189779 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

FOX ROOM

FOX ROOM

2- 2/15up

back home



服を着込んだ良介が、囁くように言った。
「すまない・・未来」
良介を、シーツをまとわり着かせたまま見上げる未来。
シーツを纏ったまま・・・ベッドから立ち上がり歩き出すが、良介の前でよろめいてしまい、抱きとめられる。
未来は、良介の手からするすると床に、崩れ落ちる。
「未来」
片膝を床に付き、未来を呼びながら、抱き寄せる。
「必ず幸せにするから・・・未来・・・傍に居てくれ・・・」
「りょうすけ・・」
良介の胸に顔を埋め、未来は震えながら泣いた・・・。
そして良介に返事をするがごとく、かすかではあるがはっきりと頷いたのだった。

それからの二人には、穏やかな時間が流れて、日々が過ぎて行った。
「行ってくるよ、未来」
そういって良介は、大学病院に出勤していく。
穏やかな時間の中で、良介は大学病院で医師となっていた。
「良介、私今日は講義で遅くなるわ!!」
後から出る未来が、良介に手を振り予定を伝える。

「未来」聞き覚えのある声が、未来を呼んだ。
「未来待ってくれ、話があるんだ」未来は振り返って、固まってしまった。
呼んだのは、猛だった。
(何のために…私に近づくんだろう…もう別れたはずなのに。)

「やっと明日実も立ち直ったよ」
「そう良かったわね」
「ああやっと別れられた」
そう言いながら嬉しそうな顔をする猛。
冷たい目で、一瞥をくれる未来は、何も答えない。
猛は唐突に切り出す。
「良介と暮らしているのか?」
未来は何も答えない。
猛はなおも続ける「戻ってきて欲しい!」
悲しそうな目をする未来。
「馬鹿な事言わないでよ」
きびすを返しながらなおも未来は言う
「いやよ!
もう辛い思いはしたくない!!」
未来は、振り向き様に、苦虫を噛み潰したような笑みを向けた。
そんな未来に、猛は駆け寄り、未来の頭に手を絡め、ぐいっと抱き寄せ、未来に口付ける。

「・・・・・・・」咄嗟のことに、避ける暇もなく言葉も出てこなかった。
でも必死に、猛を押しのけた未来だった。
自然に、未来の目から涙が、零れ落ちて頬を伝い落ちていく。

片手で顔を覆いながら、肩を震わせなく未来。
「ごめんなさい・・・私のことは忘れてください!!」
そう言うのが精一杯。
猛は一瞬凍りつく。
うな垂れながら、未来に語りかける。
「すまない、未来・・・だけど・・・忘れられない・・・お願いだ、戻って来て欲しい!!」
未来はぞっとするもを、感じていた。
「忘れましたそんな昔の事など!」踵を返しながら未来が言うと、猛は近づき未来を抱き寄せる。
「未来」
「きゃっ・・・」

 強引に未来の唇に口付けを仕掛ける猛。
「や・・・・・・」抗う未来。
 猛の力強い腕に、未来は為す術も無い・・・。
 ふっと猛の力が緩んだ所で、未来は身を捩って、腕から逃げ出す。
「未来」猛が呼ぶ。
 未来は無視して、その場を駆け出し逃げ去っていく。
「意地悪……   ずるい…男…」
回想
『君はきっと僕の元へ帰ってくるのさ!!』
『そう、そう言う運命なのさ!』
『渡さない!!良介には絶対に!!』

「馬鹿な男…悲しい思いをして別れたと言うのに。
もう元には戻らないのよ…私には許せない!!
決して貴方の裏切りを、許すことなど、出来はしない!」
涙で潤んだ瞳から、一滴の涙が零れ落ちていった。
「もう良介を、裏切ったりしない」
「ごめんなさい…」

 沈んだ顔をしている未来を、良介はそっと見ていた。
 未来の心の中を読むかのように、良介の顔色も優れなくなってくる。
 最近では良介も、苛々しがちで、
「きゃー!!」
「どーしたの良介!!」
「止めて良介!!」
“ガシャーン!!”物が割れる音がする。
『変だ未来』
苛々する良介は、知らず知らず物に当っていた。
 それこそ未来は、ビクビクもので心配していた。

 数日して良介は、未来を急に抱きしめ、口付けをする。
少し、身体を硬くしての口付けでは有ったが、未来は敏感に何かある、もしかして、猛が原因ではと思い至った!!
 良介は、未来を離すと、1枚の紙を出して未来に迫った。
「サインしなさい!未来…きちんとしよう!!」
 未来は紙を見てボーゼンとする。
何も考えられない状態に陥り、良介の声だけが、通り抜けていった。
「未来!!」良介が叫んだ時、初めて、未来の思考が働き始める。
ハッとして、未来はこくんと頷く。
 少々顔は青ざめていたが、良介のサインの隣に、未来はサインする。
 それは婚姻届へのサインであった!!

『良介のそばを離れなければ、辛い思いをすることも無かった…』
『だから…』
『そう思うと悲しみと、良介といる安堵と、優しい気持ちが…同居していて』
『如何したら善いか解らない…けれどもう悲しい思いはしたくない…辛い思いはもうたくさん』
 目を閉じた、未来から涙が頬を伝っていく。
 『未来』
 心配しながらも、チョッピリ嫉妬した猛に向かい、舌を出す良介であった。
 はっと良介を見た未来は「おやすみ」っとにっこり微笑み自分の部屋へと戻っていく。
「み…」っと良介は、声をかけ掛けたが止めて、思考を始める。
『まさか・・・ヤッパリ…彼が…』正解である!!
『知っていて、近付いているのではないだろうか?…近付いている!!』
大正解である!!
『良…』一点を見つめ微笑みながら未来は呟く。

『良介~~』
 息を切らした未来がかけてくる。
『卒論出してきたよ~~~』
 良介の腕の中に飛び込んで来る未来に、くすっと笑いかけながら
『ごくろうさま』と声をかける。
『慌てて来たのかい』
『だって~』
『もう少し時間が有るからまっててくれるかい?』
『じゃ、カフェテリアで!』
『判った』
未来は明るく答え、病院内のカフェテリアに向かった。


-TO BE CONTINUED-


home
next


© Rakuten Group, Inc.