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カテゴリ:映画
3月12日(月)新宿ミラノ座1にて 史上最大の帝国を建設した軍事的天才チンギス・ハーンの半生を描いた歴史大作です。英雄の飽くなき征服欲の根源にあった蒼き狼とは? 「上天の命(みこと)によりて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨(なま)白き雌鹿ありき。大いなる湖を渡りて来ぬ。オナン河の源に、ブルガン嶽に営盤(いえ)して、生まれたるバタチカンありき」(那珂通世訳) これが「元朝秘史」に描かれたモンゴルの起源です。「元朝秘史」は、わが国でいえば「古事記」にあたるでしょうか。歴史書というより、王家の伝承を綴ったものといえます。 制作=2006年 日本、モンゴル合作 136分。監督=澤井信一郎。原作=森村誠一。出演=反町隆史、菊川怜、若村麻由美、保阪尚希、袴田吉彦、松山ケンイチ、Ara、松方弘樹、津川雅彦、野村祐人、平山祐介ほか メルキト族に拉致された母ホエルン(若林真由美)は、モンゴルの族長イェスゲイ(保阪尚希)に略奪され、妻となってテムジン(反町隆史)を生みます。自分はメルキト族の子か、それともモンゴルの正統な血を引いているのか、悩むテムジン。出生を疑う弟を殺すほど、苦悩は深いものでした。 モンゴルの嫡子であることを証明するためには、蒼き狼となって世界を征服するしかない、これがジンギスカンを駆り立てた原点であった、というのが、昭和36年に発表された井上靖の長編小説「蒼き狼」の発見でした。 この映画を見ると、森村誠一も同じ発想に立っているようです。が、「元朝秘史」には、そういう記述はありません。つまりテムジンは自分の血筋について、疑問は持っていなかったのです。蒼き狼たらんとする意志も、ハーン就任式における狼演説も、日本の作家による創作なのでした。 王子ジュチ(松山ケンイチ)の場合は、出生に疑問があります。妻ポルテ(菊川怜)がメルキト族に連れ去られ、救出したときは妊娠していたのです。テムジンは赤子を殺そうとしますが、母に止められました。弟殺しの上に、さらに罪を重ねるのかと諫められたのです。 親子2代に渡る出生の疑問、血の悲劇は、いかにも日本人好みの主題です。この問題を最初に提起した井上靖の「蒼き狼」が、ベストセラーになったのは納得できる現象でした。 さて映画ですが、母のナレーションで物語は進行します。中身は、蒼き狼を目指すテムジンの野望をほぼ一直線に描いている、といってもいいでしょう。夫婦、親子、兄弟の愛憎、部族間の抗争なども、バランスよく配置されています。 気になるのは、演出面でしょう。制作費30億円の大作ですから、冒険はできません。万人向きの演出と映像で、全編を押し切っています。CGを排して実写にこだわった点は評価できますが、「ハムナプトラ」シリーズなどでお馴染みの壮大な砂漠戦を見た観客は、スケールの点で見劣りがする、と感じるかもしれません。 出演者たちの演技、学芸会と酷評する人もいますが、それほどひどくはありません。ミスキャストも感じられませんでした。精一杯、役になりきろうとしています。その努力は買いましょう。 オールロケ、大勢のエキストラ、壮大な騎馬戦等々、超大作ではありますが、もうひとつ、突き抜けた面白さがありません。ジンギスカンは日本人に人気がある英雄です。巷では、義経=ジンギスカン説があるくらいで、昔から日本と大陸を結ぶヒーローでした。 しかし、現代の若者には受けるのでしょうか。平日のお昼と言うハンデがあるにしても、館内は若者の姿がほとんどありませんでした。客の入りは5分くらいで、自分を含めてお年寄りが多かったです。興収50億円は、はたして達成できるでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年03月14日 23時46分24秒
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