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2009.08.24
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新谷が出て行った気配を感じ、俺は、ミリが玄関から戻るのを待ったが、なかなか戻って来ない。
まさか、外まで?と思い、さすがに心配になり、玄関に向かうと、玄関に続く廊下の左手にある洗面所に明かり。
覗き込むと、ミリが顔を洗っていた。
何度も何度も何度も。
俺はほっとして、髪をゴムで簡単に上げた、ミリの白い襟足をながめ、
「顔、磨り減っちゃうぞ」
と、いいながら、タオルを手渡した。
背中のまま、くすっと笑ったミリは、水を止め、タオルを受け取る。
ミリがゆっくりと抑えるように水分をふき取る様子を、俺はそのまま後ろから眺めていた。

小さいミリの背中。

ただ、ミリの姿を見ているだけで、新谷のことでささくれだっていた気持ちが幾分和らいでいく。

大好きな、かわいいかわいいミリ。

絶対に新谷なんかに、、いや、誰にだって、渡せない。

たまらず後ろから抱きしめて、耳元で囁く。
「ミリ、ただいま。」
抱きしめた瞬間、ミリは、カラダを竦めたような気がした、が、気のせいだったのか、、、
タオルをゆっくりとはずし、鏡越しに俺に微笑む。
「おかえり、思ったより早かったのね?」
その気弱そうな笑顔。泣きはらしたような目。

・・・何があったんだ?なんて、すぐには聞けないよ。また泣き出しそうで。

だから、わざと何でもないように、俺は、
「何言ってんだよ。俺、新谷からミリが酔っ払ってるって電話もらって、慌てて帰ってきたんだぞ~。気分はどうなんだ?」
ミリは、
「そうだったんだ。・・ごめんね。もう平気だよ~。確かに、、ちょっと酔っ払っちゃったけど」
勤めて明るく言おうとしているのが分かる。
顔色は確かに悪くはないし、気分だってよさそうだけど。
でも、、やっぱり、いつもどおりに、、とはいえない。
笑顔の秒数が短い。そして、確実に震えている瞳。
得体のしれない不安に襲われて、俺は、さらにきつく抱きしめて、襟足にキスをする。

・・・やっぱり。
完全にカラダ、固くなったし。
初めてのキスシーンがあったときに、ミリに拒絶されたことを思い出す。
・・・あんなのは、、二度とヤダからな。

俺は抱きしめたままで言う。
「飲んだ量聞いたぞ~。あんだけ飲めば、誰でも酔っ払うよ」
「そんなに飲んだかな~?覚えてないや」
うつむいて俺の腕に手を添えていうミリ。
「覚えてないって、それが一番の証拠だよ。・・なあ、、なんで、そんなに飲んだわけ?」
「なんでって。。いつものことじゃない?」

なんて、ごまかそうとしてるけど。。。

・・・でも、うまくいってないよ、ミリ。

俺は、まずは確認する。鏡越しにミリの顔をみつめながら、
「・・ミリ、、悠斗のメールのこと、、怒ってんのか?」
ミリは首を振る。何かを思い出したように、少し顔をゆがめ、でも慌てて戻してから言う。
「・・怒ってないよ」
「でも、びっくりしたろ?ごめんな、悠斗のヤツはやとちりでさ、本当に、ナンパなんてしてないんだぞ?あれは・・」
必死で話しかける俺を、柔らかく見上げて、
「怒ってないって。・・そんなこと、、どうでもいいよ」
ポツリと投げ出すように言われ、俺は、自分勝手だけど、寂しくなる。
「どうでもいいって、お前・・」
ミリは、しょげる俺に、気づかないまま、身をよじって、逃れようとして言う。
「ねえ、もう、離してよ~」
「いやだ」
抱きしめる腕に力を込める。そうするともうミリの力では身動きすらできない。
ミリは不満げ、、というよりは、不安げに、鏡越しに、俺をみつめ返す。
「話、終わってないだろ?」
「話って」
「飲みすぎた理由だよ」
「・・・」
目をそらし、話す気はなさそうなミリ。
うつむきがちな瞳にゆれる睫、何も言わずに、でも、何か言いたそうに震えるかわいい唇。
「何があったのか、言えよ。」
答えないミリ。
俺は、新谷は知ってるんだ、という、その事実に、苛立ちを覚え、少し強く繰り返す。
「話せよ」
「何も、、ないよ」
「新谷には話せて、なんで、俺には言えないんだよ」
ミリは慌てたように、
「センセ、、なんか言ってた?」
その親しげな呼び方に俺はさらにイラつく。
「い~や。詳しくはなんにも。ミリに直接聞けってさ。だから聞いてんだ、何があった?」
ミリは、少しほっとしたように、
「ほんとに何も、ないって」
笑ってごまかそうとするミリに、俺は、さらにさらに苛立って、
「何もないはずないだろ?あんなに酔っ払っといて?あんなヤツに送ってもらわなくちゃならね~くらい」
「あんなヤツって、、」
「あんなヤツだろ?下心みえみえで、俺が、あいつのこと気にイラね~の知ってて。」
さっきの新谷とのやりとりを思い出す。

アイツ、ミリよりも前に俺にキモチをいいやがって。宣戦布告だよな?
受けて立ってやる。
絶対誰にも渡す気なんてないんだからな。
ミリは、オレのものなんだから。
やっと手に入れた、、宝物なんだから、な。

俺はミリを強く抱きしめ、耳元で言う。
「どうしても答えないんなら、こうだぞ?」
「え?」
俺はもう一度、襟足に口付け、そのまま、耳の裏や、頬、耳たぶ、ゆっくりと唇をずらしていく。
「ちょ、、っと」

ミリは逃げるそぶりを見せるけれど、俺はしっかりと抱きしめてそれを許さない。

唇で愛撫しながら、また鏡越しに、ミリを眺め、目に留まったもの。
ボタンの外されたブラウス。
大きく開いた胸元、その白い肌。

そして俺の中にはまた、新谷のことが。

・・・アイツが、このボタンを・・・。

無防備なミリに対する苛立ちが、
そしてもちろん、
挑戦的な新谷に対する怒りが、
俺を凶暴なキモチにする。

俺はいったん腕を解き、ミリを振り返らせ、壁に押し付けた。


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最終更新日  2009.08.24 13:10:29
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