所が、同僚の侍たちになると、
ダウン モンクレール進んで、彼を飜弄(ほんろう)しようとした。年かさの同僚が、彼れの振はない風来を材料にして、古い洒落(しやれ)を聞かせようとする如く、年下の同僚も、亦それを機会にして、所謂(いはゆる)興言利口(きようげんりこう)の練習をしようとしたからである。彼等は、この五位の面前で、その鼻と口髭と、烏帽子と水干とを、品隲(ひんしつ)して飽きる事を知らなかつた。そればかりではない。彼が五六年前に別れたうけ唇(くち)の女房と、その女房と関係があつたと云ふ酒のみの法師とも、屡(しばしば)彼等の話題になつた。
「己(おれ)は葛城山(かつらぎやま)の目一(めひと)つの神だ、兄きたちがお前に礼をしたそうだから、己も嗅げや飛べに劣らないような、立派な犬をくれてやろう。」と言ったと思うと、もう口笛の声が森中にひびき渡って、一匹の斑犬(ぶちいぬ)が牙(きば)をむき出しながら、駈けて来ました。
「これは噛めという犬だ。この犬を相手にしたが最後、どんな恐しい鬼神(おにがみ)でも、きっと一噛(ひとか)みに噛み殺されてしまう。ただ、己(おれ)たちのやった犬は、どんな遠いところにいても、お前が笛を吹きさえすれば、きっとそこへ帰って来るが、笛がなければ来ないから、それを忘れずにいるが好い。」
そう言いながら目一つの神は、
ダウン モンクレールまた森の木の葉をふるわせて、風のように舞い上ってしまいました。