カテゴリ:自然
鳳凰小屋は地蔵ケ岳の直下2,400mの高所にあり、収容人員は最大で100人ほど。
御座石温泉から燕頭山を経て登るコースと、青木鉱泉からドンドコ沢を登るコースとが合流した地点に位置する。 どちらのコースを選択しても、1,200mの高低差の克服を強いられ、5時間半は要する。 登山者は大抵ここで一泊し、翌日鳳凰三山を目指す。 つまり、登山者にとってすこぶる便利な場所に鳳凰小屋はあるのだ。 その小屋の女性スタッフにTちゃん(仮名)がいた。 彼女はいつもグレーの着衣をまとっていた。 愛嬌があり、微笑みが可愛い。 秋田弁では「めんこい」というが、そんな女性だ。 初日、宿泊申込をした後、部屋の休む場所へ案内してくれたのがTちゃんだ。 大部屋の一番隅だった。 その前は、鍵型に少し入り込んだ1坪ばかりの場所で、夜具が積まれていた。 「布団がなくなったら、ザックはここに置いていいよ。」といってくれた。 布団はまもなく他へ敷かれてなくなると、その1坪は私専用のコーナーとなった。 他人に邪魔することなく使えたので、私はその場所がすこぶる気に入った。 2日目も、彼女は私にその場所を宛がってくれた。 TちゃんはQちゃんと違って、客とは一定の距離を保って接する。 それは従業員として当たり前でもある。 私が地蔵岳(写真)からガスの中を戻ると、小屋の奥から「お帰りなさーい」と微笑みながら声を掛けてくれた。 散歩から帰った時も、少し離れたところから、やはり声を出して迎えてくれた。 小屋の前で、男3人で雑談をしていた。 スタッフと若い登山者、それに私である。 向こうのテーブルに男女7、8人が座り、賑やかだ。 ワインやビールでテンションが上がっているのだ。 それを見ているうち酒の話になった。 「秋田にはどんな酒があるの?」と聞かれたので、「県南で有名なのは爛漫かな。両関もある。」といったら、2人とも知らない酒だという。 日本酒王国の秋田の酒を知らないのは残念なので、「一番の酒飲み県は高知県で、2番目が秋田県だよ。」と教えた。≪注≫ そんなたわいもない話をしていたら、Tちゃんが通りかかり様、いきなり「ハラツエー、ハラツエー」と笑いながら言った。 意味不明に思えてちょっとの間きょとんとしていたが、彼女が同じ言葉を繰り返し言った時、ハッと気が付いた。 この女性、秋田の話を聞きつけて、秋田弁の知っているフレーズをしゃべったんだなと。 イントネーションが微妙に違うので、最初は聞き分けられなかったのである。 『ハラツエー』は『腹強い』で、満腹のことを指す。 次いで彼女は「セバ、セバ」と続けて言った。 『セバ』は『そうすれば』の秋田弁だ。 秋田県人の友達から習った言葉だという。 それで、その座は爆笑の渦となったのであった。 壁紙をDLする カレンダー入りの壁紙をDLする 壁紙をDLする カレンダー入りの壁紙をDLする ≪注≫2012年一世帯あたり飲酒費用・1以高知県、2位石川県、3位長野県...9位秋田県。 2013年日本酒消費量・ 1位新潟県、2位秋田県、3位山形県 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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