ユーロ安は反転上昇するか?
ユーロの下落は反転するか?欧州で話題を取っていたのは、ギリシャのデフォルトリスクであった。ギリシャの国債発行残高は2,900億ユーロ(約35兆6,700億円)。ギリシャの銀行が約390億ユーロ(約4兆8,400億円)を保有し、ギリシャ以外の欧州各国は6割を保有しているが、その半分は銀行が保有している可能性が高い。そのうち4月~5月にかけて約220億ユーロ(約2兆7,500億円)のギリシャ国債の償還がある。この償還に要する資金を3月中に手当てしないとギリシャはデフォルト(債務不履行)に陥るという。ギリシャ政府は3月3日今年3度目の財政緊縮案を公表し、増税と財政支出の削減で総額48億ユーロ、対国内総生産(GDP)比で2%に相当する財政健全化を行うという。付加価値税(VAT)を2%引き上げて21%とし、燃料・タバコ・酒類の税率を引き上げる。年間10万ユーロ(約1,230万円)超の高所得層、教会などの大規模不動産保有者、宝石など高級品購入者も増税対象となる。支出面では公的部門の人件費を圧縮し、年金も一部凍結される。 しかし、この提案に反発して、ギリシャ最大の民間労組GSEEは、11日ゼネストに入った。また、ギリシャ国民の世論調査では、1,400人の回答者のうち、この追加財政再建策については「支持しない」が60%、「支持する」が39%だった。回答者の65%は、追加財政再建策の内容が「不公平」だと指摘。33%は「公平」だと答えた。 問題は、ギリシャが3月中に220億ドルの借り換え資金を手当てできるかどうかである。一つは欧州や米国による融資であり、一つは、起債による資金調達である。ギリシャのパパンドレウ首相は、フランスのサルコジ大統領を訪問し、支援を要請した後、9日米国オバマ大統領と会談している。しかし、両国から直接的な資金支援の約束を取り付けることは出来なかった。 フランスは、ドイツがギリシャに資金援助をすればフランスも応じると述べているが、ドイツは国民の8割がギリシャへの資金援助に反対している。メルケル首相が国民の声を押し切ってギリシャに融資することは、政治生命を懸けることになるだろう。 米国においては、ギリシャ首相は投機への規制強化で米国に協力を要請した。首相によると、オバマ大統領は金融規制の強化に積極的な反応を示したという。欧州でもCDSに対する規制強化案が浮上している。 ギリシャ首相は、ドイツに対し第二次世界大戦の賠償金問題を出したが、これは既に解決済みである。ドイツとフランスはEU域内問題をIMFに委ねることを潔しとせず、ドイツのメルケル首相は8日、欧州連合(EU)加盟国の経済・財政状況を監視し、金融支援を行う「欧州通貨基金(EMF)」の創設を支持する考えを示した。フランスも同調した。国際通貨基金(IMF)の欧州版だが、昨年12月に発効したEU新基本条約のリスボン条約の改訂が必要となるため、実現にはも数年の交渉が必要とみられる。つまり、今回のギリシャ危機には間に合わない。4日、ギリシャ政府は50億ユーロの国債入札を行った。幸い3倍近い応募を得た。応募したのは、欧州系銀行や保険・年金基金などでヘッジファンドはほとんど手を出していないという。新規10年債の金利はドイツ国債のほぼ2倍に当たる6.4%程度となりそうだ。最終的にはEUとIMFなどの介入でデフォルトは回避されるだろうから低金利時代にあっては6%は悪くないという発想も働く。という段階までが、ユーロを安くしてきた経緯である。しかし、情勢は変わりそうである。ギリシャ同様に財政赤字の削減に迫られているポルトガル政府が10日総額9億9千万ユーロ(約1221億円)の国債入札を実施したところ、ドイツ国債などに比べて高い利回りが人気を呼んで応札が殺到し、入札額を5億9千万ユーロ上回った。満期は2021年4月。表面利率3.85%の同銘柄の落札利回りは平均4.171%だった。フィッチから付与されたポルトガルの格付けは「AA」。ギリシャ政府が4日に入札した50億ユーロは、今回のポルトガルより金利が2%ほど高い。つまり、ギリシャは、残りの必要資金も、金利を高く設定して国債の入札を行えば、案外簡単に資金は集まりそうだという雲行きに変わった。欧州委員会のプローディ前委員長はこの日、ギリシャをめぐる金融混乱の最悪期は過ぎたとの見方を示した。ユーロドルは、昨年11月25日の1.514を天井に3月2日1.343まで11.3%下落していた。しかし、この辺りを底にして、ユーロ安も一段落するのではないだろうか?ユーロ高ドル安になれば金高であろう。(文責 近藤雅世)