カテゴリ:歴史あれこれ
大松川ダムを彩る芝桜 ・「屶(なた)」地名 刃物の「なた」が地名に使われているが、当てた字が色々で興味を引かれた。 秋田県横手市金沢屶磋沢(なたとぎざわ) 「屶」は、訓読みが「なた」で、薪や枝切りに用いる刃物のこと。人名や地名に用いられる字。 日本で作られた国字でJIS第2水準に収められている。(参考・漢字辞典オンライン-屶) 「磋」は「みがく」だが、ここでは「とぐ」と読んでいる。 「屶」は秋田県外でも使われている地名があった。 福島県福島市飯坂町茂庭屶振(なたぶり) ・「山刀(なた)」地名 国字の「屶」を使わず、2字に分解して「山刀(なた)」にしている地もある。 秋田県にかほ市平沢山刀研沢(なたとぎざわ) このような例は「轌(そり)」を「雪車(そり)」とした地名にも表れている。 秋田県由利本荘市雪車町(そりまち) ・本字の「鉈(なた)」地名 「なた」の一般的な漢字は「鉈」である。 しかし、この字を使った地名は、マピオンで調べると、次の一か所だけである。 岩手県盛岡市鉈屋町(なたやちょう) 「なた」などの刃物を扱う店が並んでいたのかと想像したが、盛岡市のHP「鉈屋町(なたやちょう)」によると、京都の富豪鉈屋長清が盛岡に来て釶屋山菩提院という寺を建立したことに由来するとあった。 ・希少漢字「𨦻(なた)」地名 見慣れない「𨦻」を使った地名がある。 秋田県横手市山内大松川十𨦻平(となたひら) ただし、稀少地名漢字リストから拾った地名で、マピオンの地名検索では現れない。 この字地名が現存しているかは、今のところ確認していない。 大原望氏のサイト『和製漢字の辞典2014』によると、 『「𨦻」は国字で「なた」とよむ。JIS第4水準に収録。 「永禄二年本節用集」、「堯空本節用集」、「両足院本節用集」、「天正十七年本節用集」、「和字正俗通」に「ナタ」とある。』などとある。 国立国会図書館近代デジタルコレクションで探したら、寛文5年(1665年)発行の「増補大節用集」にこの文字が見つかり、「𨦻」は「なた」とある。 それより古い明応5年(1496年)の節用集や、慶長年間の節用集では見つけることができなかったので、江戸時代になって収録された字かも知れない。 いずれにしても、「𨦻」は漢字としても、地名としても、唯一横手市山内にしかない非常に珍しい字であることは間違いなさそうだ。 このような希少漢字は、印刷物で表わしにくいという宿命を負っている。 ユニコードが拡張され、普及するようになってからはコンピュータで表示できるようにはなったが、対応するフォントが限られているからである。 増補大節用集「金男」(国立国会図書館) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017/03/11 05:32:51 AM
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