最終話 そして伝説へ その2.
ラダトームのお城に戻り謁見の間に入ると、そこには沢山のラッパ隊の人たちの姿、そして本当に嬉しそうににこやかな笑みを浮かべる王様の姿が見えた。 「勇者エリス、そして仲間の皆よ。無事に帰ってきてくれて嬉しく思うぞ。よくぞ大魔王ゾーマを倒し、この世界に光を取り戻してくれた。この世界に光が戻ったのも、全てそなた等の働きのおかげである。心から礼を言うぞ」 本当に嬉しそうだなぁ、まぁ、そうだよねぇ。今までずっと苦しめられてきた魔物達による脅威が消えたんだからさ。 「大魔王が滅びたためなのか、そなた等やオルテガ。数多くの勇者がいた別の世界に通じていた穴は閉じてしまったようじゃが、ここアレフガルドも1つの世界として歩み始めるであろう。全てはそなた等のおかげ!エリスよ!そなたこそまことの勇者じゃ!エリス、そなたにこの国に伝わる勇者の称号であるロトの名を授ける」 「ありがとうございます、王様」 「エリス、いや。勇者ロトよ。そなたの働きはロトの伝説として後世に長く語り継がれるであろう。本当にご苦労であった、どれだけ感謝の言葉を述べても足りぬが、今一度言わせて貰おう。勇者ロトよ、そして仲間の皆よ。この世界、アレフガルドに再び光を取り戻してくれて本当にありがとう」 王様がそこまで言い終わると大臣がラッパ隊の人たちに何か合図を送り、それと同時にラッパ隊の人たちは一斉に喜びに満ちた弾む音色を謁見の間中に響かせた。 「皆の者、本当にご苦労であった。さぞ疲れたであろう。今日はそなた等の為に宴を用意させてもらいたいと思っている。もちろん参加してくれるな?」 「うん、もちろんだよ。断る理由もないしね」 「んだな、お言葉に甘えさせてもらうとすっかな」 「はい、ゾーマは倒れもう急いでどこかに行くこともないですからね。今日くらいはゆっくりとお言葉に甘えさせていただこうと思います」 「それでは、早速城のシェフたちに腕によりをかけた料理の準備と倉庫にある酒を沢山用意させる。少し待っていてくれ」 そして、お城だけでなくラダトーム城下町全体を巻き込んだ宴が開始された。 町の人たち、お城の兵士達。全ての人がゾーマが倒れ、世界が平和になったことを心の底から嬉しそうに喜んでいた。 沢山の豪勢な料理、飲みきれないほどのお酒。それらに皆舌鼓をうち、騒いでいたが、そこで時折1人になると難しい表情を浮かべ何かを思案するエリスの姿が見えたが、皆そのことに気付く術もなく、宴を楽しんでいる。 大魔王ゾーマを倒し、平和になったことを喜び祝うその宴は夜通し行われ、エリス達は城のVIPルームで夜を過ごすこととなった。 こうして、勇者エリスはロトの称号をうけ、ここアレフガルドを救った英雄となったのだが・・・・・・・・ ~翌朝~ 「ふわぁ・・・」 カリストが目を覚ますと、血相を変えたアルナとミラの姿が目に入ってきた。 「ど、どうしたんだよ・・・」 「エリスが、エリスが!」 「ん?エリスがどうした?」 「エリスの姿がどこにも見当たらないんです!」 「は?マジでか?」 「はい、武具は全ておいてあるのでどこか散歩にでもいったのかと思っていたのですが・・・」 「うん、全然戻ってこないし、心配になって城内を探してもらってたんだけどさ。どこにも姿が見当たらないんだよ」 「町の方にいる可能性はねぇのか?」 「町ももちろん探してもらいましたよ?」 「でも、いなかった、と」 「うん・・・どこいっちゃったんだろ‥‥」 酷く落ち込み心配そうな様子を見せるミラとアルナだったが、そこでカリストは何か思い浮かんだんだろうか。2人に真剣な眼差しを向け口を開いた。 「なぁ、もしかしてエリスは元の世界に戻るための手がかりを探しに行ったんじゃねぇのか?」 「まさか・・・そんなこと!?」 「でも、考えられないことではないですね。エリスは唯一もとの世界に返るべき家のある人ですし」 「あぁ・・・探しても見つからないってことは、もう。ここを出てるってことだろ」 「装備も持たずに?」 「ゾーマを倒し平和になった今、武具は必要ないだろう」 「あ、そっか」 はぁ・・・・ミラは深くため息を1つはき。しょうがない子ですね・・・そう口にした。 「全く、もとの世界に戻るための方法を探すなら探すでいいですから、一言くらい言ってから出て行ってほしかったですね。まぁでも、彼女なら大丈夫でしょう」 「んだな、それに、こっからはアイツの人生だ。好きなようにやらせてやりゃいいさ」 「うんうん、僕達がとやかく言ってこの地にとどまらせるわけにはいかないよね」 「とりあえず王様達にはどうやって報告しようか。まぁ、まんまを言う以外ないとは思うけどな」 「そうですね。それでは謁見の間へと行きましょうか」 謁見の間へと移動したカリストたちは早速ことの顛末(まぁ、彼らの想像ではあるが)を王様へと話をした。 「そうか・・・そうであったか。帰るべき場所があるのであれば、そこへ行くのが彼女のためであろうな・・・こちらからは無理に捜索隊を出したりすることはしないでおくとする」 「あぁ、助かる」 「それで、1つだけお願いがあるのだがいいか?」 「何ですか?」 「勇者ロトの装備していた武具を我がラダトーム城で預からせてはくれないだろうか?」 「もちろん、いいよ」 皆はエリスが装備していた武具を王様へと渡した。 彼女が残していった武器防具はロトの剣、ロトの鎧として、聖なる守りはロトの印として後世へ引き継がれたのであった。 そして、勇者ロトの伝説が始まった・・・・・・・・ 最終話 そして伝説へ 終わり。 To Be DQ1・2へ