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2015.06.29
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カテゴリ:シナリオ
ヒノキオ ハガキ.jpg

2008年5月13日 ヒノキオ山野草自然園 ハガキ版.jpg


中央自動車道の伊那ICを下りて、伊那スキーリゾートに向かい、ゲレンデが正面に見
えた所で左側へ折れ、少し登る。そこが今日の目的地、個人運営の「ヒノキオ山野草
自然園」だ。約900mの山中にある斜面を整備したものだ。広さは400坪程度で、ヒト
の肩幅ほどの遊歩道が巡らされており、軽い散歩気分で巡ることができる。
園主は「飯島さん、85歳」。1986年頃から所有する山林を整備し、種まきや株分けを
地道に続けて現在に至っている。今では木立に囲まれた斜面に清らかな水が湧き出
て、春先から秋にかけて180種ほどの山野草が次々と花開くという。
ここは知る人ぞ知る山野草愛好家のオアシスだ。
8年ぶりにこの「ヒノキオ」を訪れた老夫婦。今回は朝早く、開園を待っての訪問だった
ので、園主のお話をゆっくりと伺うことができた。

夫 : おはようございます。開園前から待機して待っていました。入園してもいいですか?

園主: もちろん、どうぞ。今、鍵を外します。

妻 : 入口にある古い木の根っこに寄せ植えされている植物を拝見しながら、開園を待
    っていましたよ。もう咲き終わって実になっている植物もありますが、いかにも自
    然な感じで素敵ですね。

園主: ああ、あれはセリバオウレンじゃ。ここに並べてある木の根っこは全部、私が自分
    で山から切り出したものだ。木の根なら何でもいいのではなく、何をそこに植える
    かを考えながら探すんだよ。
    気に入ったかい?嬉しいね。さあ、どうぞお入りなさい。県内の自生種を中心に
    育てていて、園芸種は一切ないのがここの特徴じゃ。

夫 : お一人で整備されたと聞いていますが、大変だったでしょうね。

園主: 入口の小川に架かる橋、あの小屋、そして園内の整備など全て一人でやった。

妻 : エッ!あの小屋もご自分で建てられたのですか?

園主: 実は会社勤めをしていた時からコツコツと始めていたんだ。あの小屋は大工経
    験もないのに、誰の手も借りずに建てたものだよ。皆にビックリされている。

妻 : そりゃあ、誰でも驚きますよ。すごいな。

夫 : 木の伐採、土づくり、水路の確保など、さぞ大変だったことでしょう。独力だなん
     て、にわかには信じられない出来栄えですよ。前回歩いた時、とても暖かい手
     作りのぬくもりを感じる山野草園だなと感じたのですが、いまではもう自然その
     ものですね。

園主: せっかくだから小屋の周りの花たちについて少しだけ解説しよう。本来なら、私
     のガイド料は高いんだぞ。ハッハッハ。

時折、冗談を交えながら、山荘の周辺に咲く山野草の一つひとつについて、名前と名前
    の由来、色や形の特徴を丁寧に解説してくださった。

夫 : 時間はたっぷりあるので、これから、園内の上の方を二人でゆっくり歩いてきます。

園主: ああ、それがいい。良い写真を撮るには、姿の良い花を見つけることが大事だよ。
    そうだ、花は終わりかけているがオサバグサがたくさんあるから、見落とさないで。
    これほど群生している場所は、ほとんどないんだからね。貴重だよ。

妻 : ハ~イ。わかりました。ネエ、ここから見ると「クリンソウ」の群落が一番目立つわ
    ね。前回は5月中旬で、シラネアオイやクロユリに出会えたけど、今は5月末なの
    で、また違う花が見られそうよ。ほら、シライトソウやサルメンエビネがあるわ。

二人はゆっくりと斜面につくられた歩道を登り、本格的な園内巡りを始めました。

夫 : 水芭蕉の葉っぱがこんなに大きくなっているよ。

妻 : 色とりどりのクリンソウも間近で見ると本当にきれいね。あら、私の大好きなチョ
    ウチョが飛んできたわ。ほらほら、アサギマダラよ。ここで出会えるとは思わなか
    った。嬉しいな。アラ、もう林の中に行っちゃった。残念。

夫 : クロアゲハやイトトンボなども飛んでいるね。でも、前回と比べると咲いている花
    の種類が少ないように感じたけど、来た時期が違うから仕方ないか。

妻 : この「ベニバナヤマシャクヤク」は蕾が開きかけているわ。もう直ぐ開花しそうね。

夫 : 入口に日本原産の「カザグルマ」が咲いていたから、帰りにもう一度見ておこうよ。

妻 : ついついシャッターを押しすぎちゃうな~。あとで整理が大変。

山野草に埋め尽くされた園内を周遊して、坂を下ったところで再び、園主と合流。

夫 : 堪能してきましたよ。ところで、遊歩道のポイントの所に大岩がありますが、もと
    もとあの場所にあったのですか?

園主 : 俺が一人で山の上から下ろしてきて据えたんだよ。特にあの大岩はワイヤー
    で支えながらで、かなり苦労したな。

夫 : こんなに苦労して整備した場所を、どうして無料で開放しているのですか?

園主: これと同じ山の斜面を利用した有料の植物園に行ったことがあるんだが、その
    時、お客さんの声が耳に入ってきたんだ。
    「こんなに急な坂道で転んだらどうするのよ。有料なんだから当然保険に入って
    いるはずよね。」とか「有料の施設なのに園内にトイレを作らないなんて信じられ
    ないわ。」ってね。それを聞いて、ここは無料にすることに決めたよ。
    ご覧になる際は自己責任でどうぞ、ってことだよ。

妻 : 今日は十分に山野草を満喫させていただきました。ありがとうございました。

園主: 何を言っているんだ。この場所の良さを本当に満喫するには年に4回は来ない
    とダメだよ。また、近いうちに、いらっしゃい。

妻 : あそこに木製の人形があるけど、ピノキオではないのですか?

園主: よく聞かれるよ。檜の男で「ヒノキオ」さ。ピノキオじゃないぞ。あれも俺が作った。

夫 : これだけの施設を一人で作ったのだから、飯島さんは相当な頑張り屋さんですね。

園主: ワシの兄弟はみんな優秀だが、ワシだけが成績が悪く「物好き、変人、頑固者」
    と言われ続けているよ。ハッハッハ。じゃあな。

とんでもない。帰宅して調べたら、経歴も素晴らしく、信州伊那野草会の会長を22年に
渡って努めたお方でした。
今後、私たちは飯島さんのことを「南信州の花仙人」と呼ぶことにしました。





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最終更新日  2015.06.29 08:07:59
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