テーマ:楽器について♪(3593)
カテゴリ:風変わりなピアノ
一見タイプライターかマージャン牌のように見えるが、実は立派なピアノの鍵盤である。これは1882年ハンガリーの演奏家であり発明家でもあるパウル・フォン・ヤンコ (Paul von Jancó) の考案したもので、その名にちなんでヤンコ鍵盤と呼ばれている。ベルリン大学で数理音響学を専攻していた彼は、科学的な視点でより効率的な鍵盤の開発を手がけた。 現在普通使われている鍵盤の形は中世クラヴィコードにおいて完成したものとされている。その発想は「ディアトニック音列」と「ペンタトニック音列」を組み合わせるというもので、当時は人体工学的視点などほとんど考慮されていなかったといってよい。 19世紀末、非常に効率的なクロマチック・ボタンキーを採用したアコーディオンが成功をおさめたことから、それに準じてピアノの鍵盤にもさまざまな工夫が試みられた。このヤンコ鍵盤はその中の一つである。 この鍵盤は1列に全音階を並べ、それが6列並んでいる。ある1列とそのすぐ上の1列とは半音ずらしてあり、その2列を組み合わせて半音階が弾けるようになっている。(例えば下列がC D E F♯ G♯ A♯とするとその上はC♯ D♯ F G A B) この鍵盤は弾くキーの組み合わせを色々選択して、それによって人間の手に無理のない運指が可能となるばかりか、アマチュアでも相当な難曲を弾けるようになるという。例えば次のようなことが可能であったと伝えられている。 ・非常に広い音域のアルペジオも手首をひとなですることによって容易に演奏できる。 1886年、ウィーンで初めてヤンコ鍵盤ピアノを使ったコンサートが行われたが、この鍵盤は当時の演奏家、音楽教師、楽譜出版社の猛反対に会い、普及するには至らなかったという。 このページの楽器はベルリン・フィルハーモニー博物館にあったものだが、そこで指弾することは許可されていなかった。 しかしOWSの倉庫にもヤンコ鍵盤のアップライトピアノがあり、僕には幾度か触れる機会があった。 中を開けてみると鍵盤から奥、つまりアクションや弦などは全く普通のピアノである。またヤンコ鍵盤は一般のピアノにも取り付けが可能であるらしい。 そして試しに弾いてみた。その結果、僕のようなアマチュアでもプロのような難曲が弾ける・・・わけなかった。それどころか、ごくかんたんな曲(チューリップの歌、かえるの歌)でさえ相当苦労した。 参考図書:「楽器の事典 ピアノ」東京音楽社 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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