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7-1★メルマガ6周年プレゼント★「学び舎21」2000号記念★音声ファイルより~その1~ ★今日のフォーカスチェンジ♪ ------------------------- 「もう、終わらせていいの」 無力感や喪失感に さいなまれているひとの こころには、もしかしたら、 賽の河原が あるのかもしれません。 あなたが石を積んでいると、 鬼がやってきて、すべてを くずしてしまうのです。 どれほど懇願しても、 無情にくずしていくのです。 積むたびに、 鬼はやってきます。 来るたびに、 くずしていきます。 荒涼たる賽の河原で、 何度でもそれは 繰り返されます。 深い絶望のふちにあって、 あるとき、あなたの胸に、 ふと、こんな思いが 湧き起こります。 鬼は、なぜ やってくるのだろう…と。 ここに来て、はじめて 胸に浮かんだ問いです。 その日も、 石を積み上げると、 鬼がやってくるのが 見えました。 あなたは、 鬼をまっすぐに見て、 問いかけました。 「なぜ、あなたは、 ここに来るのか」と。 鬼は、けわしい表情で、 こたえました。 「それが、自分の つとめだからだ」 あなたは、胸のなかに、 何かがつきあげるのを 感じました。 「いつから?」 「永遠の過去から」 「いつまで?」 「永劫の未来まで」 「これだけを繰り返し?」 「繰り返しだ」 「なぜ?」 「それがつとめだからだ」 あなたの目から、 不意に、涙がこぼれました。 今度は鬼が問いました。 「なぜ、泣く?」 なぜ、涙が出たのか、 あなたにも わかりませんでした。 でも、あなたの口から、 思わずこんなことばが こぼれました。 「あなたが、 かわいそうだから」 言ってしまってから、 あなたは、 とまどいました。 そんなことは、 思ってみたことも なかったからです。 鬼も、沈黙しました。 そんなことは、 言われたことが なかったからです。 あなたは、鬼を見ました。 これまで何千回、何万回と、 この鬼に、積み上げた石を くずされてきたのでした。 どれほど、この鬼を、 憎みつづけてきたでしょうか。 けわしい表情のなかには、 喜びややすらぎの かけらを見出すことは、 まるでできませんでした。 当然です。 鬼が、この仕事を やりつづけることで 得られるものは、 ひとびとの涙、恨みの声、 そして、のろいのことば…。 喜びもやすらぎも 何一つ知らずに、鬼は、 課せられたつとめを、 やりつづけてきたのです。 あなたが、石を積むかぎり、 ひとが、石を積むかぎり、 鬼の仕事は、けっして、 終わることはないのです。 あなたは、鬼を見ました。 鬼も、あなたを見ました。 涙は、止まることなく、 あふれつづけています。 鬼の目のなかに、 あなたがいました。 その鬼の目に映る あなたの目のなかに、 鬼はいました。 鬼は、泣いていました。 いえ、泣いているのは、 あなたのはずなのに、 あなたには、 鬼が泣いているように しか見えないのです。 あなたの口から、 ふたたび、 ことばがこぼれました。 「もう、終わらせていいの」 鬼の表情が、 かすかにゆらぎました。 「終わらせる、だと?」 「そんなに苦しいことを、 そんなにせつないことを、 もう、繰り返さなくて いいの。 そんなことを繰り返して、 自分をいじめなくていいの」 言いながら、 あなたは、思わず 鬼の手にふれました。 はじめて ふれる手でした。 ごつごつと岩のように硬く、 冷たくこごえる手でした。 「終わらせる、だと?」 鬼が、もう一度、 問い返しました。 「終わらせていいの。 あなたの苦しみを、 もう、終わりにしていいの」 あなたは、うなずき、 しっかりと、 鬼の手をにぎりました。 その手に、あなたの涙が、 はらはらと、こぼれました。 …。 気がつくと、あなたは、 花咲き乱れる草原に ぽつんとすわって いるのでした。 あたたかい日の光が、 空一面から 降り注いでいます。 ここちよい風が、 吹き抜けていきます。 賽の河原は 消えていました。 鬼は、どこにも いませんでした。 ほおに手をやると、 涙のあとが、うっすらと 残っていました。 顔をあげると、 草原の向こうに 光が見えました。 あなたは立ち上がり、 その光に向かって、 歩き出します。 胸のなかに、なにか あたたかいものが湧いて くるのを感じました。 そのなかで、こぽこぽと、 何かがちいさく つぶやく声が聴こえる ような気がします。 あなたは そのさざめきに 静かに耳を澄ませます。 「ゆるされたよ」 聞き覚えのある声でした。 「ゆるされたのね」 あなたもこたえました。 「終わりにできたよ」 「終わりにできたのね」 「ありがとう」 声は、それきり、 ふっつり途絶えました。 でも、あなたには、 もうわかっていたのです。 それは、かつて 鬼であったものでした。 それは、あなたが生み出し、 あなたが育てたものでした。 だからこそ、あなたが、 終わらせなければ ならなかったのです。 あなたにしか、 終わらせることは できなかったのです。 あなたは、しずかに、 胸のところに、 手をやりました。 声はもう 聴こえませんでしたが、 あたたかい泉は、 湧きつづけていました。 これからも途絶えずに、 いつまでも 湧きつづけるのです。 光はもう目の前でした。 --第1214号(2007年2月26日発行)より ★かめおかゆみこのホームページは、こちら♪ |