テーマ:DVD映画鑑賞(13511)
カテゴリ:DVD
記憶喪失ものの傑作といえば、戦前なら「心の旅路」、戦後なら「かくも長き不在」でしょうか。人工的に記憶を抹殺する「エターナル・サンシャイン」というのもありました。最近では「バタフライ・エフェクト」が傑作の評判が高いようです。今回、ようやくDVDで鑑賞しました。 制作=2003年、アメリカ映画、114分。監督・脚本=エリック・ブレス、J・マッキー・グラバー。出演= アシュトン・カッチャー、エリック・ストルツ、メローラ・ウォルターズ、ウィリアム・リー・スコット、エルデン・ヘンソンほか エヴァン(アシュトン・カッチャー)はごく普通の少年でした。時折、記憶を喪失"ブラックアウト"してしまうことを除いては。......記憶の喪失は、7歳の頃から頻繁に起きていました。母アンドレア(メローラ・ウォルターズ)とともに過ごす午後。そして、施設に収容されている父に会いに行った際も"ブラックアウト"は起きました。 精神科の医師に脳波検査をしてもらいますが、異常は発見されません。精神科医は治療のひとつとして、毎日の出来事を日記につけるようにすすめます。 エヴァン母子は、引っ越すことになりました。クルマが走り去る時、追ってくる幼なじみのケイリー(エリック・ストルツ)に、エヴァンは"君を迎えに来る"と紙に書き、窓ガラスに押し付けます 時は流れ、心理学を勉強する大学生となっていたエヴァン。今では"ブラックアウト"が起きることもありません。過去は遠のき、ケイリーの記憶さえ消えかけていました。異変は、幼い頃の日記を見つけたことからはじまります。 うまくストーリーを要約できません。そのくらい、話が複雑なのです。二転三転しますから、1回の鑑賞では、内容を把握するのは難しいかもしれません。が、あえて再見はしませんでした。従って、印象批評になるのは仕方がないでしょう。 題名は、「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」というカオス理論のひとつから採られました。ちょっとした違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、という意味です。 問題は、主人公の特殊能力を容認できるかどうかでしょう。「なんだ、ドラえもんじゃないか」と感じた人は、この映画に感情移入することができないでしょう。「ドラえもん」をよく知らない当方は、抵抗なく観ることができました。 世評どおり、緻密な脚本です。素晴らしい、と絶賛してもいいでしょう。見終わったとき、久しぶりに興奮しました。偶然が人生を支配する、というのはスタンダールから学んだ知恵ですが、ここではそれが見事に映像化されています。 文学の世界では、内観的現実法というテクニックがあります。記憶の中の現実こそ真実、というもので、モーリャックなどが代表的な作家です。プルーストも、その範疇に入るかもしれません。 大長編「失われた時を求めて」の一部が映画化されたことがありますが、困難をきわめたことでしょう。「バタフライ・エフェクト」は、その世界に迫った傑作、といったら、プルーストファンに怒られれるでしょうか。 ラスト、何とおりか撮られたようです。劇場版が整合性があり、もっとも妥当だといわれていますが、たしかに余韻があり、これでいいと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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