第39話 お ま た せ その2.
急に目の前で多数の仲魔達が一瞬で切り伏せられる状況に慌てた表情を浮かべた青年。 「くっ、俺様の邪魔をする奴がまだいたとはな。誰だ!!」 さっき、風斬り音が聞こえてきた方向に俺と金髪の青年は体ごと向け、それを見て慌ててエリーも俺達と同じ方向を向いた。 俺達の目の前に立っていたのは、日に照らされてキラキラと光り輝く美しい銀色のポニーテール。 前髪は右目を隠すようにたれさげさせ、自分の背丈と同じくらいの巨大な妖しく光り輝く剣を手にした女性が立ってたんだ。 そして、その彼女は俺の方を見るとニコッと太陽のように明るい笑みを向けてきてくれたんだ。 「お待たせ、よくこれだけの大群を相手に戦って耐えてくれてたね。うちが来たからにはもう大丈夫だよ♪」 「ジ、ジルさん!?」 うん、俺達の前に現れたのはさっきバーでもう二度と剣は握らない、そう言っていた。元ヒアシンス城近衛隊長で世界最強の剣士と言われていたジルコニア=ブロードその人だったんだ。 「何よ、今更こんな場所に来てさ。もう剣を持って戦わないんじゃなかったの?でも、本当来てくれてありがと。助かったわ」 「そうだよ、確かもう2度と剣を持って戦わないとか言ってたよな?」 俺とエリーの言葉に苦笑を浮かべつつ答えた。 「あ、あはは・・・まぁ、そうなんだけどねぇ。ちょっとさっきバーで思うところがあってさぁ。それでまた剣を持って魔族と戦おうかな?ってそう思ったんだよね」 「そっか、まぁ何があったかは知らねぇけどよ、ジルさんが来てくれたってなれば百人力だ」 「そうね、あんたよりかは絶対に役に立ってくれそうね」 「あ゛?何だって?おい、今なんていったエリー」 「何?聞こえなかったの?ならもう1回言ってやるわよ。何の役に立たないクソベリル」 【上等じゃねぇかこのクソガキ!てめぇ、後でぜってぇ泣かす、10回くらい泣かしてやる】 うん、こんな事口が裂けてもいえない、こんなこと今声を大にして言ったら間違いなく魔族との戦いなんて無視してエリー様が俺を全力でぶち殺しにくるわ。 俺達のやり取りを無視してジルさんは金髪の青年の方へ振り返ると、何故か手をブンブンと全力で振って久しぶりに会う旧友に挨拶するかのように声をかけたんだよ。 「やっほ~♪ネロちゃん、久しぶりだね」 ジルさんの挨拶に金髪の青年、ネロは不機嫌そうな表情を浮かべた。 「ふん、貴様にそのような呼称で呼ばれるほど俺様と貴様は仲良くないだろう。しかし、銀狼のジル、まさか貴様の方からこっちに出向いてくれるとはな。探す手間が省けたというものだ」 そう言いながらネロは、ククク……と何故か嬉しそうに微笑を浮かべた。 「銀狼のジル、貴様だけはこの俺様直々に倒してくれる。と、言いたいところだが?こちらにはまだこれだけの戦力が残っている。それにそこのガキ2人は既に疲れきっていて戦力にも入らんだろう」 「ふふ、それはどうかなぁ~?これくらいの数だったらうち1人でも楽勝なんじゃないかな?」 「ふん、相変わらず余裕ぶりやがって、むかつく奴だ。だが、その余裕がどこまで続くか見ものだな。今日が銀狼のジル、貴様の命日だ!」 そうネロがいきまいてるところで彼の後ろからヌッと巨大な何かが前に出て来た。 「ネロ、ここは俺に任せてくれないか」 そう言ったのは漆黒の巨大な馬にまたがった屈強そうな戦士だった。 「ふむ・・・やる気だな。やれるか?キマリスよ」 「おぅ、任せてくれ!別に俺が倒してしまってもかまわんのだろ?」 「期待しているぞ、キマリス」 「くくく、銀狼のジルよ。貴様の噂は色々と聞いているぞ。貴様とは是非一度手合わせをしたいと思っていたのだ」 そう言ったキマリスをニコニコと見てるジルさん。 その表情からはすげぇ余裕を感じるが・・・ まぁ、いくらブランクあるって言ってもジルさんならキマリス相手にも十分闘えると思うが・・・ 「いいよ、ブランクもあるしさ、 ちょっと肩慣らしに相手してあげるよ。さ、おいでキマリス」 ジルさんは右手をクイクイと軽く曲げ挑発するかのようにキマリスと呼んだ漆黒の巨大な馬にまたがった戦士を手招きし、そしてそれに応えるようにキマリスは勢いよくジルさんの方へと真っ直ぐ向かってきたのだった。 第39話 お ま た せ その2.終わり 第40話 楽しくなりそうだ その1.へ続く