テーマ:DVD映画鑑賞(13591)
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世界最強の国と言えばアメリカ合衆国。政治・経済・軍事力など、どれも敵う国はありません、と少なくと20世紀までは言い切れました。 しかし、21世紀のこんにち、そうは断言できないでしょう。アメリカの覇権は揺らいでいます。その象徴が、自動車産業の衰退でしょうか。 制作=2008年 アメリカ映画 ワーナー・ブラザース映画配給 117分。監督=クリント・イーストウッド。出演=クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘーリーほか 妻に先立たれ、息子たちとも疎遠なウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来、孤独な生活を送っていました。ある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合います。二人に親子のような絆が生まれ、タオの家族ともつきあいがはじまりました。 主人公は朝鮮戦争に従軍しました。戦場では二桁の人間を殺しています。それが絶えず彼を苦しめていました。彼の偏屈な性格は、どうやら戦争体験に由来しているようです。唯一の理解者だった妻に先立たれ、孤独感はいっそう深まります。 息子たちは父親を施設に入れようとしますが、彼はそれを拒否。毎日ビールを飲み、ビーフジャーキーをかじりながら、デッキチェアに座り、愛車を眺めてフォードで働いていた頃を懐かしんでいます。 自動車産業の城下町だったウォルトの街から、白人たちが少なくなって行きます。代わりに東洋系の人間が越してきて、街の秩序を乱します。考え方も生活習慣も違う異国の住民たち。頑固な老人が馴染めるわけがありません。 なぜ彼らはアメリカへ来たのか。ベトナム戦争で米国に協力した彼らは、勝者になった共産軍の報復を恐れて国を捨てたのでした。彼らの移住にも戦争が関係しているのでした。巧みな設定です。 主人公と移民の交流は、型通りの展開で、特に斬新なところはありません。ややご都合主義でもあります。ビーフジャーキーばかり食べている主人公が、アジアの温かい家庭料理に惹かれるのはわかりますが。 白人と仲良くすることでアジアン社会から孤立した隣人。当然、摩擦が起こります。ここからの顛末は、書かないほうがいいでしょう。ラストの行動は賛否が別れるところですが、小生は納得できました。 淡々とした展開、抑制された感情表現。それだけに、見終わったあとの感動は身に沁みました。傑作として推すことにやぶさかではありません。俳優としてはイーストウッドの最後の作品らしいので、見ておくことをお薦めします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年04月26日 14時41分59秒
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