「(これはカメムシの匂いだ)と嫌う人」、「私は(パクチニスト)というほど大好きな人」、こんな両極端な評価を持つ香辛野菜がパクチーですね。パクチー以外に中国名の香菜(シャンツァイ)の名でも流通しています。パクチーは海外ではほとんど薬味として使われますが、日本では薬味だけでなく、パクチーをメインにした料理もあります。最近はパクチニストの急増でパクチー専門店も登場しているようです。更に、料理の域を飛び出して、スナック菓子やドリンク、お酒まで販売されています。こうした背景から、全国でパクチーの露地栽培やハウス栽培は盛んで、今では店頭に通年で出回るようになっています。茨城県はこのパクチーの生産量が全国で第3位です。パクチーは葉・茎・根・種のすべてが食用に利用できる万能ハーブですから、世界中でもさまざまな料理に使われています。日本では葉の部分をパクチーといいますが、使う部位や日本に入ってきたルートの違いで、パクチー以外の呼び方でも流通しています。このパクチーは香辛野菜としてだけではなく、栄養価の面からもかなりの優れものなのです。今回は右肩上がりで消費量が上昇中の人気香辛野菜「パクチー」を紹介します。
<パクチーとは>
パクチーはセリ科の一年草です。原産地は地中海沿岸や中東。古代エジプトでは約3500年前に薬草として使用された記録もあるそうで、清涼感をたたえた葉は、生春巻きやトムヤムクンなど東南アジアのエスニック料理に欠かせない存在です。日本には中国から10世紀ごろに渡来したとされていますが、香りが強いために当時はあまり好まれませんでした。しかし、最近の食の多様化や、テレビ・雑誌などで盛んに魅力的な効能などが取り上げられたことで、首都圏を中心にパクチー・ブームが起こっています。
<パクチーの生産量ランキング(2020年)>
1位福岡県153t(26.8%)久留米市、大刀洗町、2位千葉県133t(23.3%)八街市、旭市、山武市,そして、3位が茨城県で95t(16.6%)行方市、鉾田市、潮来市。上位3県で約67%を生産しています。生産地は北の北海道から南の沖縄までと全国に広がっています。
<パクチーの豆知識>
1. パクチーの呼び方の違い
日本で呼ばれている「パクチー」はタイ語ですが、中国名では「香菜(シャンツァイ)」、英語名では「コリアンダー」、和名もありまして、正式には「コエンドロ」ですが、カメ虫の匂いに似ていることから「カメムシソウ」とも呼ばれます。この名前の違いは入ってきたルートの違い、そして部位の違いに起因しています。例えば、日本では香辛料として種子や葉を乾燥させてパウダー状にしたものを「コリアンダー」、葉を生のまま野菜として使用する場合に「パクチー」、中華料理では「香菜」と呼ぶことが多いです。その他に、スペイン語では「シラントロ」、ポルトガル語では「コエンドロ」(これが和名)、ベトナム語では「ザウムイ」と呼ばれます。それぞれの国で古くから根付いている野菜なのです。
2.パクチーの栄養価と効果
パクチーに含まれている栄養価には、以下のような効果があります。
〇美肌効果 〇抗酸化力(老化防止) 〇体内の毒素のデトックス効果
〇高血圧などの予防と改善 〇免疫力の向上(感染症予防効果) 〇加齢臭
や口臭の改善
パクチーに含まれているβカロチンの抗酸化力は、なんと大豆の10倍にもな
るそうです。また、デトックス効果も見逃せません。普通に暮らしていると
知らず知らずのうちに溜まってきてしまう体内の毒素、排気ガスや水銀、鉛
などを、体外に押し出してくれるのです。そうする事で、慢性的なだるさ、
アレルギー症状などが改善されるなどの効果も期待できます。独特の匂いが
気になるパクチーに加齢臭や口臭を改善する力があるなんて、これも意外で
すが、とても嬉しい効果ですね。
3.パクチーの栄養は食べ過ぎると台無しに
パクチーにはデトックス効果や整腸作用がありますから、適量食べるのであ
ればいいんですけど…。食べ過ぎると腸の働きが活発になり過ぎて、腹痛や
下痢、吐き気の原因になることがあるのです。また、パクチーに含まれてい
る女性ホルモンを促す成分のゲラニオールを摂り過ぎると、頭痛になること
もあるのですね。とても稀ですが、セリ科のアレルギーがある人は、パクチ
ーを食べるとアレルギーを起こすこともあります。美味しいし、栄養がある
からと言って、むやみにたくさん食べるのは危険なのです。
4.パクチーが苦手な人は、種子を香辛料として使ってみよう!
