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合衆国における福祉削減の原因と結果 エレン・リース
合州国の福祉国家は、他の豊かな民主主義国家における福祉国家に比べると、低所得家族への援助においても、貧困削減の効率においても、ずっと低位であった。 にもかかわらず、1980年代90年代には、それが寛容すぎるという凄まじい攻撃に晒された。 大量の反福祉プロパガンダが、本や新聞記事、政策声明、テレビ、あらゆるメディアを通じて、ばら撒かれた。 その結果、80年代には、低所得家族の福祉プログラム(AFDC)へのアクセスを制限するような幾つかの「福祉改革」諸立法が議会を通過した。96年には、個人責任・就労機会調停法(PRWORA)が通過した。 PRWORAは、連邦の福祉に対する貧困家庭の諸権利を廃止する、福祉支出を凍結する、福祉受給者に受給期間の制限を課す、児童手当の給付を拒み貧しい母親たちを就労へと動員するなどの、就労要求を更に厳しくした。 これは、政治的に強力な、階級を越えた同盟―保守主義者、低賃金で雇用する雇用主、白人票を巡って競争する政治家、そして保守的な社会運動との間の同盟―によって積極的にもたらされたものなのである。 この階級を越えた同盟は、広く支持されている価値や信念や心情に、感情的に強力に訴えかける言説を通じて、PRWORAへの大衆の支持を獲得していった。 しかし、その擁護者の主張とは対照的に、PRWORAは低所得家族の自活を促すこともなければ、貧困を削減することもなかった。 それはむしろ、低所得家族が最も必要とする所得と社会サービスへのアクセスが断たれてしまうという、非常に破壊的な結果をもたらした。 政治家、雇用主、保守主義的諸運動は、制限的な福祉政策の促進において、団結していたが、彼らはそれぞれ別々の理由によってそうしていた。 ビジネス界は、労働力コストと税金の最小化を意図し、ネオリベラルなアジェンダの一部として福祉「改革」を支持した。 政治家たちは企業からの選挙資金と保守的な白人票を競うための手段と見なした。 保守的キリスト教信者たちは、キリスト教会と伝統的な「家族の価値」を促進するためのアジェンダの一部として福祉「改革」を奨励した。 反移民グループは、末来の移民を減らすための手段と見なした。 この中で最も強力な集団は、低賃金雇用をする雇用主たちと保守主義的企業、裕福な家庭であったろう。 彼らの利害は、企業がそのスポンサーとなっているシンクタンクによって代表されていた。 70年代、企業と豊かな家庭は、非常に保守的なシンクタンクへの寄付金を増やしていた。 彼らシンクタンクは、ロビイングして、政治家およびメディアとの関係を深め、一般大衆に彼らの考えを普及することを通じて、保守的な政策構想を促進した。 企業は、よく統合されたシンクタンクのネットワークを発展させるために、これに融資した。 企業後援方シンクタンクと商工会議所は皆、受給期間の制限、厳しい就労要求、福祉権の削減を支持した。 福祉の削減は、企業の社会的支出を減らし法人税の負担を最小化する、企業優先型アジェンダの一部であった。 福祉サービスの民営化を求めて、企業はそれを得たが、 より重要なのは、企業が安い労働力供給を維持するために福祉削減を支持していた、という点である。 1996年以降、就労のための福祉プログラムの多くは、長期間の職業訓練や教育よりも、迅速な就労を重視する「ワークファースト」モデルに沿って行われるようになった。 これらの制限的な福祉政策は、いつでも低賃金で臨時的な労働力供給が準備されていて欲しい、という雇用主たちの要求を満たすことに貢献した。 とりわけ、ファストフードのフランチャイズや工場、臨時派遣業、老人ホームの低賃金の雇用において普及していた。 また、労働組合に加入していない地方の下級公務員の労働力コストとしても用いられてきた。 福祉「改革」は、多くの労働者、なかでも十分な教育を受けていない労働者が、労働市場における諸条件の悪化(実質賃金の低下と臨時雇用の増加など)に直面しているまさにそのときに、労働倫理の価値を再確認することによって、低賃金労働を求める雇用主たちの利益を保護した。 福祉に関する受給期間やその他の制限は、労働市場の底辺における競争を激化させ、賃金を低下させた。 豊かな民主主義国家間で比較調査すると、福祉削減に拍車をかけたのは、貿易の開放性というよりも、海外における直接投資と金融のグローバリゼイションである。 これらの影響は、経済より、より多く政治に由来する。 資本のモビリティのおかげで、雇用主と投資家は負の投資あるいはそれをちらつかせることで「ビジネス・フレンドリー」な政策を採用するよう、政策担当者に圧力をかけ易くなった。 この圧力は、大企業の権力に反対できる第三の政党が弱いと、よりかけやすくなる。 保守的政治家とシンクタンクは、貧困者を、道徳的に欠陥があり、家父長的な厳しい規則、制裁を必要とする者として描写する、ステレオタイプな道徳モデルで描いた。 彼らは、就労倫理や「家族の義務」を重視した。 このような反福祉プロパガンダは、貧困の原因を、貧しい人たち自身の道徳的価値観の欠如や、個人の行動様式に求め、またそうすることで、人々の目を、生存賃金を保証する仕事が不足していることや、人種差別、利用可能な育児ケアが不足していることなど、貧困の構造的要因から背けさせた。 反移民組織は、平均的な移民が、福祉を利用するよりも多く税金を払っているにもかかわらず、過度に福祉に依存し、贅沢な隠居生活を送るためにやってきた者として、移民を描いた。 合法移民の多くは投票しなかったし、政治的に弱い立場にあったため、彼らが福祉支出を最小化しようと策動した時、合法移民がやすやすとその福祉削減のターゲットとされた。 要するに、福祉改革は、ビジネスマン、キリスト教組織、白人の利益を優先する諸組織、との階級を越えたイデオロギー的保守の連合によって積極的に推進された。 福祉を攻撃する者は、スティグマを付与された様々な貧困者集団を福祉削減のターゲットにし、貧困の原因として、貧困者自身の道徳性の欠如や悪い行動様式をあげ、福祉を貧困者の規律に失敗した制度として責めた。 そうすることによって、彼らは、福祉削減への一般大衆の支持を獲得したのであった。 「福祉システムは善と言うより、悪である。それは、家族の崩壊を促し、労働倫理を蝕むから。」とされて、福祉が削減された結果、何とか就労することのできた受給者たちの多くが、非常に低賃金で働いており、なお貧困のままである。 「家族の価値」の名のもとに擁護された福祉削減は、多くの貧しい家庭を崩壊させた。 合衆国の労働者家庭の多くが、適切な仕事を探すこと、健康保険を維持すること、育児サービスを見つけること、家賃を払うこと、など、福祉を受給している母子世帯の母親と同様の問題に直面している。 にもかかわらず、福祉削減政策が労働者家庭一般の支持を得たのは、反福祉プロパガンダと合衆国の福祉削減の、福祉受給層ターゲット化が、これら二つの集団をうまく分割したからである。 福祉削減の力学を反転させるには、福祉受給者とその他の労働者家庭両方の必要に言及し、彼らを分断するようなステレオタイプに対抗し、彼らに共通の基盤を発見することを助ける運動が必要である。 この記事のトラックバックURL:
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