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カテゴリ:遠州の報徳運動
雲仍遺範(うんじょういはん)岡田佐平治
古人云、財用の節を制し、入るを量りて以て出ると為す、 因て天保五年より、嘉永五年に至る二十年、毎歳所持の田圃、加地子(小作料)の入る所と、調度冗費の出す所を列ね、及び加地子、貸金利息を合せ、入る所と、冗費の出す所を並べ顕し、又田地土工の費を挙げ、毎條総て均平に商量し、以て一歳出入の用度を定め、家則を制するの基本となし、子孫に示し、其の度に過ぎざらしめんため、子細に條列する左の如し。 (毎年家徳延縮調 天保五年~嘉永六年 略 散田米手作共年々調 天保五年~嘉永六年 略 年々地普請入用調 天保五年~嘉永七年 略 甲寅年~癸年 一金七十三両一朱永四十一文二分 内米五十俵 窮民撫育の為上納 略) 一 祝儀不幸の儀も 御條目の趣きいよいよ堅く相守り手軽に取り行うべき事 嫁取り婿取り祝儀に付、役付のものにて事済し酒は冷酒の外三献に限り膳部一汁三 菜に致すべき事 但し 附酒の肴は三種限りの事 不幸の節すべて一汁一菜にて膳部差出し酒は堅く無用、布施物の儀は志次第施すべ き事 附年回供養右に准ずべき事 一 親類縁者祝儀並びに香料重き処にて金百疋限りの事 一 家作よくよく相考え全く不用の処は勝手次第取り払い申すべき事 但し台所はすべて莚敷く申すべき事 (報徳譲田調 略) 右封内(ほうない)の民遠州佐野郡倉真村、岡田佐平治の家則なり。佐平治の家系を聞くに、その先世三河国碧海郡佐々木村に住し、浄土真宗上宮寺の壇越なり。慶長のころ、上宮寺の法弟了源なる者掛川城下に来り、梵字を架構し了源寺と号す。その後数十年を経て、佐平治が家祖曾次兵衛という者この土に来り、家宅を倉真村に卜す。上宮寺の因みを以て了源寺の壇越となる。曾次兵衛専ら農事を営み、産業を修め、追年増殖し、元禄十五年所持の田畑高四十六石一斗九升八合六勺、翌十六年病て死す。その子孫また能く産業を営み、二十年を経、享保七年持高百五石七斗六升一合五勺、又三十九年宝暦十一年の高二百七十九石七升六合三勺、その後二十年を経、天明三年の持高は二百七石八斗六升一合に減損す。けだし子弟の為に地を分ち別家を建る故なり。又七十年嘉永六年、今の佐平治が持高二百三十八石四斗四升一合八勺一才、その余分地の家今五軒ありという。佐平治の家世々村長たり。又先邦君の時より百有余年、御勝手御用達を勤む。然れども盛衰時あり。その父の末年規則やや弛み、家徳随て衰う。佐平治同胞の兄勇吉深く家徳の衰替を愁い、改復の意常に切なり。不幸にして病に罹り文政九年二月享年二十五にして死す。佐平治幼名佐次郎という。昆弟姉妹五人有り。佐次郎は末弟なり。六歳の時より別家同村重兵衛が家に養われ、七歳佐野郡日坂宿鬼卵という者の家に寄り、八歳の時親族周知郡下山梨子村孫右衛門に養われ、九歳より十一歳に至り、駿州島田駅長長左衛門の家に居り、十二歳十三歳中泉松田屋忠兵衛に養われ、十四歳にして再び重兵衛に養わる。勇吉死するに及び佐次郎嗣子となる。時年僅かに十五、父やや老い、佐次郎又年少、これに因り御勝手御用達休免を願う。佐次郎年少といえどもまた深く家徳の衰微を愁い、兄勇吉の死を哀しみ、その志を継ぎ、ひたすら興復の意あり。然れども父なお存在し、法においてにわかに己の意を専らにするを得ず。空しく歳月を送る。倉真村下組の田畑年歴遠久にして阡陌(せんはく:農道)混乱廃替し、現段別古検地段別と符合せず、自然に久荒の地多し。これを治めただすの徒、事の多端を厭い、苟且(こうしょ:その場限り)にして年を過ぐ。天保四年佐次郎に課ふせ倶に改定せしむ。佐次郎弱齢なりといえども憤を発し、その徒を励まし、鎮守氏神に誓い、丹誠を凝らし、昼夜刻苦し、およそ六年にして始めて復古す。是より久荒の地漸くに墾闢し、今に於いて村民の堵を安んじ、力を農事に尽す。佐次郎の功もっとも多し。同十年里正となる。同年父病て死す。佐次郎家を嗣ぎ名を佐平治と改む。同十一年地方御用達役の命を受く。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年08月30日 06時35分12秒
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