小貧富の差を為す。何をか大と謂ふ。一戸の秩、天分以上なるを大と為す。何をか少と謂ふ。一戸の秩、天分以下なるを小と為す。大、之を富と謂ひ、小、之を貧と謂ふ。富めるものは天に位す。則ち天命は貧小なるものを覆育するに在り。貧しきものは地に位す。則ち天命は覆育を受け、勤動して以て其の徳に報ゆるに在り。夫れ天分十石の邑に生まれ、五石を増して以て富大の福を得る者有るは何ぞや。五石を減じて以て貧小に苦しむ者有るが故なり。我に増せば必ず彼に減ず。彼の小は則ち我の大、我の富は則ち彼の貧なり。然らば則ち大小貧富は固より一物にして相ひ離れざるや、猶ほ天地の一物にして男女の一体なるが如きなり。蓋し天余り有りて地足らず、余り有るもの必ず足らざるを補ふ。故に天覆ひ地載せ、天気下降し地気上謄し、絪縕相ひ和して万物生ず。男の女に於けるも亦た然り。男女相ひ和して子孫生まる。富の貧に於けるも亦た然り、貧富相ひ和して万物生ず。男の女に於けるも亦た然り。男女相ひ和して子孫生まる。富の貧に於けるも亦た然り、貧富相ひ和して貨財生ず。若し夫れ天地睽けば則ち万物生ぜず。万物生ぜざれば則ち人類も亦た滅ぶ。貧富睽けば則ち子孫生まれず、子孫生まれざれば則ち人類も亦た滅ぶ。貧富睽けば貨財生ぜず。貨財生ぜざれば則ち貧富倶に滅ぶ。是の故に富者は天分に止まり、余財を譲りて以て之を貧者に推し、貧者は夙夜勤動し余力を推して以て其の徳に報ゆ。貧富大小各々其の分に止まり、其の業を楽しみて其の生を安んず。夫れ是の如くなれば、則ち貧富相ひ和し、一邑は一家の如く然り。富者は長く富有を失はず、貧者は遂に離散亡滅するを免れ、戸足り人給し、孝弟忠信行はれ、政は刑を措くに至り、教化の能事終はるは何ぞや。天分を明らかにしおて推譲の道行はるるが故なり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年02月10日 03時22分01秒
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