パクチーと言えば、葉を使うイメージで、特に中華料理、タイ料理、インド
料理などではおなじみですね。ところが、西洋料理では、種子の部分を乾燥
スパイスとして肉料理に使用し、粉末にしたものをパンや菓子類に使用します。種子を香辛料として使いますが、葉はあまり使用されないそうです。そ
ういえば、英語名の「コリアンダー」は粉末のパウダーですね。
5.パクチーの花
パクチーの花は、せり科らしいレースのようなかわいい花で、花の時期にな
ると、葉の形状が変わります。パクチーの葉を購入した際にこのようなレー
ス状の葉が混じっていたら、「花の季節なんだな」と和んで下さい。
6.選び方
葉の色が鮮やかでみずみずしく、緑色が鮮やかなもの、茎があまり太くない
ものを選びます。葉が黄色っぽくなってきたら、鮮度が落ちた証拠です。根
付きのままのものがあればその方が日持ちしやすいのでおススメです。茎が
太すぎるものは固くて生で食べにくいので気をつけましょう。独特の香りを
引き立たせたい時は、葉や茎をちぎると、より鮮烈な香りが漂います。
7.保存
パクチーは乾燥すると風味が落ちるので、フレッシュな状態で使用します。
乾燥しないよう濡れた新聞紙などに包みビニールやポリの袋に入れて冷蔵庫
の野菜室に入れます。パクチーも寝かせておくと、上に伸びようとする働き
で茎が曲がり、栄養がなくなっていきますので、出来るだけ立てて保存しま
しょう。根付きのものは水を入れたグラスなどに差しておけば室内で活かし
ておくことができます。
8.収穫時期
パクチーの出荷量が多いのは3~6月頃の春から初夏にかけてと、もう一つは
10~11月の秋の2回あります。パクチーは露地栽培やハウス栽培がおこなわ
れており、飲食店でも通年で食べられるため、季節を感じにくい食材かもし
れません。
<部分ごとの使い方や調理法を知って、料理に活用しよう。>
① 葉:生でサラダや薬味に!サラダなら、オリーブオイルか胡麻油、塩、胡椒と
和えるのがオススメ。ポン酢やラー油、和風ドレッシング、スイートチリ
ソースなど好みのもので和えてもよい。アボガドや豆腐、クリームチーズ
などコクのある素材と和えると、香菜の爽やかな風味がアクセントになり
ます。
② 茎:葉と同じくサラダや薬味に。茎が固くて食べにくい時は、茹でておひたし
やゴマ和えに、また炒め物やチャーハンの具にするとよい。細かく刻んで
薬味にも使え、餃子や肉団子などひき肉料理の素材としても便利です。
③ 根:葉や茎より香りが強く、ほのかに甘味も感じられます。茎と同じく刻んで
炒め物や薬味、ひき肉料理の素材として使いましょう。また、タイ料理の
トムヤムクンでは根元を丸ごとスープのダシの一つとして使います。エス
ニック料理の味の決め手ともいえるので、捨てたりせずに活用しよう。
④ 種子(粒):スパイスの「コリアンダー・シード」としておなじみの種子は、
柑橘系の芳香を放ち、セージのような甘みも漂います。肉や魚、豆を使っ
た煮込み料理や、ピクルス、マリネなどの保存食にはかかせません。ソー
セージやサラミには粒のまま加えられることも。爽やかな芳香とカリッと
した歯ごたえがアクセントになります。
⑤ 種子(粉):パウダー状の「コリアンダー・シード」はカレー粉にはかかせな
いスパイスです。甘味が漂う香りは、クッキーやパウンドケーキ、アップ
ルパイ、洋梨のコンポートなどデザートにも使われています。
<農産地レポートより>
(1)種まき:パクチーの種は大きく、1つの種から2つの芽を出します。外皮が硬
く発芽しにくいのが特徴です。そのため、栽培時には、種をまいた後たっ
ぷり水を掛け、なるべく早く外皮を軟らかくし、発芽を促します。このほ
か、水で外皮を軟らかくしてから種をまく方法や、種を2つに割ってまく
方法などもあります。
(2)成長:パクチーを始め、セリ科の植物は密集すると、株同士が競争をして早
く成長するという特徴を持っています。種のまき方によって、異なった特
徴のパクチーになります。種をまく時に高密度にすると、早く成長し横に
広がらないため、1本の株のボリュームが小さく、非常に軟らかいパクチ
ーになりますが、逆に種を低密度にまくと、生育がゆっくりで横に広がる
ため、 1株のボリュームが大きくなります。販売用に栽培する場合、種を
低密度にまく方が、経費の面で考えると得ですが、畑の利用効率の面で考
えると効率が悪くなります。
(3)収穫:生産者は、収穫する際、根が付いたまま収穫し、水洗いをして、完全
に水を切ってから荷造りしています。また、需要の高まる春~夏場の鮮度
保持対策として、荷造りから市場まで、できるだけ低い温度を一定に保つ
流れをつくって高品質な出荷につなげています。
露地栽培の旬は3〜6月。暑い夏は成長が早すぎて、葉や茎が硬くなりやすいので栽
培に向いていません。また、冬は寒さで成長が遅れ発育が悪いのであまり作られて
はいません。春から初夏に収穫が行われるパクチーは、1~2月にかけて種がまかれ、3~6月頃に旬を迎えます。旬が過ぎて花が咲いた後は、種の収穫が5~7月頃に行えます。そして、秋に旬を迎えるパクチーは9月頃に種をまいて、10~11月に
収穫がなされます。
また、10月に種をまいたものは、翌年に収穫する地域もあります。茨城県での旬も
春~初夏、そして秋です。露地で有機栽培を行っている所や、ビニールハウスで生
産をしています。茨城県の旬の摂れたてパクチーは苦みがなく茎に甘みがあると豊
洲市場でも人気です。。
<葉も種も花も、根っこも使えるのがパクチー>
独特の香りと歯ごたえに魅了される人が多いパクチー。食べ過ぎると胃腸に刺激が
強いかもしれないので注意が必要だが、キャベツやレタス、キュウリ、ダイコンな
どの定番の野菜の他、ルッコラやクレソンなど他の香りの強い野菜とミックスサラ
ダにするのもオススメです。そして、完熟した種子のコリアンダー・シードは、カ
レースパイスの代表的なものの1つですが、実は単体で使ってもとてもおいしいス
パイスなのです。その他、タイ料理ではパクチーの根っこの部分を「香りが良い」
ということで、スープのダシやお肉の下味に使います。また、南米の市場では常に
花付きのパクチーが売られているという事です。
是非、茨城県の万能ハープ「パクチー」をご賞味あれ!