テーマ:猫のいる生活(135576)
カテゴリ:良平
コロン・コロコロコロ・・・
ここは遠い、遠い思い出の道・・・ この道は特別な道・・・ 月日が重なるにつれて思い出というものは薄らいでいく でも、全てを忘れていく中、いや・・・全て忘れたとしても消えない光り輝く思い出が僕にはあった。 それは遠い昔の話し、僕がまだ小学校6年生の時だった。 ある時、近所に小学生になったばかりの小さな男の子が引っ越してきた。 その子は難病を抱えていたため大きな病院があるこの街に田舎から出てきたらしい。 名前は和義(かづよし)、カツと呼んでいた。 カツは他の1年生と比べてもひときわ小さく、集団登校ではいつもみんなに遅れて手を焼いた。 「おい、それでせいいっぱいなのか?」 〔うん、ちゃんと一人でも行けるから先に行っていいよ〕 何だか独りになりたがる子だった。 「そういうわけにはいかないよ、ここには僕しか6年生がいないんだから責任があるんだ」 〔ふ~ん・・・〕 と言ってもカツはマイペースを変えない 「仕方ないな、みんなには先に行ってもらうよ」 こうして、仕方なく2人きりの登校が始まった。 「体育もできないんだって?どんな病気なんだ?」 〔知らない・・・でも、僕は長くないんだって、パパが言ってたのを聞いた〕 「そんなこと・・・きっと良くなるよ」 〔みんなそう言う〕 「じゃあ、みんなの言う通りだよ」 〔お兄ちゃんは奇跡を信じる?〕 「奇跡?」 〔ううん、何でもない・・・〕 僕らは日を重ねるごとに仲良くなっていった。 「学校は楽しいか?」 〔うん、今はお兄ちゃんと毎日会えるから〕 「友達は出来たか?」 〔ううん、いらない〕 「病気の方はどうだ?」 〔薬は飲んでるけど・・・わからない〕 「そっか、でもこうして毎日学校へ行けているんだから大丈夫だよ」 〔うん・・・〕 僕らはいつしか本当の兄弟のように思えるほど仲良くなった。 そして、そんなある日の夕方、僕の家にカツのお母さんが訪ねてきた。 〈いつもお世話になっている和義の母です。涼君だよね?〉 「はい、涼です。一緒に登校させてもらっています。お世話なんてそんなものじゃ・・・」 〈それでもあの子の話はお兄ちゃんのことばかりなのよ、病院が変わるごとに引越ししてきたせいか、友達が出来たのも初めてなのよ〉 「そうなんだ・・・今日はお迎えですか?」 〈そうそう、学校は早くに終わっているはずなんだけど、最近帰ってくるのが遅くて・・・心当たりないかな?あの子に聞いても心配ないってばかりで答えてくれないのよ〉 なぜだか下校は集団ではなかった。 「う~ん・・・何してるんだろう?・・・こんな時間じゃ心配しますよね・・・明日、聞いてみます」 〈ありがとう、世話のかかる子だけどこれからもよろしくね〉 「はい」 辛い時もあったはずなのに、いつもほがらかなお母さんだった。 翌朝、僕はさっそくカツに聞いてみた。 「昨日、カツのお母さんに会ったぞ」 〔うん、お兄ちゃんのことほめてたよ、とっても良い子だって〕 「そんなこと言われるの初めてだな・・・ってそんなことより帰るのが遅いって心配してたぞ、一体どこで道草食ってるんだ?」 〔どこにも行ってないよ〕 「どこにも行ってなかったら、あんなに遅くにはならないだろ」 〔うん・・・石ころを蹴りながらだから・・・〕 「石ころ?」 〔うん、願い石・・・〕 「願い石?何のことだか分からないけど、とにかくもう少し早く帰るんだ」 〔うん・・・〕 僕はカツの話を詳しく聞くよりも毎日何をしているのかこの目で確かめようと思った。 そして、その日の放課後・・・ 僕はカツのクラスに走った。そして、気づかれないように後をついていった。 カツはあわただしい中、ゆっくりとマイペースでみんなと違う方へと歩いて行く。 「いきなりみんなと違うじゃないか・・・」 続く。 人気ブログランキングへ ↑皆に読んでもらいたい物語が沢山あります。応援してください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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