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カテゴリ:translucent ケースケ×ミリ
新谷が出て行った気配を感じ、俺は、ミリが玄関から戻るのを待ったが、なかなか戻って来ない。
まさか、外まで?と思い、さすがに心配になり、玄関に向かうと、玄関に続く廊下の左手にある洗面所に明かり。 覗き込むと、ミリが顔を洗っていた。 何度も何度も何度も。 俺はほっとして、髪をゴムで簡単に上げた、ミリの白い襟足をながめ、 「顔、磨り減っちゃうぞ」 と、いいながら、タオルを手渡した。 背中のまま、くすっと笑ったミリは、水を止め、タオルを受け取る。 ミリがゆっくりと抑えるように水分をふき取る様子を、俺はそのまま後ろから眺めていた。 小さいミリの背中。 ただ、ミリの姿を見ているだけで、新谷のことでささくれだっていた気持ちが幾分和らいでいく。 大好きな、かわいいかわいいミリ。 絶対に新谷なんかに、、いや、誰にだって、渡せない。 たまらず後ろから抱きしめて、耳元で囁く。 「ミリ、ただいま。」 抱きしめた瞬間、ミリは、カラダを竦めたような気がした、が、気のせいだったのか、、、 タオルをゆっくりとはずし、鏡越しに俺に微笑む。 「おかえり、思ったより早かったのね?」 その気弱そうな笑顔。泣きはらしたような目。 ・・・何があったんだ?なんて、すぐには聞けないよ。また泣き出しそうで。 だから、わざと何でもないように、俺は、 「何言ってんだよ。俺、新谷からミリが酔っ払ってるって電話もらって、慌てて帰ってきたんだぞ~。気分はどうなんだ?」 ミリは、 「そうだったんだ。・・ごめんね。もう平気だよ~。確かに、、ちょっと酔っ払っちゃったけど」 勤めて明るく言おうとしているのが分かる。 顔色は確かに悪くはないし、気分だってよさそうだけど。 でも、、やっぱり、いつもどおりに、、とはいえない。 笑顔の秒数が短い。そして、確実に震えている瞳。 得体のしれない不安に襲われて、俺は、さらにきつく抱きしめて、襟足にキスをする。 ・・・やっぱり。 完全にカラダ、固くなったし。 初めてのキスシーンがあったときに、ミリに拒絶されたことを思い出す。 ・・・あんなのは、、二度とヤダからな。 俺は抱きしめたままで言う。 「飲んだ量聞いたぞ~。あんだけ飲めば、誰でも酔っ払うよ」 「そんなに飲んだかな~?覚えてないや」 うつむいて俺の腕に手を添えていうミリ。 「覚えてないって、それが一番の証拠だよ。・・なあ、、なんで、そんなに飲んだわけ?」 「なんでって。。いつものことじゃない?」 なんて、ごまかそうとしてるけど。。。 ・・・でも、うまくいってないよ、ミリ。 俺は、まずは確認する。鏡越しにミリの顔をみつめながら、 「・・ミリ、、悠斗のメールのこと、、怒ってんのか?」 ミリは首を振る。何かを思い出したように、少し顔をゆがめ、でも慌てて戻してから言う。 「・・怒ってないよ」 「でも、びっくりしたろ?ごめんな、悠斗のヤツはやとちりでさ、本当に、ナンパなんてしてないんだぞ?あれは・・」 必死で話しかける俺を、柔らかく見上げて、 「怒ってないって。・・そんなこと、、どうでもいいよ」 ポツリと投げ出すように言われ、俺は、自分勝手だけど、寂しくなる。 「どうでもいいって、お前・・」 ミリは、しょげる俺に、気づかないまま、身をよじって、逃れようとして言う。 「ねえ、もう、離してよ~」 「いやだ」 抱きしめる腕に力を込める。そうするともうミリの力では身動きすらできない。 ミリは不満げ、、というよりは、不安げに、鏡越しに、俺をみつめ返す。 「話、終わってないだろ?」 「話って」 「飲みすぎた理由だよ」 「・・・」 目をそらし、話す気はなさそうなミリ。 うつむきがちな瞳にゆれる睫、何も言わずに、でも、何か言いたそうに震えるかわいい唇。 「何があったのか、言えよ。」 答えないミリ。 俺は、新谷は知ってるんだ、という、その事実に、苛立ちを覚え、少し強く繰り返す。 「話せよ」 「何も、、ないよ」 「新谷には話せて、なんで、俺には言えないんだよ」 ミリは慌てたように、 「センセ、、なんか言ってた?」 その親しげな呼び方に俺はさらにイラつく。 「い~や。詳しくはなんにも。ミリに直接聞けってさ。だから聞いてんだ、何があった?」 ミリは、少しほっとしたように、 「ほんとに何も、ないって」 笑ってごまかそうとするミリに、俺は、さらにさらに苛立って、 「何もないはずないだろ?あんなに酔っ払っといて?あんなヤツに送ってもらわなくちゃならね~くらい」 「あんなヤツって、、」 「あんなヤツだろ?下心みえみえで、俺が、あいつのこと気にイラね~の知ってて。」 さっきの新谷とのやりとりを思い出す。 アイツ、ミリよりも前に俺にキモチをいいやがって。宣戦布告だよな? 受けて立ってやる。 絶対誰にも渡す気なんてないんだからな。 ミリは、オレのものなんだから。 やっと手に入れた、、宝物なんだから、な。 俺はミリを強く抱きしめ、耳元で言う。 「どうしても答えないんなら、こうだぞ?」 「え?」 俺はもう一度、襟足に口付け、そのまま、耳の裏や、頬、耳たぶ、ゆっくりと唇をずらしていく。 「ちょ、、っと」 ミリは逃げるそぶりを見せるけれど、俺はしっかりと抱きしめてそれを許さない。 唇で愛撫しながら、また鏡越しに、ミリを眺め、目に留まったもの。 ボタンの外されたブラウス。 大きく開いた胸元、その白い肌。 そして俺の中にはまた、新谷のことが。 ・・・アイツが、このボタンを・・・。 無防備なミリに対する苛立ちが、 そしてもちろん、 挑戦的な新谷に対する怒りが、 俺を凶暴なキモチにする。 俺はいったん腕を解き、ミリを振り返らせ、壁に押し付けた。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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