|
カテゴリ:鉄道
国交省は、北陸新幹線敦賀以西ルート3案について、それぞれの建設費・所要時間等を勘案した便益/費用対効果の検討結果を公表した。 試算によると、米原が2.2と最も大きく、小浜京都が1.1だった。京都府・舞鶴を経由し、新大阪に至る「小浜舞鶴ルート」は0.7で、投資に見合わないとした。 建設費では、米原(50キロ)が最も安く、5900億円。小浜京都(140キロ)が2兆700億円、小浜舞鶴(190キロ)が2兆5千億円だった。工期は距離が最も短い米原が10年で、残りの2案は15年だった。 敦賀-新大阪の所要時間は、小浜京都が最短の43分。小浜舞鶴が60分、東海道新幹線への乗り換えが必要な米原は67分だった。 http://www.sankei.com/west/news/161111/wst1611110082-n1.html (H28.11.11 産経新聞) 米原ルートは、東海道新幹線へ乗入れせず、利用者は米原で全員乗換させる前提での試算である。また、特急料金も北陸・東海道で合算徴求する前提で試算している等、かなり不利な条件を課しているが、それでも、BC係数は2.2である。 敦賀以西ルートに関する同様の試算は、過去に関西広域連合が、最近は滋賀県が行っている。 これらのデータと、国交省のデータは、相当程度食い違っている。 関西広域連合の試算結果は、米原2.31 湖西1.45 旧小浜1.09、滋賀県の試算では、米原が1.60、小浜京都は0.54、小浜舞鶴京都は0.18。 米原Rでは、関西広域連合のデータと国交省の試算結果には大きな差はない。 しかし、旧湖西より遠回りで京都-新大阪別線建設が加わる小浜京都の場合、建設コストは2.68倍でありながら、遠回りの分便益は低下する(しかも、京都・新大阪が大深度地下駅ということを考えれば、実質的な時短効果は少ない)にも拘らず、なぜ、BC係数が1.1になるのか? むしろ、滋賀県の試算0.54の方が実態に近いのではないだろうか? (もっとも、建設費の想定は、実態より甘い。滋賀県の試算では、1.36兆円に対し、国交省の試算は2.07兆円。京都-新大阪間大深度地下線の建設には1兆円程度見込まれることから、この点は国交省の試算の方が正確だ。建設費を2.07兆にすると、BCはもっと低下する) 舞鶴Rに至っては、国交省0.7 滋賀県0.18と4倍近い開きがある。 滋賀県の試算は、総じて便益を少なく見積もっているとも思えるが、国交省の試算は、小浜京都や舞鶴の便益を過大に想定しているように思える。 やはり、今回の国交省の試算は最初から出来レースであった感は否めない。 米原には一応BC最高という評価を与えつつ、100%乗換前提や料金の合算等悪条件を示唆し、最初から検討対象外に誘導。 一方、舞鶴は常識的に考えても問題外だが、0.7とそこそこの数字を出すことで、将来の山陰新幹線への布石とする。 本来は、0.5-0.6程度で、とても及第点に達しない小浜京都だが、何とか1.1、いやもっと細かく言うと1.075という、ギリギリのレベルの及第点を無理やり付けてまで推進しようとするのだろうか? しかも、慌ててルートを決めたところで、札幌延伸が完了する2030年までは、他に回せる予算はないのに。 やはり、そこには政治の影が見え隠れするように思える。 原発再稼働と、維新を与党に取り込みたい官邸の意向が働いたのではないか。 小浜周辺が原発銀座であることは周知の事実だし、また、地元の自民が大阪都構想に反対なのに、官邸は応援しているなど、大阪に過度に肩入れしている。 北陸の東京シフトに焦りを強める大阪は、北陸新幹線の早急な大阪延伸を求めている。 幸か不幸か、慌ててルートを決めたところですぐ建設できるわけではないのだから、巨額の費用がかかる大阪延伸はもっと慎重に判断するべきだろう。 FGT開発状況や、リニア開業によるJR間の協議進展などを見極めて判断しても遅くない。 【追伸】 今回の国交省の試算について、小浜京都の費用対効果を過大に見積もっているとの指摘が滋賀県から提起されています。 ”国土交通省が公表した北陸新幹線敦賀以西3ルート案の調査結果について、滋賀県の三日月大造知事は15日の定例会見で、JR西日本が提案する小浜京都ルートの需要予測に当たる輸送密度が「国がかつて示した数値と3倍近い開きがある」と疑問を呈した。” http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20161115000160 (H28.11.16 京都新聞) だからといって、米原になるわけではないが、少なくとも、鉄ヲタ諸氏も、JR案を絶対唯一無二のように主張するのは止めるべきだろう。 (1)そもそも、敦賀以西が必要か?→FGT or 金沢以西は狭軌新幹線方式に変更 (2)京都-新大阪間の別線建設が必要か?→京都までの建設に留め、FGTで在来線に乗入れるか、東海道新幹線に乗入れ (3)別線の場合も、京都市内の駅は、京都駅でなければならないか? 東小浜からまっすぐ京都へ南下するルートでは、京都市北部ー新大阪まで地下ルートとなり、建設コストが高額 途中の自然保護区域を避けるべく西に迂回するなら、京都駅でなく京都市西部の嵯峨嵐山付近に西京都駅を作り、新大阪まで結ぶ方が距離的に短いし、市街地を縦断する区間も短い お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.11.17 00:23:38
コメント(0) | コメントを書く
[鉄道] カテゴリの最新記事
|