第31話 エリーVSティムール その2.
「時間も終了です。流石ですねティムール。今の結果は60体です」 「そ、そんな・・・最強であるはずのあたしが・・・このあたしが・・・こんなへなちょこに負けるなんて……あ、ありえない‥‥ありえないわ……」 「これが格の違いというモノだ」 両膝を地面につけ、がっくりとうなだれるエリー。 そして、そんなエリーをまぁ、いつも通りの無表情といえばそうなんだが、冷ややかな目で見下ろしてるティムール。 ガックリとうなだれてたエリーだったが、すぐに立ち上がると自分が負けた事を認めたくないんだろうな。すんげぇ剣幕でティムールの方へと詰め寄ったよ。 「あんたグリモアの力を借りてたでしょ!?今のはなしよ!あたしのシマじゃそれノーカンだから!」 こいつwww必死か?w 「ふぅ・・・自分の実力不足を他のものに責任転嫁するか・・・まだまだ甘いな。それに、これは長期間放置されすぎたせいで魔力は抜け落ちていて、別に持ってても効果なぞ何もないぞ」 そう言ってティムールは手に持ってた具理モアをエリーの方へと差し出し、それを手に取ったエリーだったが。 手に持って何かを確認するかのようにジロジロとグリモアを眺めてたんだが、すぐに驚愕の表情を浮かべつつグリモアをティムールの手に戻したんだ。 「何よこれ・・・本当にグリモアから何も全く魔力を感じないじゃない……そんな、あたしは本当にあんたに実力で負けたっていうの?」 すんげぇ涙目になって今にも泣き出しそうな表情を浮かべてるエリー。 下唇をかみ締め、すげぇ悔しそうにしてるのが目に見てわかる。 「まぁ、いい薬になったろエリー?上には上が居るってわかっただけでもめっけもんだって」 「う、うぅ~・・・認めたくないけど、認めざるを得ないみたいね」 ついには感情を抑えきれなくなった彼女はポロポロと涙を流し始めた。 まぁ、人生で初めて他人とちゃんとした勝負をして負けたんだろうし、そりゃ悔しいわな。 涙をポロポロと零すエリーを俺は優しく抱きしめてやった。 そんなエリーを見てちょっと罪悪感を覚えたんだろう、デビはばつが悪そうな表情を浮かべたよ。 「ま、まぁ・・・テリーナも結構良い線いってると思うぜ」 「えぇ、鍛錬次第ではティムールを越える魔導師になれると思います」 「慰めの言葉なんていらないわよ・・・」 そういい捨てたエリーの目の前に白く綺麗な小さい手が差し出された。 顔をあげるとそこにはちょっと、本当にちょっとだけ表情を緩くしたティムールが手を差し出してたんだ。 「な、何よ・・・」 「確かにテリーナには僕もうらやむ程の魔力をその内に宿している。もしかすると潜在能力だけ見ればオルロフ以上かもしれない。だが、今はまだその力をキチンとコントロールして使えてないだけだ。ちゃんと指導者の下指導を受ければすぐに僕を越える魔導師になれるだろ」 目に浮かぶ涙をゴシゴシとぬぐってから乱暴にティムールの手を取ったエリー。 「ふ、ふん・・・今回はあたしの負けにしといてやるわよ。だけどね?次は絶対に負けないんだから!」 「テリーナが成長し、一端の魔導師となったらまた勝負しよう。その時は僕も全力でやらせてもらう」 2人とも良い顔してんな。うん、エリーはもっと落ち込んで自暴自棄になっちまうかと思ったけど、よかった・・・ ティムールの事を良きライバルだって認識してくれたみたいだ。 まぁ、歳もそんな離れてなさそうだしな、この2人はきっと仲良くなれるだろう。 その後、暫く雑談をしながら休憩してた俺達だったが、デビが立ち上がるとそれと同じようにアポロン・ティムールも立ち上がった。 「さって、それじゃ俺達はそろそろいくよ」 「おぅ、頑張れよ!ひ・か・り・の・勇者様♪」 「おええ・・・男のお前にそんな風に呼ばれてもぜんっぜん、嬉しくもなんともないわ」 「んだよ、そんな事言うなって」 「それじゃあね、ティムール」 「あぁ、また会おうテリーナ」 「それでは失礼します。ベリル殿・テリーナ殿」 俺達は手を振ってデビ達と別れようと思ったんだがな? 「あぁ、忘れるとこだったわ」 「んあ?」 「いやぁ、グリモアを渡すことは出来ないけど、代わりに良い情報を教えてやるよ」 「良い情報?何だ?」 「いや、ここから南東に行った場所にミカルの泉って魔力に満ち溢れた泉があるんだよ。そこに行ってみるといい、きっとテリーナにとって良い場所だと思うから」 そう言ってデビは地図のその場所を指差した。 「へぇ、ミカルの泉か。あんがとよ」 「それじゃテリーナ。精進しろよ」 「う、うるさいわね!わかってるわよ!」 手を振るデビに対してイー!って表情を向けるエリー。 そして、そんなエリーを見てデビは苦笑を浮かべながら踵を返し山を下りていった。 「さて、こっからどうする?」 「そうね・・・さっきデビスが言ってたミカルの泉に寄りましょ」 「おっけ、ならさっさとこんな何も無い山なんて下りるか」 気を新たに俺達も山を下り出そうとしたんだが。 「・・・ティムール……絶対にあたしはあんたを越えてやるわよ‥‥それまで首を洗って待ってなさい」 何やら立ち止まってボソボソと呟いてるんだが? 「おいエリー、どうした?」 「なんでもないわ、ほら。さっさと行くわよ」 俺の手を引いてズンズンと先に進むエリー。その表情はすげぇ晴れやかなものに見える。 こうして、俺達は魔法の山を後にして、デビに言われたミカルの泉って場所目指して進み出した。 第31話 エリーVSティムール その2.終わり 第32話 ・・・あれ?迷った? その1.へ続く